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深夜の真剣短編一本勝負  作者: 凪狐うどん
4/5

転生/転移特典(捻り)

軽めの百合です

「目を覚ませ。さもなくば蹴る」


 声につられて目を開けると同時に横腹を蹴られて私愛用のベッドから転げ落ちます。痛いです。


「起きたか。面倒だからさっさと手続きすませるぞ」


「手続き……?」


 正直寝起きなので頭が働いていません。おまけにあくびが出ます。ねむみ。


「ほら、何ボケッとしてんだ。さっさとしろ。俺は帰って寝るんだから」


 ええーっと。この人は何を言っているんでしょう? ああ、分かりました。不法侵入ですね。

 携帯を探して手に取ると『1、1、0』と押して警察(国家権力)に連絡をとろうとすると、その携帯すら蹴り飛ばされました。


 ……これはあれでしょうか。夜這い?


 でも私、普通の女子高生である前に引きこもりですよ? ストーカーされるほど外に顔を出していないのでその線は薄いと思うんです。優しくした事なんてないですからね!


 となると残るのは体目当て……? でも私の体はつるぺったんです。言ってて悲しくなりますがストンです。ぐぬぬ……


「変な事考えながら百面相してるところ悪いが俺はそんな事をしにお前のもとを訪れた訳ではない」


 夏間近で扇風機を使うのが惜しくて開けていた窓から風が吹き込む。

 カーテンが揺られて月明かりが声の主の姿を現す。


 引き締まった体にスラッと伸びた長い肢体。野獣のような瞳に腰まで伸びた長い白髪はくはつ。極めつけは顔の下。一度はダイブしたいと思わせるほどの大きなぱいおつ。


 ……ん? ぱいおつ? つまりおっぱい?


 よーく顔を見てみると、確かに野性味溢れる顔ですが所々には女性らしさが顔を覗きます。

 それどころか更に下を見ると付いてません。ええ、私と同じです。


「イケメンな女の人だー」


「お前はいきなり何を言っている」


 冷たい声でピシャリと言われます。同性と分かるとさっきまでの不信感や恐怖感が安心感へと変わりリラックスしてしまいます。

 なので今の言葉も『クールな人だー』で済まされちゃいます。


「何ワケわからん事を考えてるのかは置いてくとして、俺はお前に転生しないかと言っているんだ」


「あれ? 私そんな事を言われましたっけ?」


 言われたとしたら手続きとか帰って寝るとかですね。お疲れなのでしょう。


「きっと聞きそびれたんだろう。で、どうなんだ。するかしないかさっさと決めろ」


 声にだんだん怒気が混ざってきました。

 と同時に何処かからかピキッと何かが割れた音がします。


「くそっ、もう時間がないんだ。早く決めろ!」


「えっ!?」


 見れば見るほど焦りが見えて来ます。

 気付けば私の部屋はピキピキと言う音と共に割れて黒い空間が見え、人の形をした不気味なものが私を見てきます。


「わ、分かりました。転生します!」


「よし、間に合った。契約成立だ」


 女の人の背中から白い羽がふわりと広がります。

 正直夢なんじゃないかと願う気持ちはありますが、それは起こされる時に蹴られた衝撃で現実だと突き付けられています。

 だからこれもきっと夢なんかではないのでしょう。


 突如黒い空間から「ぼぉぉぉおぉぉぉ!」と言う奇声をあげると共に私に襲いかかってきます。


「いや、やめ、やめて!」


 リラックスの後の恐怖と言う感情のジェットコースターに、私の精神が崩壊寸前です。

 でもそれが私に触れることはありませんでした。


「全く。俺の契約者に触れようとするとはな」


 バリア、と言うのでしょうか?

 私とイケメンな女の人の周りには球体の膜が出来ており心地よい安心感が私を包み込みます。


「ここだと話しにくいし場所を変えるぞ」


 パチン! と指で鳴らすと私の部屋だった場所から一面に草が生い茂る晴れやかな空間に出ました。ただ外の世界が少し久し振りで戸惑いもありますけど。


「さて、それじゃあお前の設定をするからなんでも言え」


「えっ?」


「転生……と言うか転移したんだから設定し直すのは当たり前だろ? それとも何か? 俺の言葉が聞けないってのか?」


「いえ、違いますよ!?」


 ただイマイチピンとこなかっただけですと慌てて付け足してなんとか場を収めます。ふぅ……びっくりしました。


「とりあえずここは異世界だから自衛手段はあった方がいいぞ」


 自衛手段……となると自然とさっきの事がフラッシュバックして鳥肌が立ち、足がガクガクと震えてきます。


「自衛手段なんて要らないので一緒に居てください」


 力を振り絞って腰にしがみつきます。恐らくここで手を離したら私は確実に野垂れ死ぬ事でしょう。もはや生きるための行動です。


「おい、離せ。離せと言っているだろ!」


 と言いつつも顔を見上げると少し顔を赤らめていました。もしかしたらこう言うのに弱いのでしょうか?


 それならここは私が乙女ゲーやギャルゲーで培ったあざとい手法で狙い打ちです。


「お願いします。私を見捨てないで!」


 上目使いで顔を直視します。普段こんなことをしないので私も反射ダメージがあるが、それよりもこの人の反応が私の折れそうな心をつなぎ止めてくれています。


 そんな押し問答を続けていると「仕方ない……」と諦めてくれました。私、大勝利です!


「でもとりあえず設定だけはしておくぞ。普段から一緒に居れないって時もあるだろうからな」


「ならワガママ言ったのは自覚してますし弱めでいいです。あなたと一緒に居るだけで私は嬉しいので」


 これはさっきまでとは違う。紛れもない本心です。


「はぁ……。俺にはお前がワザとやってるのか本心でやってるのかよく分からなくなってきたぞ」


 そう言いつつもきっちりと設定をしてくれるこの人。凄く優しいですね。


「よし設定終わったしどこに行くか」


「あなたと一緒ならどこでもいいです」


「え?」


 私の右手の指とこのイケメンな女の人の指を絡ませます。いわゆる恋人繋ぎというやつです。


 同時に設定してもらったステータスを見てその中に一つ気になった欄を見ます。そしてつい口許が緩んじゃいます。


「ほら、行きましょうよ」


「お前……急にイキイキしだしたな」


「当たり前ですよ」


 もう一度顔を見ます。


「だってあなたと一緒ならどこでもいいですから!」


 ステータスの中の称号には《女神と共に歩む者》と書かれていましたから。




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