壬生浪士組
「あいつらには、絶対に近づくんじゃねぇぞ」
土方さんには。
何度もそう言われたけど。
私は実は。
嫌いじゃない。
でも土方さんが。
心配するから。
コッソリ遊びに行くの。
絶対に。
土方さんには内緒。
今日も。
コッソリ覗きに行くと。
すぐ健ちゃんに見つかった。
ウズウズ……
綺麗な結い紐がゆらゆら。
健ちゃんは。
とても誘い上手。
私は思わず。
我を忘れてじゃれかかる。
「こら野口!! 人の結い紐で猫を釣るんじゃねぇ!!」
「あれ? これ新見さんのでしたっけ?」
健ちゃんニコニコ。
錦、怒り顔。
巷では。
錦は手のつけられない。
乱暴者って。
言われてるけど。
こうして見ると。
健ちゃんの方が。
怖そう……
健ちゃんお仕事に。
錦はさぼり。
どっかりと
縁側に腰を下ろした。
錦の隣で。
私もゴロゴロ。
するとこっそり。
錦が懐から。
煮干しを出してくれるんだ。
うーん、美味しいぃ!
お腹が膨れて。
少しウトウト。
目が覚めたらお昼頃。
錦は消えてて。
私は。
鴨ちゃんの部屋へ向かう。
きっと起きてる頃……
「おはようございます、芹沢さん」
「新見、茶を頼む」
「はいっ!」
錦が開けた障子から。
中に滑り込む私。
白い煙と。
刻み煙草の匂い。
煙いけど。
嫌いじゃないのよね。
鴨ちゃんの前に座り。
見上げると。
鴨ちゃんも。
私をじっと見下ろす。
おもむろに。
左腕を上げる鴨ちゃん。
袖の袂が。
魅力的に開く。
私は迷わず飛び込んだ。
袖口から。
顔を出すと。
ゴツゴツおっきな手で。
鴨ちゃんが。
ぐりぐりと撫でてくれる。
ちょっと乱暴だけど。
暖かくて。
気持ち良くて。
私の。
大好きな場所の一つ。
勿論、一番は。
土方さんの。
膝の上だけどね。
土方さんは。
遊びに行っちゃダメ。
て、言うけど。
やっぱり。
ここも捨てがたい。
だから内緒。
今日もコッソリ。
遊びに行くんだぁ~
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