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お願いします、かくまってください
殺される
そう思った
***
「っっはあ……は…」
包丁を持った男が私を追いかけてくる。
私は走って、走り疲れてもう息も切れそうだった。
住宅街の角を曲がる。誰かの家の庭に入ってしゃがみ込んだ。
通り過ぎるのを待つ。ひたひたと足音が聞こえた。
―――来るかもしれない、気づかれるかもしれない、…怖い!
足音が通り過ぎてから何分の時間が経ったのかわからない。
わたしはゆらりと立ち上がって、その家のインターホンを押したのだ。
***
『…お願いします、かくまって下さい。』
夕飯を食べ終わって、食後にコーヒーでも飲もうかと思っていた時だった。
インターホンが鳴り響き、少女の声が聞こえた。
それは場違いとも言える言葉だった。
「何の用だい」
『追われているんです…お願いします、お願いします、お願いします…早く…』
「わかったよ」
私は少女を家に招き入れることにした。
***
『わかったよ』
わたしを迎え入れたのは一人の翁だった。家の中からコーヒーの香りが漂う。
「ありがとう…ございます…」
わたしは鍵がかかったのを確認してから、安心したのだろう。膝から、崩れ落ちた。