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A-1450年、ヴァイスナハト3

二五:ヴァイスナハト3




 二人が病院を出たのはその三日後のことだった。

 既に男からもらった小切手は換金済みで、ヒロにはそれによってこの世界に幸をもたらすのだという強い決心があった。


「…でも、お金を得たところで、どこに行けばいいの?」

「…とりあえずは図書館か何かでこの世界の宗教でも調べるか。なるだけでかいところが良いんだけれど…。」

 そこから二人は人に聞きつつ電車で近くの都市へ行き、その地域随一だと言う図書館へ赴いた。

 その間ヒロはジュナに図書館と宗教について説明してやる羽目になった。


「…つまり、その宗教の中に、『光』を崇めるようなものがないか調べようってわけだ。」

「あなたの世界にも、宗教があったの?」

「ああ、色々なものがあったし、『光』もその一派みたいのに奉られていたんだ。」


 そこへ辿り着くと、まず彼らは宗教に関するあらゆる本を手当たり次第に読んだ。

 『羽』を奉る宗教がないか…。大図書館とあって、その作業はなかなか進まず、駅前に宿をとって、数日をかけて、本を調べていった。

 しかし、どこを調べてもそのような宗教は存在しないことがわかった。


 途端にヒロは途方にくれた。彼にはある程度自信があったのだ。『羽』が何らかの宗教的なものの信仰の対象になっていることについて。

 しかし、その自信はもろくも崩れさってしまったのだ。


「どうするのよ。」

「正直、手掛かりがない…。」

 仕方なく、その日二人は作業を中断し、ホテルで休むことにした。もちろん、部屋は別で。


 数日間勉強しっぱなしのような心地のヒロは徒労感もあったか、一気に疲労を感じ、ベッドで眠ってしまった。


 しばらくして目が覚めると、彼は何の気なしにテレビをつけた。

 目覚めたらとりあえずテレビをつけるのは、この世界に来てからの習慣となっていた。


 映ったのは『朝』のニュースだった。


 「今日未明、KASAは遂に、スペースシャトル『Enishi』を打ち上げました。乗組員は14名。内、カムナ国からは2名が乗り込みました…」

 彼は初めそれが何のことを言っているのかよくわからなかったが、すぐ宇宙へ行き作業をするプロジェクトに関するニュースであることを理解した。

 そうか、ここでは人は宇宙にも行くのか…。

 ニュースはこう続けられた。

「…今回は三日後に宇宙光源増幅炉『Elwina』にドッキングし、増幅炉の修理にあたるということです…。」


 …宇宙光源増幅炉?

 その言葉が彼の耳に強く残った。

 …光源を増幅する…?…人工的に?


 ヒロに一つの考えがひらめいた。




 二人はまたも、図書館で調べものをした。今回は宇宙工学というヒロも馴染みのない分野の本を漁った。

「もう宗教とやらは調べ終わったじゃない。今度はなにを読むの?」

「『今朝』のニュースでな、気になることがあったんだ…。」

 そう言ったきり、ヒロは一冊の本に集中していた。

 今回はそう探すのに苦労したわけではなかった。その本は同分野についてのかなり入門的な本で、ヒロにでも理解出来るものだった。


 一通り読み終えると、ヒロは自分の考えに益々自信を強め、今度はジュナに説明しようとした。

「つまり、だ。あの空に浮かぶ光、『太陽』と呼ばれてはいるあれは、おれが考える『太陽』とはだいぶ違うものだったんだ。

 おれはてっきり、あの光源は自然なものだと思っていたんだ。何しろ、おれの世界では太陽は自然に昇って沈むものだからな。

 …しかし、この世界で現在『太陽』と呼ばれているのは、それと違って、人工的につくりだしたものらしいんだ。」

「どうやって?」

「まあ、難しいことはおれもよくわからないんだが、何か小さな、しかし強い光源が宇宙あるらしく、その光を反射、増幅させて世界中に光を永遠におくるシステムらしい。

 そして、その光源は宇宙光源増幅炉というもののなかで保管されているそうなんだ。」

「…じゃあ、それが…。」

「残念ながら、その光源についてはあまり詳細が書かれていなかったのだが、『ついえることない光』を出すものとなっている。

 …恐らくこれがおれらの求めるものだろう。」

「…じゃあ、私たちはその宇宙とやらにいかなきゃいけないのね。でも、簡単に行けるの?」

「一昔前までは素人が行くのは不可能だったらしいが…。最近は宇宙旅行とやらができるらしい。その中には、宇宙光源増幅炉見学というのもあるそうだから、行ってやれないことはなさそうだ。」




 続く

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