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歴概念なし、ラングナハト4

いやいや、ちょっと日にちを開けてしまいました。部活やらテストやらが忙しくてですよ。ごめんなさい

二十:歴概念なし、ラングナハト4




 ヒロは当然ながら、この夢のことをティナに話した。そして長老にも…。

 少し考えた風な後、ティナはこう尋ねた。

「あなた、『夢見』の力があるのですか?」

 それは唐突な質問でヒロには何のことかわからなかった。

「『夢見』というのは、自分や自分の関係者などの未来を直接的な、或いは何か暗示的な夢として見る力のことです。ほら、私たちの先祖が光のことを夢で見たのと同じ能力のことです。」

 その時、ヒロは由里子のことを思い出した。そう言えば、由里子の能力もそう呼ばれていたっけ…あ、でもあれは未来じゃなく別の世界を見るものだったか。

「いえ、おれには特にそのような能力は…。」

「だとすると、どうしてあなたは私たちもあなたも知らない『光』を夢の中で見るのでしょう。」

「よくわかりませんが…でも『光』はおれが前にいた場所で見たことありますよ。」



 そう、ヒロは『羽』の光を知っている。


「えっ?あれは、あの光の源は他にもあるのですか?」

 それは微妙に面倒なことだった。

 ラクシュウェルの人達はヒロが別の世界の住人だとは知らない。…というかヒロと同じような世界の概念を持っているのかもわからない。


「ま、まあそうなんです。しかし、今度見たのは明らかに夢でした。おれには夢でそのようなものを見る力はないし、かといって…。」

 確かにヒロにはそんな特別な力などない。けれど、かといってあの夢がただ毎晩見ては忘れる気まぐれな普段の夢の一つだとは思えなかった。

 それはぼんやりとしているのに、確実に記憶に刻まれていた。


 何か、さも記憶しなきゃいけないかのように見ている夢のような…よくわからないがそのような感覚を覚えていた。


 これらの事を思案したのち、ヒロは言った。

「…ですが、やはり、あの山と山の間の森の方に、それがあるような気がしてならないのです…。根拠は全くないのですが…何かがおれにそのことを伝えているような気がするのです。」

 何か

 そう、まさにそんな感じだった。

 自分の一部か他者なのかもよくわからないなにかが。

 

 ヒロの言葉を隣りで聞いていた長老は、比較的すぐに答えを出した。

「よし。それならば一つそちらの方を調べて見ようじゃないか。何事もやってみないとなにも進まないからね。」


 森の中を村ごと進むのは大変なので、長老は、何人かで探索を進めることにした。

 妙な感覚を持っていたヒロは自ら行くことを決め、その他、ティナと、村の青年と若い女が行くことになった。


「やっぱり、『何もない』人達だけと言うのは心細いから…。」

 ティナはそう呟いた。

「なにもない、とは?」

「ああ、彼らは先日あなたが受けた『呪』を使えるのです。」

「ええ?」

 ヒロは『呪』を使えるものがそれほど身近にいることに驚いた。いや、身近と言っていいのかはわからないけど…。

「はい。『呪』の力は私たちの家の遺伝なんですけど、必ず備わっているわけではないのですよ。だいたい、それを持つ人の発現割合はだいたい2割、結構貴重で、しかも私たちの村には必要不可欠なのです。」


「というと、なにか怪我を治せるとか?」

 ヒロは魔法のようなものを思い浮かべてそう尋ねた。

「ああ、そうですね。傷病の治癒にも一役かっていますが、他にも方角は彼らでなければ知り得ません。」

 え?と、ヒロは意外に感じたものの、まあ、世界が違うのだからそう言うこともあるのか、と思い、コンパスはないの?などとは訊かないでおいた。

「何でも、空の星のなにかを聞くことによってわかるのだそうです。『呪』の力もそうした夜空の星のなにかを借りて使うのだそうですが、何にしても一般人には理解のしようがないみたいです。

 あなたも恐らく、そう言う類にあてられたのだと思うんですが、あなたの住むところではそう言うのはないのですか?」

「…いえ、でもまあ世界にはわからないこともたくさんありますからね。おれが知らないからと言って、存在しないとは全く限らないでしょう。」


 そう、世界は広い。ただ一つの世界だってとてつもなく広い筈だったのに、それがいくつもあるなんて…。改めてその壮大さをヒロはひしと感じていた。




 さて、村の者達と手伝いながら、探索の準備をし、その後出発した。

 基本的には村に帰って来て寝ることになっていたが、念のため多少の食料や簡易寝具を持っていくこととした。

 また、ヒロの手には短とも長ともとりにくい中くらいの長さの剣がわたされた。

「あの森の深くにはまだ誰も入ったことがなく、なにがあるかわかりませんから…。」ということだそうだ。

 一緒に行く男はリイス、女はジュナと言った。

 『呪』には人それぞれ相性があるらしく、リイスは主に方位を知るとともに、獣などの襲撃に反攻することもできるという。また、ジュナは軽い傷病の治癒が可能だという。

 方角はともかく、その他についてはそれ程備えがいるのかと思っていたヒロだったが、その必要性はすぐ証明された。


 それは、森にまだ入ったか入らないかというところであった。

 リイスを先頭にほぼ一列になって進んでいたとき、突如木の物陰で何かが光ったかと思うと、


 がさっ


 という物音と共に何かの影、人程の丈がありそうな何かがヒロ目掛けて飛び出して来るのを彼は見た。

 彼が反射的に身をかがめたかと思うと、突如それは先程飛び出して来たのとほぼ逆方向に飛ばされていた。


 ヒロは、その時やっと光ったものは何かの獣の目で、自分は人程もあるそれに襲われかけていたところ、リイスの『呪』とやらによって獣は退治されたことをようやく理解した。

「私たち、特にあなたと違って、野生の獣はこの暗闇で充分に目がききますから、気をつけてください。」とティナが言った。

 ヒロは、自分の中の不安というものが表面に浮き上がってきたように感じていた。

ありがとうございました。次回も彼らの冒険が続きます。

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