恋敵
数日前から。
毎日。
あの女が。
やって来る。
私に。
気づかれる事なく。
いつの間にか。
土方さんの。
部屋の中に居る。
なかなか。
出来る女。
そして今日も居る。
真っ直ぐ。
私を睨む。
なかなか。
度胸もあるわねっ
でも。
負けないっ
土方さんには。
絶対に。
近づけないんだから!!
私は。
姿勢を低くして。
間合いを計る。
低く唸り。
威嚇も忘れない。
生意気に。
あの女も。
戦闘態勢をとる。
私に。
挑むとは。
本当に。
なんて度胸。
これでも。
新撰組の猫。
隊士達との乱闘(猫じゃらし)で。
鍛えられてる私。
突然。
現れた。
女になんか。
負けないんだから!
力を溜め。
間合いを詰め。
一瞬で飛び出し。
私は女に。
躍りかかった!!
土方さんの。
部屋から。
出てけええぇっ!!
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「……えっとぉ」
見廻りの報告に来た藤堂。
土方の部屋の障子を開け、中の事態に対応を悩む。
暫し固まっていると、後ろから声を掛けられた。
「何してんだ? 平助」
「ふ、副長! や、報告に来たんだけど、あれ……」
指されるまま中を覗き、あぁと合点がいく土方。
「セイの奴、最近ああやって遊んでんだよ」
遊んでる?
藤堂には、戦っている様にしか見えず首を傾げるが。
土方が別に止めないのならば、大丈夫だろうと口をつぐむ。
真剣な様子のセイを眺め、土方がしみじみと呟いた。
「鏡が好きとは、やはり女なのかねぇ?」
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