出逢い
なぜ?
いきなり。
お母さんから引き離された。
なぜ?
「ごめんね……」
悲しげな声。
なぜ?
寒くて。
心細くて。
とにかく泣いた。
泣いても、泣いても。
お母さんは来てくれない。
喉が嗄れて。
ひもじくて。
私はうずくまった。
暗くなって。
月が見えて。
とても寒くて。
私は震える。
ガタガタ、ガタガタ……
複数の足音。
嫌な匂い。
覗き込む複数の赤ら顔。
「なんだぁ? 猫かよ」
一人が手を伸ばして来る。
怖い。
怖い。
「丁度良い、新しい脇差しの試し斬りしてやる」
怖い。
怖い。
白い光が見えた。
「何を物騒なものを抜いてるんですか?」
「な、なんだぁ? てめえ」
「嫌ですねぇ酔っ払いは、さっさと消えなければ斬りますよ?」
誰?
助けてくれるの?
息を飲む気配がして。
私を囲んでいた人達が居なくなる。
「総司、お前まで物騒なこと言うんじゃねぇよ…… お?」
声が近づいて来て。
私を見下ろす。
「何でした?」
「…………子猫かよ」
キレイ……
とても綺麗な人。
そしてとても優しく。
震える私を。
抱上げてくれた。
私はこの時を忘れない。
大好きな。
土方さんとの出逢い。
「よく考えたら助けたのは僕の筈なのに、なぜ嫌われてるんでしょう?」
総司の声が。
私を夢から引き戻した。
土方さんの膝の上。
おっきな手が私を撫でる。
「こいつの懐く基準なんざ知らねぇよ」
「恩を仇で返すって、こういう事でしょうか?」
「……猫相手にむきになるなよ」
私が総司を嫌いな理由?
そんなの。
土方さんが。
一番、可愛がってるから。
に、決まってる!
私が。
土方さんの。
一番になりたいなぁ……
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