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小説『虚空のバベル』10

作者:三澤賢司
最新エピソード掲載日:2026/10/12
財務省事務次官の神保は、白石崇の「高安全と高利益の両立」という構想に、金融工学の常識に反するとして疑念を示す。安全資産で運用すれば利回りはゼロに近づき、高い利回りを求めればリスクを負うからだ。白石は、既存の市場向け国債と新規の個人向け国債を統合した「国家公認の超大型ALMファンド」を提示し、否定ではなくALM(資産負債総合管理)の到達点だと反論する。
資産側の土台は、起債済み国債による確実なベース収益である。そこに、CD・CPの短期運用益、事業融資の金利スプレッド、信託報酬を重ねる。さらに、ブロックチェーンのT+0即時決済で中間コストをなくし、浮いた分を国民へ還元する。こうして元本は国家保証で守りつつ、還元利回りだけを高められるというのが白石の主張だ。
その実現には三つの条件がある。資産と負債のデュレーションとキャッシュフローの同期、多層的な収益源の融合、国家保証と市場流動性の融合である。神保は財政と金融の境界を消す発想に驚く。
翌日、日銀総裁の勝木は、金融政策への影響を問う。白石は、政策金利の変化が個人向け国債の還元率に自動反映され、むしろ政策効果を増幅すると答える。勝木はRTGSの優先接続枠を付与し、協定書に署名する。
稼働初日、資産側は国債30兆円、CD・CP20兆円、信託保全アセット10兆円の計60兆円となり、負債側の個人向け国債60兆円と釣り合う。ミスマッチは0%、安全性評価はAAAと表示される。白石は第一章からの歩みを振り返り、このバベルは崩れない要塞だと確信する。
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