14.マッド・タイガー2戦目
夕方の勉強を終えて、再びMDOの世界へダイブイン。
湿っぽい洞窟で、おもち、おはぎ、紫おいも、カレーが待機していた。
「よーし、周辺の探索はチョコ、赤ワイン、おはぎ2号、おもち2号、ラムネに任せてるし、こっちはイベクエ消化しようか」
洞窟から出て、私達は馬に乗る。
スライム達は4匹、カレーが馬の頭の上、紫おいもが私の頭の上、おもちとおはぎが私の後ろに乗る。
目指すのは、この前見つけた、マッド・タイガーが出てくる洞窟。
NPCは復活する。それはイベントボスにも当てはまる。
奴らも、次の日にしれっと復活しているのだ。
馬を走らせ、街道沿いにあった野良の洞窟ダンジョンへ向かう。
徒歩だとゲーム時間で1時間くらいかかった距離も、馬なら10分足らずでたどり着いてしまう。
馬に乗ったまま、ダンジョンの中に入る。
薄暗い土の洞窟だが、謎の光源により真っ暗ではなく、かすかに見える。
そして私のエリア地図に、敵対NPCの情報が5体映っている。
1体はお目当てのマッド・タイガー。
もう4体は、このダンジョンで生成される雑魚魔獣だ。
以前に来た時には多分、冒険者によって雑魚魔獣は倒されてしまっていたのだろう。
アップデートにより、イベントダンジョンには、基本的に冒険者NPCは入れないようになっている。
なので、競争相手が激減するのだ。
ま、たまーにダンジョン前でダンジョンマスターを出待ちしている冒険者NPCが居たりするらしいけど。
その時はその時だ。
お、敵対NPCのマーカーが近づいてきた。
視界に現れたのは、アライグマみたいな魔獣。
確か名前はキラー・ラクーン。
ただしかなり人(?)相が悪い。
「来たっ! カレー!」
「ゴポッ!(……任せろ)」
スライム・タンクのカレーは、飛びかかってきたアライグマもどきに対して立ちはだかり、私達を守るように板状に変形し、硬化した。
ガチィン!
キラー・ラクーンを、勢いそのまま弾き飛ばした。
これがスライム・タンクの能力の1つ。
相手の物理技を完全に受け止める。
それにより、プレイヤーはかなり安全に立ち回る事が出来るようになる。
そして、スライム・タンクの板状の体にポコッと穴が開く。
私が射るために、彼がわざと開けた穴だ。
私は馬から降り、既にクロスボウを構えている。
カシュッ。
吸い込まれるように、矢がキラーラクーンの頭を射貫いた。
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以下のアイテムを入手しました。
「キラー・ラクーンの牙x1(レア度D)」
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「お疲れ様。この調子で奥に行こうか」
◇ ◇ ◇ ◇
奥に進むと、それに合わせてエリア地図上の3体の雑魚魔獣が奥へと逃げる。
そして、マッド・タイガーと3体の雑魚魔獣が最奥で待ち構えているっぽい事がエリア地図で分かった。
「学習してるねぇ」
NPCにも少しは知能がある。
そして死んで蘇っても、得た知識などは引き継ぐ。
マッド・タイガーは、自分1体では侵入者に敵わないと学習したのだろう。
雑魚魔獣と連携して私を倒す算段らしい。
敵対NPCが物理攻撃だけのパーティなら、私がここで留守番して、スライム達に任せられるのだが。
多分そう上手くいくまい。
私は馬を降り、ここで待機するように命じる。
そして私達は最奥の部屋に進む。
「ぶにょーん(……来るわよ)」
「キシャルルル、キシャッ!」
敵の姿が見え始めたところで、向こうにいる杖持ちのトカゲ型魔獣、リザード・ウィザードからの先制攻撃だ。
魔法による炎の玉が、私達目掛けて飛んでくる。
「右に避けて!」
スライムの弱点。それは物理以外への耐久の低さ。
まともに食らえば、この火の玉2~3発食らえば落ちる。
初期装備プレイヤーなら2発、私の課金装備なら3発くらいで落ちるかな。
私達は避けて、奥まで突進する。
「紫おいも! リザウィザに目眩デバフ!」
「ブヨル(うぇーい)」
紫おいもから、灰色の光線が出る。
それ自体に威力は無いが、効果は【目眩】デバフ付与。
8秒程度、目がクラクラする。
おかげで、2発目の炎の玉があらぬ方向へと飛んでいく。
「もういっちょ、リザウィザに目眩デバフ!」
紫おいもから、再び灰色の光線が出る。
だが、それはマッド・タイガーが飛び出してきて、身を挺して防ぐ。
奴も、この戦いの要がリザード・ウィザードである事を承知している。
厄介だよ、学習するNPCってのは。
マッド・タイガーはボスなので、デバフ効果は半減する。
目がぐるぐる回っているが、こちらへと飛び出してこない。
そのせいで、リザード・ウィザードへ射線が通らない。
代わりに残り2体の雑魚魔獣を仕留めることにする。
キラー・ラクーンは私がクロスボウで仕留めた。
リザード・ナイトはおはぎが酸で溶かして仕留めた。
途中、私に火の玉が3発ほど飛んできたけれど、カレーが2発受け止めてくれた。
「ぶにょーん(【回復】! ほら、頑張りなさい!)」
「ゴボボ(……感謝する!)」
おもちがカレーを回復。
回復量は最大体力の半分程度だ。
あと1発くらい炎の玉を耐えられるだろう。
「ぶにょにょ(うぉぉおおおおおお!)」
おはぎが、シーフとしての素早さを最大限生かして、リザード・ウィザードへ突進する。
丁度マッド・タイガーは【目眩】デバフが効いていて、捌ききれない。
ドスン!
リザード・ウィザードが倒れた。
ウィザード職は耐久値がゴミだから、1発で沈んだのだ。
あとはもう勝ち確なので、適当に立ち回りしても勝てる。
マッド・タイガーは、物理無効のスライム達に為す術なく沈んだ。
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以下のアイテムを入手しました。
「リザード・ウィザードの肉x1(レア度E)」
「リザード・ナイトの皮x1(レア度D)」
「マッド・タイガーの肉x1(レア度D)」
「マッド・タイガーの皮x1(レア度D)」
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毎日クエスト『ダンジョンを1つクリア』達成:+300DP
所持:180,400DP→180,700DP
「乗竜用サドルx1(レア度E)」を入手しました。
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イベントクエスト『【マッド・タイガー】討伐』達成:+1,000DP
所持:180,700DP→181,700DP
「狂虎雷龍長靴(右足)x1(レア度B)」を入手しました。
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お、ブーツか。
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狂虎雷龍長靴(右足)(レア度B)
【説明】狂え。そのひと踏み、雷龍のごとくなり。
【効果】雷竜地雷設置
※剣威力微上昇
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雷竜地雷設置効果は、狂虎雷龍長靴(右足)の固定効果だ。
自分が歩いた場所に1分間だけ有効の、踏むと電撃をお見舞いする地雷を設置する。
地雷はその1分間に1個まで設置可能。
で、ランダムエンチャは剣威力微上昇か。
悪くはないけれど、取り立てて良いというわけでもない。
マイナスエンチャでないだけマシだけど。
ま、いいか。
とりあえず私のダンジョンに帰るとしよう。