星降る約束
夜の大阪、ネオンの光がアスファルトに反射していた。ハルカ(26歳、看護師)は病院の屋上で、末期疾患の少年ケイタと星空を見上げていた。「ハルカさん、星になって帰ってくるよ。約束だ。」ケイタの笑顔が、彼女の心に刻まれた。その数日後、ハルカは過労で倒れ、意識を失う。トラックが迫る音が、遠くで響いた。
ハルカが目を開けると、目の前には青い空と浮かぶ島々。彼女は異世界「ルミエラ」に転生していた。体は軽く、背中には小さな光の翼が生えている。村人たちは彼女を「星の使者」と呼び、夜空の星が消えつつある危機を救うよう懇願する。ハルカは戸惑うが、看護師としての使命感から、村の長老に導かれ「星の泉」を目指す。
泉への旅路は険しい。獣の咆哮、崩れる浮島、冷たい風。だが、ハルカの心を突き動かすのは、夜空を見上げるたびに聞こえる声だった。「ハルカさん、約束だよ。」ケイタの声だ。彼女は気づく。この世界の星は、誰かの魂が輝く場所。ケイタの魂も、どこかで光っているはず。
途中で出会った少年ルイは、星の泉を守る「最後の守護者」だ。彼は病弱で、目に見えない星の光を信じ続けている。ハルカはルイにケイタの面影を見出し、彼を支えながら旅を続ける。ルイは言う。「星が消えると、みんなの思い出も消えるんだ。僕、怖いよ。」ハルカは彼の手を握り、看護師の優しさで囁く。「大丈夫。私がそばにいる。」
星の泉にたどり着いたとき、泉はほとんど干上がっていた。空にはわずかな星しか残っていない。長老が告げる。「使者よ、泉に命を捧げれば、星は再び輝く。」ハルカは一瞬怯むが、ケイタの笑顔を思い出す。「星になって帰ってくるよ。」彼女は決意し、泉に手を浸す。体が光に溶け、記憶が泉に流れ込む。ハルカの人生—患者を励ました日々、ケイタとの約束—が星となり、空を埋め尽くす。
ルイの目から涙がこぼれる。「ハルカ、ありがとう。君の光、僕が見守るよ。」夜空は輝きを取り戻し、ルミエラの村に笑顔が戻る。だが、ハルカの意識は薄れていく。最後に、ケイタの声が響く。「ハルカさん、よくやったね。一緒に星になろう。」
ハルカが目覚めると、病院のベッドだった。奇跡的に意識を取り戻した彼女は、窓の外の星空を見上げる。そこには、いつもより明るい星が一つ。ケイタだ。ハルカは涙を流しながら微笑む。「約束、守ったよ。」彼女はベッドから起き上がり、看護師として新たな一歩を踏み出す。星空の下、東京の夜が優しく彼女を包んだ。
初の短編小説です。自己犠牲と愛の物語を主軸に書いてみました。