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深夜の真剣短編一本勝負  作者: 凪狐うどん
3/5

トンネル抜けたら玉座の裏だった

暗い暗い洞窟ダンジョンを松明片手に歩いていく。


理由? そんなものはない。ただただ洞窟ダンジョンを進むのが好きだからだ。いや、これが理由かもしれないな。そんな事は置いておくが。


「ししょー、まだ着かないんですかー?」


このやけに語尾を伸ばし、俺を『ししょー』と呼ぶ少女は俺の通っているレイアス魔法学園の1つ下の後輩で名をリーリスと言う。

ついでに俺はマグナと言って勇者科の一人である。


「ししょー、話聞いてます? 私。まだ着かないか聞いたんですけどー?」


「知らねーよ。俺だって初めて潜る洞窟ダンジョンなんだ。どこまで続いてどこに着くのかなんて分かる訳ねーだろ」


言い返すとリーリスは興味を失ったかのように「ふーん」と適当にあしらわれる。……コイツ、一回殴ってやろうか!?


だがリーリスは残念な事に美少女だ。ただでさえ洞窟ダンジョンに着いて来ようとして取り巻き共に睨まれたのに、もしケガでもさせたら俺は生きていけなくなる。それほどまでにリーリスは魔法学園のアイドルとして君臨しているのだ。


「……全く。何でこうなったんだか」


ため息をつきながらあえて聞こえるような大きさで愚痴る。


「何ですかししょー。私がししょーに興味なくしたと思ったんですかー?」


「半分外れと言ったところだな」


「半分当たったー!」


のんきなものだな。確かにこう言った会話は精神的な疲れをとる事もある。だがそれと同時に。


「そっかー。ししょー、私が興味無くなったと思って寂しくなったんですねー」


非常にうざったく思えてくる。果てにはそのまっ平らな体で抱き付いてくる始末。

まずはその貧相な体を離すところから始めなければならないな。


「なあリーリスよ」


「何ですかししょー」


「重いし固い」


「そうですね。私体カッチカチなんです。揉んで柔らかくしてくださいよー」


「黙れ痴女!」


思いきり振り払ってもすぐさま抱き付いてくる。重い。

誰だ女の子は軽くてフワフワなんて言ったやつ。あんなの嘘だ、詭弁だ、戯れ言だ。


俺は洞窟ダンジョンに潜るために日々鍛練を欠かさない。なので体力作りには手を抜く事はない。にも関わらずリーリスは重い。まるで漬け物石のようだ。アレ? そんなに重くない?


「ししょー。純粋可憐な乙女に向かって痴女って酷いですよー?」


「大丈夫だ。俺のなかではリーリスは乙女おとめと書いて乙女おつじょと読むから」


「ししょー酷いです!」


ギャーギャー煩いから耳をふさぐ。にしても元気だなコイツ。進むスピードをもう少し上げてもいいだろうか。いいよな。よし上げよう。





☆☆☆






「ししょー……もう私……ダメですよぅ」


あれから一時間経っただろうか。ずっと元気だったリーリスの気力は段々無くなっていき、今に至ってはだらしなく口を開けて目は虚ろ。全身は汗で濡れて下着がうっすらと透けている。実に艶かしい状態だ。これを取り巻き達に見られたらと思うとゾッとする。


「悪い。流石にとばしすぎた。休むか?」


「いえ、少しスピードを下げてもらえればそれでいいです」


はぁはぁと息を荒らしながら付いてくるリーリスは俺の感情を揺さぶる。なのでそう提案したのだが返ってきたのはまさかの反対意見。リーリスは意外と負けず嫌いなのかもしれない。

いや、スピードを下げてもらいたいと言ってるんだから自己主張激しいのか?


まあいいや。


「分かった。ツラくなったら言えよ? お前に師匠と呼ばれてるのならそれらしい事をしないとだからな」


そう一言添えてからまた歩き出す。

その後は弱音を吐く事もなく、洞窟ダンジョンはその様相を変えた。


「人の手で造られたみたいだな」


さっきまでのゴツゴツとした岩肌がそのままの壁ではなく、滑らかな半アーチ型の壁になった。


更にはその壁に等間隔で灯りが点いている。松明の火を消しても壁の灯りのお陰で真っ暗になる事はない。


「ふー……何ですかねー、ここ?」


「分からんがもう少し進んでみよう」


もしかしたらこの先に何かがあるのかもしれない。

逸る気持ちを抑える事は出来ず次第に速足になっていく。


「ししょー。ちょっと待ってー!」


「分かった。おんぶしてやんよ」


さっき散々重いとか言ったが今はそんな事よりもこの続きがどこに繋がっているのかを知りたい。

戸惑うリーリスをよそに背負うと、それでもスピードを上げて進んでいった。



そして進んだ先にはスポットライトを浴びてそれだけが強調されるような物があった。後ろを振り替えると、俺達が進んできたのはトンネルだったと言うことが分かる。


「ほう、そこから来るとは大したものだ。勇者よ、褒美に世界の1割をくれてやろう」


凛とした声と、その声を出したと思われるドクロの兜を被った幼女が手をゆっくりと叩きながら現れた。


それと同時に胸の大きな女性と、猫の獣人の少女がその幼女の隣に現れる。


「お、お前ら……」


「あーもう、魔王様。そんな事言っても魔王感なんて出ませんよ?」


「と言うより何でそんなところに穴なんか掘ったんですか? 掃除が大変じゃないですか」


やっぱり魔王か。ただ噂ではその姿で人を惑わすとか言われているがそんな雰囲気は感じさせられない。むしろ両隣の女性の方が威圧感があるから手下とかに見える。


「ししょー、もしかして私達ってピンチ何ですかー?」


「すまん。俺にもよく分からん」


にしても何だこの空間は。


「っとそうだ、忘れてた。お主らは眠っていてくれないか?」


幼女な魔王が俺達に向かって何やら唱えると、そこで俺達の意識は潰えた。





☆☆☆





「ししょー、ししょーってばー。起きてくださいよー」


体を強く揺さぶられる。この呼び方をするのはリーリスか。


「どうした? ってここはどこだ?」


疑問を呟いたら突如扉が開く。ビクッとしながらその方を向くと幼女な魔王が現れた。って俺達確かコイツにやられたような気が……?


「ここは魔王城。そしてヌシらはここで働いてもらいたいのじゃ。最近新しくメイドが入ったのだが、やれ真面目に働けだのと存外口煩くてな。是非とも私がやる分の仕事を片付けてもらいたいんだ」


入ってきて早々そんな事を言いながら頭を下げてくる。

中々に仲間想いのようだと好印象を抱く。


「つまりだな。要約すると私達の仕事を手伝ってもらいたい」


その実直なお願いに俺達二人は、首を立てに振らざるを得なかった。





どうしてこうなったorz


イメージとしては前回の魔王城を裏から攻めてみる感じになりました。

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