秘めゴト
遊び疲れて。
お部屋に。
戻って来た私。
土方さああぁん!
ただいまああぁん!!
………………。
居ない。
ちょっと。
残念。
ん?
この部屋に。
土方さん以外の。
嫌な匂いがっ
これは……
この匂いは……
貴様だああぁ!!
「いだだだっ!? まてセイ、落ち着け、しー静かにっ!!」
コソコソと。
部屋に入って来た。
近藤。
勝手に。
入って来るとは。
近藤。
許さんっ!
「これを返しに来ただけだから、すぐ消えるから、だから爪を引っ込めてっ」
近藤は。
懐から。
本を取り出した。
むむっ
見たこと無いけど。
土方さん…… の?
「ほう、あんたが持ち出してたのかい? 近藤さん」
……っ!
こ、
こ、
コワイっ!!
鬼の副長。
降臨っ!!!!
固まる私。
キリキリキリ……
と、音がしそうな動きで。
近藤が振り返り。
ぽとりと。
本を落とした。
「あ…… トシ…… コレハ、ワルギハナインダ……」
カタカタカタ……
震える。
近藤と私。
地の底から。
這い上がる様な。
土方さんの声が。
流れて来た。
「……見たのかい?」
「うっ、いや、その……」
チャキッ
と、土方さんの腰で。
兼定くんが。
鳴いた。
「済まんトシ!! 悪気はなかったんだああぁっ!?」
え?
叫びと同時に。
近藤の姿が。
消えていた。
なんて。
逃げ足!
土方さんは。
兼定くんを。
ぶら下げて。
近藤の。
後を追って行った。
いまだに私は。
毛を逆立てて。
硬直していたら。
「何の騒ぎですか?」
不思議そうに。
総司が。
顔を出した。
「……これは?」
総司が屈んで。
近藤が落とした。
本を拾う。
「豊玉発句集?」
何それ?
ペラペラと。
本をめくる総司。
「梅の花 一輪咲いても 梅は梅」
………………。
無言で。
思わず。
見つめ合った。
総司と私。
総司は。
静かに。
本を閉じると。
懐に入れた。
………………え?
そして。
ニヤリと笑うと。
「山南さんにでも、見て貰いますかね」
と呟き。
去って行った。
………………。
今日は。
とても。
良い天気。
なのに。
局地的に。
雨が。
降る気がするのは。
なぜだろう……
それも。
この屯所で。
赤い。
雨が…… ね?
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