歴概念なし、ラングナハト5
今回ちょっと短いですが、切りがいいのでここで一旦切ります。
その後もそれはそれは幾度ものピンチがヒロたちを襲う。…いや、ピンチだと認識していたのはヒロだけだったのかもしれないけれど。
暗闇だからその姿形はよくわからないが、大小様々な獣らしきが次々襲いかかり、その度にリイスがいつの間にか『呪』で撃退する、という具合。
しかも、明らかにターゲットはヒロかティナだった。
「獣たちは大抵、こちらが『呪』が使えるかどうかを見極めることが出来るんですよ。ですから、使えない私たち二人を目掛けて来るのが多いのです。」
襲われた瞬間くらいは身をのけ反らせるティナだったが、実に落ち着いた様子で話す。
「…大丈夫。リイスは…というか使える人は皆それ相応の訓練をしていますから、滅多なことで私たちが手傷を負ってしまうことはありません。」
「…そ、そうですか。」
一人本気で怖がっている自分がバカらしかったが、また獣の目が光れば、やっぱり恐怖が彼の心を占めていた。
リイスにお礼をする気持ちを持つ余裕すら、なかった。
さて、ヒロが夢で見た『光』の方向へ、なんとか進んで行くのだが、やはり現実には一向にそれは見つからない。
…やはり、あれはただの夢でしかなかったのだろうか…?ヒロには『夢見』など出来ようはずもない…。
ヒロはそう考えながらも着々と進んでいった。
気がつくと森は急に開け、丁度山と山の間、といった具合のところにでた。
そこは四方山々や森に囲まれているのに、今迄通ってきたところと違い、植物らしきものもほとんど生えていない平地があった。
その荒涼とした風景に妙なものを感じながら、一行はさらにすすんだ。
そして、丁度その平地の真ん中くらいまで来た時だろうか。松明を持っていたリイスが、何気なく地面を照らすと何かが描かれているのに気付いた。
「これは?」
その描かれた線かなにかを松明で辿って見ると、何か円形の模様か絵のようなものが描かれているのに気付いた。
一同は暗闇のせいもあり初めそれが何かはわからなかった。
いや、ヒロは最後まで良くわからなかったのかもしれない。
初めに気付いたのはティナだった。
「これは…『呪印』…。」
この呟きにリイスとティナは反応した。ヒロはまだわからなかった。
「早く離れて!早く!」
しかし、気付くのが少し遅かった。
ティナとリイスは咄嗟にその円形の外から出た。しかし、他の二人が外に逃れる前に、その円形の模様は白く発光し出した。
次の瞬間、その光は強くなりながらヒロとジュナを包み込んだ。
そして、その光はが突然消えたかと思うと、二人の姿も消えていた。
「これは…移動の『呪』が刻まれて『呪印』…。」
それは、『呪』の力を溶かし込むことでそれに触れたものに『呪』をかけることが出来る『呪印』。
これを造れるのは相当な力の持ち主…。ましてや瞬間移動型の『呪』だなんて…。一体誰が?
リイスもティナも『呪』のことは当然知っている。移動型の『呪』はただでさえ使用出来るものは難しい。また、『呪印』の生成も然り。従って、瞬間移動型の『呪印』を造れるものなど、きいたことがなかった。
二人の前には、暗黒の大地と静寂だけがあった。
次回から2方向で話を進めます。
ヒロ側とティナ側ですね。