新撰組
土方さんてば。
すっごく寝起き悪いのよね。
蹴飛ばされたり。
殴られたりするから。
みんな起こすの嫌がるの。
だから私が頑張る。
噛みついたり。
引っ掻いたり。
そんな事は絶対にしない。
そっと。
土方さんの。
顔の上でうずくまる。
それだけ。
「ぶはっ!? し、死ぬっ!? げほっ、け、毛が!!」
うふ。
すぐ起きてくれるの。
着替えた土方さんと一緒に。
私も部屋を出る。
土方さんは道場を覗きに。
私は台所を覗きに。
「セイちゃん、おはようございます」
いつもニコニコの。
源さんが。
私を優しく迎えてくれる。
「副長起きたんですねぇ、ご苦労さん」
と言って。
私の頭を。
ポコポコ撫でる魁くん。
「じゃあ島田くん、運び始めましょうか」
「はい!」
新撰組のご飯は。
この二人が作ってる。
「はい、セイちゃんもどうぞ」
勿論。
私のご飯も。
源さんがくれるご飯は。
とっても美味しい!
ん~、幸せぇ~
お昼過ぎ。
のんびり。
屯所内をお散歩。
「ど真中で立ちはだかるとは…… 大した度胸ですね」
とある廊下で。
総司と鉢合わせ。
廊下の真ん中で。
総司と私は睨み合う。
はたから見ると。
きっとおかしな光景……
でもっ!
総司に道を譲るって。
なんか嫌なの。
呆れた様に。
見下ろしていた。
総司の手が。
私に伸びて来る。
逃げ損ねて。
捕まった。
不覚ううぅ!!
でも。
総司ってば。
抱き方や撫で方が。
ちょっと上手くて。
い、嫌じゃないかも……
ついうっとりしてたら。
どこぞの部屋まで運ばれ。
総司はカラリと。
障子を開けると。
私をポイッと投げ込んだ。
「僕は見廻りに行くので、ここで遊んで貰ってください」
「いきなりだね?」
苦笑してる様な。
静かな声。
「じゃあ行ってきます」
悪びれず。
笑顔で去って行く総司。
暫し私と部屋の主は。
ぽけっと。
総司の去った場所を。
見ていたけど。
おもむろに。
顔を見合わせた。
「しょうがないですね、総司くんは」
しょうがないと言いながら。
とっても。
優しく微笑むのは。
山南敬助さん。
「何をしましょうか?」
私の頭を撫でながら。
本当に。
遊ぶ事を考えてくれる。
とっても律義で。
優しい人。
結局。
本を読む山南さんの。
膝の上で。
まったりする事にした私。
たまに撫でる。
山南さんの手が。
とっても気持ち良い~……
せっかくの。
至福の時間を。
ぶち壊す声が近づいて来た。
「山南さん、お茶しねぇか?」
「総司が団子買って来たんですよ」
「たかりですか? 貴方がたは」
「固い事言うなよ、茶ぁ淹れてやったろう?」
左之、平助、総司、新八が。
部屋になだれ込んで来た。
「賑やかですね」
山南さんは。
笑ってるけど。
私は許さないんだから!
もうっ
うるさああぁいっ!!
「いっ、てええぇっ!?」
私は四人を。
平等に引っ掻いて。
部屋を出た。
むむ。
総司は避けたかっ
「賑やかだなぁ、お? セイも居たのか」
部屋を出たら。
近藤が居た。
しかも。
無遠慮に私を抱上げる。
きいいぃっ!!
触んないでええぇ!!
「あだだだっ、セイの愛情表現は過激だなぁ」
「……あ、愛情?」
引っ掻いたのに。
豪快に笑ってる近藤。
ホントに何で。
土方さんは。
あんな馬鹿!
が、大切なんだろう……
もうっ!!
チリリン……
あああぁぁー!!
近藤から逃げる時。
引っかけたのか。
首の紐が。
ほどけちゃった……
くすん。
土方さんが。
結んでくれたのにいぃ!!
近藤……
いつか。
殺すっ
チリン…… チリチリ……
結い紐をくわえて。
土方さんを。
探していたら。
唐突に抱上げられた。
え?
全く気づかなかった。
だ、誰っ?
「ほどけたのか、結んでやろう」
抑揚の少ない。
静かな声。
振り仰ぐと。
抱上げていたのは。
斎藤一さんだった。
一さんは。
縁側に腰掛けると。
私を膝に乗せ。
紐を取る。
チリリン……
ううぅ。
結んで貰うのは。
土方さんが良いけど。
むぅ……
なんか一さんて。
逆らえない……
「出来たぞ」
ま、いっか。
私はお礼を込めて。
一さんのお腹に。
すりすり。
一さんは。
緩く微笑みながら。
私の背を撫でると。
膝から下ろして。
立ちあがり。
どこかへ。
歩き去ってしまった。
うん。
よく分からない人……
夜。
部屋に戻ると。
土方さんは。
机に向かってお仕事。
「お? 戻ったか」
コッソリ。
土方さんの。
膝の上に乗って。
コロリと丸まると。
優しい声が降って来た。
ゴロゴロ。
すりすり。
おっきな手が。
ゆっくり私を撫でて。
だんだん眠くなる。
「何だ、寝たのか?」
暖かくて。
気持ち良くて。
もう瞼が開かない。
明日は。
何して。
遊ぼうかなぁ……
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