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ACT1 鞭撃ちの青年

 縦坂町たてさかちょう

 ここは、オウラが蔓延はびこる世界。

 オウラとは、怪物みたいな存在で、死体を思わす生気のない人間を増量化させる肉眼では絶対にられないバケモノである。


 そのオウラを造る人をエアメイドという。

 エアメイド消滅組織『レンダー』所属の有村ありむら

 年齢不詳の組織一凄腕の消滅仕事人ハイデリーターである。

 ある時はホステス。ある時は援助交際相手。ある時はスパイ。ある時は闇商会の女社長に扮してエアメイド討伐に取りかかるのだ。

 オウラを発生させないことも重要だから、エアメイドを探すのも仕事である。

 エアメイドやオウラの出現を連絡しあう取引先『ダークジョイント』に情報をもらって活動している。


 ここ縦坂町は、某ドーム30個分の面積をほこる。

 タテサカブレード。この名が町に幅聞かせる凄腕の宵闇荒よいやみあらし集団だ。

 縦坂町の『悪』の代名詞になるグループだが、そこまで知名度があるわけじゃない。

 グループリーダー格『りん』は、荒し連合一の美女だった。

 男を手玉に取るのが唯一の取り柄。

 実体がエアメイドだという素性を明かさぬ男にまんまと引っ掛かり、『オウラ造り』の材料にされてしまったのだ。


「キャー!! この変態!!」


「泣けよ、わめけよ、リョナれよ~!! フフフフ!! その若いエネルギーを『アレ』にさせる原石にしてやる。覚悟しな~」


 正体をエアメイドとして教えたが、琳羅はまったく理解できなかったのである。


「服をイヤラしく剥ぎやがってよ~!! 絶対にゆるさないからな!!」


「口だけは達者だな。おうおう!! アレを造る前のショータイムだな。こりゃ見せ物にすりゃカウント数稼げるぜ。アハハハハ……ハハハー!!」


「この凌辱魔!!」


「なんとでも言えや!!」


 そんな時、全裸に近い恥ずかしい姿の琳羅にジャージ上を覆わせた男子が現れてきた。


「なにさらしてんだ、コ~ルラ!!」


 ブチキレたエアメイドの男。その廃屋の施設内に入った男子に因縁つけた。


「単なる通り掛かりのランニング学生です。見なかったことにします。しかし、この状況……俺は見過ごせないです」


「正義ゴッコかよ? 威勢の良い兄さんよ、大人しく帰った方が身のためだぜ」


「普通のランニング学生が本気出せば、ほんの一瞬であんたを沈められるさ」


「強がってんじゃねえぞ、コ~ルラ!!」


 マッハ攻撃じゃないかと思わす瞬殺回し蹴りが、そのエアメイドの頭部に炸裂したのだった。


 完全に延びてしまったエアメイドの男。裸同然の琳羅はジャージ上を返そうと脱ぎ始めた。


「おっと!! キミさぁ、今日はそれ貸すからそのまま帰って良いよ」


「あなたは目標を倒したのだ。その借りがある。余計に増やすわけにはいかない」


「俺さ、この町の住民……騎蔵きぞう。よろしくな」


「あたしは……羽根琳羅。リンラって呼んでも良いが、もう会わない可能性があるから、忘れるがな」


「キミが忘れようとも俺はリンラさんを忘れないよ」


 いきなりの攻撃で伸びたエアメイドの男は、実は芝居であって琳羅の背後に立てる隙を見計らった。


「ヘッヘヘ~!! もう逃げ場ねえぞ、大人しくオウラになれや!!」


「しまった!? アイツ、倒れた芝居を打ってたのか?」


 悔しがった騎蔵。完全にブチキレたという。


 エアメイドの男は、琳羅の背中を5回ほど掌底で打ち出した。

 すると、肉眼では視られない『オウラ』が彼女から発生しだした。発生後の彼女は、魂が抜けたようになり気絶してしまった。


「琳羅さん!! どうしたんだ……まさか、オウラってヤツが既に造られたのか?」


「おう、そこの兄さんよ~。秘密裏の情報を知りすぎたな……隠蔽のために狩りだしてやろう。手始めに俺のオウラよ、あの青年の生気を吸い出せや!!」


「知りすぎた情報の処分ってヤツかよ。畜生……このままじゃ、俺死ぬなぁ」


「オウラよ、吸引せよ!!」


 肉眼で視えないシルエットは、騎蔵に迫ってきた。

 これが万事休すかと言わんばかりのシチュエーション。

 そんな時……仙人的な老人が教えた極意を思い出した。


「騎蔵よ、よく聞きなさい。絶体絶命のピンチの時にはアレを引き出すのだ。そう……アレである。『隻片空停せきへんくうてい強鞭疾発きょうべんしっぱつ』を撃ちだすのだ」


「隻片空停……強鞭疾発?」


「やむを得なかった時だけにこれを撃てよ!! よいな!!」



 この言葉が、老人の教えが走馬灯のように脳内をよぎったのだ。


「笑う? ふざけやがって!」


 挑発に乗せられたエアメイドの男。

 余裕の精神を保って、老人のセリフ通りの方術を試してみせた騎蔵。


「食らえ!! 隻片空停・強鞭疾発!!」


 騎蔵の心眼にオウラのシルエットを捉えた。そのオウラに向けられた肉眼では視られない無数ある鞭……ウィップが目標に連打してはオウラを一体分蹴散らしていった。


「こいつ!! なんなんだぁ!? オウラが視えるというのか?」


 オウラは自然に消えたが、琳羅から生まれたからか、彼女の意識は途絶えたままであった。


「琳羅さん……琳羅さん、大丈夫か?」


「ちい……これで勝ったとか思うなよ!! お返しは数千倍にして返してやらぁ!!」


 負け惜しみの撤退時の定番を吐き出し、撤収しだしたエアメイドの男だった。

 

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