風邪 =壱=
「セイ、なるべくあいつの側に居てやってくれねぇか?」
土方さんのお願いだし。
私も好きだし。
最近。
ベッドで過ごす事が増えた。
玉ちゃんの部屋に入り浸る。
眠ってる玉ちゃんの。
布団の上で丸まる私。
時々。
玉ちゃんの胸が。
ひゅー、ひゅー
て、鳴る。
いつだったか。
とても。
聞き覚えのある音……
「ん…… セイ?」
玉ちゃんが。
目を覚まして。
私を撫でる。
ゴロゴロ……
私がすり寄ってると。
扉が開いた。
「玉ー、起きてる?」
「どうしたの? 銀」
「お茶しようと思って来てみたんだが、どうかな?」
「え、榎本総裁……?」
休憩ついでに。
小姓の銀ちゃん連れて。
遊びに来たらしい武さん。
玉ちゃん。
びっくり過ぎて。
固まってる。
でも。
美味しいお茶とお菓子で。
みんなまったり。
「ここでしたか、総裁」
扉が開いて。
地を這う様な声が。
流れ込んで来た。
「あれ? タロさん…… もしかして休憩終わり?」
「とっくに終わってますから、仕事しましょうねっ」
タロさんが武さんの。
首根っこ掴んで引き摺る。
玉ちゃんと銀ちゃんは。
顔を見合わせて。
吹き出すと。
「オレも戻るねー」
「うん、ありがとう」
静かになった部屋で。
玉ちゃんが小さく。
咳をした……
「玉置くん、起きてる?」
「はい、大鳥奉行?」
今度は。
大鳥が来た。
何しに来たんだろ?
「土方くんから薬を預かって来たよ」
「えっ、ありがとうございます!」
一応。
医者の勉強を。
していたらしい大鳥。
玉ちゃんの様子を。
色々みて。
その後。
雑談を始めた。
なんか緩い感じで。
案外。
大鳥で和める…… かも?
「ここでしたか、大鳥さん」
扉が開いて。
地を這う様な声が。
流れ込んで来た。
「ほ、本多くん?」
「打ち合わせがあるのに来ないって、土方さんが怒ってますよっ」
「あー! 忘れてた……」
本多さんが大鳥の。
首根っこ掴んで引き摺る。
……どっかで見た光景?
それからまた。
玉ちゃんと私。
ウトウト。
人の気配がして。
顔を上げる私。
そこには……
「しー、玉を起こすなよ?」
土方さん。
玉ちゃんの頬を撫でて。
体温を確認すると。
とても、とても。
優しく笑った。
私が見とれていたら。
土方さんが。
こっちを見て。
目が合った。
「ありがとなセイ、玉を一人にしないでくれて」
そう言って。
土方さんは。
優しく、優しく。
撫でてくれた。
玉ちゃん。
早く。
元気にならないかなぁ……
また。
一緒に。
遊びたいよ……
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名前解説。
榎本=榎本武揚
タロ=松平太郎
本多=本多幸七郎
大鳥=大鳥圭介
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