カクテミクス
お久しぶりです!異世界ヒーローが5月〜7月にかけてランキングに載っていたのを今日知りました!ありがとうございます!今日は新しく日曜朝に特撮ヒーローが始まったので、それに便乗して新作あげます!
「やっべぇー!遅刻だー!!!」
町中の建物がネオンの光を放つ夜の街。人々で賑わいそれでいてどこか妖艶な雰囲気を漂わせる街の中で僕は急いで自転車を走らせる。僕の名前は革照類樹。高校1年生。なんで高校生でしかもまだ1年生の俺がこんな夜の街で自転車を走らせてるかって?それは……そのうちわかる。
「すいません!遅れました!」
急いでドアを開けると、ドアに着いた鈴が勢いよく鳴り響く。
「こらこら、そんなに勢いよくドアを開けないの。お店の雰囲気崩れちゃうでしょ?」
「す、すいません!」
ドアを開けると、綺麗な黒髪をひとつに束ねシェイカーを振りお客様に提供するためのカクテルを作っているバーテンダーの女性が立っていた。
「10分遅刻ね、罰としてお店の掃除してて」
「っす……」
彼女の名前は柏乃純麗。ここ「ミクス」という名のバーを経営している。そう、ここはバー。本来は僕みたいな未成年は来ちゃ行けないが、訳あって今はここのお手伝いをしている。僕はいつも通り更衣室へと向かい、速やかに制服へと着替え店の掃除を始める。
「ねぇ〜、聞いてよマスタ〜!うちの彼氏浮気してたんだけど!なんか私の愛が重いとかなんとか言ってさ!まじありえなくない?!」
「それはまたお気の毒に……辛かったでしょう」
「うぅ……泣」
お酒を呑んで大きな声で愚痴るお客さんに対して純麗さんは一切動じることなく、優しく言葉をかけ、同時に柔らかくほほえんだ。
それを見たお客さんは机に突っ伏して泣き始めてしまった。バーに来る人は様々だ。さっきみたいに嫌なことを抱えている人、単純にお店の雰囲気やお酒が好きで嗜みに来ている人。ここに来る度、みんなそれぞれ抱えているものが違うんだなと実感する。
「類樹くん!もう掃除はいいからこっち手伝って!」
「はい!」
純麗さんからの指示を受け、掃除を切り上げカウンターへと向かう。
「じゃあ、今日はお客さんと話す練習してみよっか!」
「いきなりですか?!」
「お客さんと話すのもバーテンダーの仕事のひとつだよ?ほら!」
唐突な試練を半ば強制に強いられ、戸惑いながらもさっきのお客さんに声をかける。
「あ、あの〜……お客さん、今日はどうされましたか?」
「ん〜?」
さっきまで机に突っ伏して泣いていたお客さんが顔を上げる。
「ぐすっ……あれ?君、随分若いね」
「あ、いや…えっと〜、少々訳ありで」
「そうなの……?そんなことより聞いてよぉ」
お客さんは鼻水を啜り、話し始める。
「彼氏に浮気されて〜」
「……愛が重いって言われたんですよね?」
「えっ?」
「こら!」
「いてっ、」
お客さんにそう問うと純麗さんに頭をチョップされる。
「お客さんの話を遮らないの!」
「ぷッ……あはは!いいよいいよ、」
そんな光景を見たお客さんはさっきまでの涙が嘘みたいに明るく笑い出した。
「……ほんと、バカみたいだよね。私はこんなに真摯に向き合ってたのにその愛を拒絶されて挙句の果てにはバーでやけ酒なんて……」
氷が溶け始め、水滴が走るグラスの見つめながらお客さんは寂しそうにそう呟く。
「あんまり卑屈にならないでください。気持ち、分かります」
「えっ?」
「きっと寂しかったんですよね。愛し合ってるのはわかってる、けどどこか相手を完成には信じられていない自分がいる。いつか離れて行くんじゃないかなって不安になって…相手を思うあまりその誠実さや真剣さが裏目にでて拒絶されてしまう」
「そう……そうなの!別に束縛したいとかそんなんじゃなくて……ただ離れていくかもしれないって思うと怖くて……」
「きっと、お客さんの愛が重かったんじゃなくてそれほど相手を大切に思ってる気持ちが上手く届かなかった抱けですよ。今はゆっくり休んでまた新しい自分の愛を受け入れてくれる人を見つければいいと思いますよ。」
「君、私より若いのにすごいね……そうだね、いつまでも落ち込んでちゃダメだね!」
お客さんは涙を拭い、顔を上げた。
「よし!私、明日からまた頑張ろ!」
「はい、ですが、あんまり無理しないでくださいね。無理に頑張ると壊れちゃうので」
「うん、ありがとね!これお代お釣りはいらないから」
「よろしいのですか?」
「元気をもらったお礼。遠慮せず受け取って!」
お客さんは代金と少しのチップを置いて清々しい表情で店を後にした。
★☆★☆
「いやぁ〜、まさかあのバーにあんな若い子が居たなんてなぁ……」
まだ酔いが覚めないまま、私は近くの公園のベンチに腰掛ける。こんな真夜中の公園に人は1人もおらず、ただ私だけを照らす街灯を見上げながら彼との想い出に浸る。
「……ほんとばっかみたい……」
「そう……あの男が許せないよなぁ?」
「だ、誰?!」
私の独り言に返ってくるはずがない返事が聞こえ私は驚愕して周りを見渡す。
「お前は傷つけられた、傷つく必要がなかったのに。愚かな人間の手によって」
「誰?誰なの?!」
周りを見渡しても人影は見当たらないのに声は聞こえ続ける。
「復讐するんだ。あの男に俺が叶えてやる」
声が近くなると共に地面からおどろおどろしい液体のようなものが現れ、私の体に纏わり着いてくる。
「やめて!やめて!きゃーー!!!」
そこから私の意識は途切れた………。
★☆★☆
時刻は深夜2時を回った頃。人が完全に居なくなったバーのカウンターで僕はグラスを拭いていた。
「やるじゃん!」
すると、いきなり背中を叩かれ純麗さんに声をかけられる。
「それやめてください!グラス割れます!」
「ごめんごめん笑」
「接客よくできてたじゃん」
純麗さんは少し間を置いて会話を切り出す。
「そうですかね……?」
「うん!お客さんすっごく嬉しそうだったよ」
「それは……僕も少し感じました。なんだかお客さんと通じ会えた気がしてなんだか嬉しかったって言うか……」
グラスを拭きながら喋る僕の口元は少し緩んでいた。
「まだ……気にしてるの?彼女さんのこと……」
純麗さんからのその言葉を聞いた僕はグラスを拭く手を止める。
「……そう簡単には割り切れませんよ、僕にはそこまでの価値は無くて……」
「類樹君には……私が居るよ。」
僕の言葉を遮るように純麗さんは食い地味にそう言い、僕の頬に手を伸ばす。
「私だけは……類樹くんを愛してるあげる。どれだけあなたが惨めでも、愚かでも……」
「純麗……さん」
そう呟いた純麗さんは僕の頬に触れたまま顔を近づける。お互いの吐息が当たるところまで顔が近づいた時だった。
「きゃぁぁぁぁぁ!!」
店の外から悲鳴が聞こえた。
「純麗さん……今の」
「……タイミング悪」
純麗さんは不貞腐れたように僕の頬から手を離し、店の奥へと向かう。
「行くよ、類樹くん」
「純麗さん?行くって……何処に」
「悲鳴の方」
そう言うと純麗さんはバーの裏口を通って外へ出る。僕を後を追うようにして純麗さんの元へと向かう。
「これ、持ってて」
「えっ?」
純麗さんからアタッシュケースを渡され、呆然と立ち尽くしていると
「はい、これ」
純麗さんからバイクのヘルメットを投げ渡される。
「バ、バイク?!」
「いいから乗って、行くよ」
「え?あぁ、はい」
キスを邪魔された純麗さんは少々機嫌が悪い。僕は訳も分からないまま純麗さんの乗るバイクの後ろへと乗り、純麗さんに掴まる。
「……飛ばすよ」
純麗さんのその言葉を後にバイクは勢いよく走り出した。
★☆★☆
「な、なんなんだ!お前!」
「愚かな人間よ、貴様を消し、こいつの願いを叶える。」
「は、はぁ?!」
純麗さんの荒々しい運転で現場に遠着するとそこにはカクテルのグラスのようなものが背中から生えた変な生き物みたいなのが男性を襲っていた。
「類樹くん、アタッシュケースを開けて中にあるベルトを装着して」
「えっ?!」
純麗さんは僕に指示を投げると、懐から銃を取り出す。
【カクテルイン!】
【グレープシュート!】
銃が陽気に喋りだし、紫色のエネルギー弾を放ち、さっきの生物を攻撃する。
「……なんだ?」
攻撃を受けた生物の興味は男性から一気にこちらへと向く。
僕は慌てて言われた通りアタッシュケースを開け中にあるベルトを取り出し、装着する。
「こ、こうか?」
【シェイカードライバー!】
今度はベルトが喋る。
「う、うわぁ!」
「類樹くん!これを……」
純麗さんは銃に入れていた変な瓶みたいなやつともう一本それと同じものを僕に投げる。
「ちょ、ちょ!割れますって!」
なんとか瓶を受け取る。
「開けてドライバーに入れて!」
「はぁ?!」
「貴様ら、ふざけているのか!」
痺れを切らした怪物が腕を触手のように伸ばして僕へと攻撃を仕掛けくる。
「あっぶねぇ!」
なんとか攻撃を交わし、言われた通り瓶を開けて中の液体をドライバーに流し込む。
「画面のタッチ!」
「え?え?こう」
【スタート!】
画面をタッチするとまたベルトが喋り、巨大で透明なシェイカーのようなものが僕の体を包み込み、上からは紫色の液体が、下からは緑色の液体が湧き上がりベルトの中で混ざり合うと同時に混ざり合い僕の身体ヲタ包み込む。
【シェイキングヒーロー!】
ベルトの音声と共に僕の身体を包み込んでいた液体は僕の姿を変え、大きなシェイカーも液体が無くなると同時に砕け散った。
【カクテミクス!クラレット!】
ベルトの音声と共に僕の新たな姿が露になる。
「なんだこれ……姿が変わって……」
「貴様、何者だ!」
「それは!それは……」
怪物からの問に戸惑い、純麗さんの方に視線を送ると
「カクテミクス!」
と名前を教えてくれた。
「カクテミクス!それが俺の名前……らしいぜ」
「ふざけよって!」
怪物はさっきのように腕を伸ばして攻撃してくる。
「あぶね!」
僕は咄嗟に跳ね上がり、攻撃を回避する。すると僕の後ろにあった建物に攻撃が直撃し、建物が崩壊する。
「ちょっと!何やってるの!かわしちゃダメ!」
「はぁ?!」
「喰らえ!」
とんでもない無茶ぶりに驚き、飛んできた攻撃に気付かすが、攻撃をもろに喰らって吹き飛ばされる。
「ぐはぁ!」
「いってて、無茶でしょ!攻撃をかわさないなんて!」
「回避しちゃだめってだけで受け止めればいいじゃない」
「はぁ?!うおっ!」
また来る触手を咄嗟に左腕で受け止める。
「っ……!あれ?すごい!受け止めれた」
「なに?!」
「よし!」
僕は受け止めた触手を掴み振り回す。
「おりゃー!」
「アァ、そんなに激しくしたら!」
勢いよく怪物を振り回していると、足を滑らせ怪物を近くのビルに投げつけてしまう。
「あぁ!やっちゃった!」
「あの怪人は人を取り込んでるの!あまり乱暴しないで!」
「それもっと早く言ってよ!」
「貴様ら……さっきからふざけよって!もう許さんぞ!」
投げ飛ばされ、崩壊した建物の瓦礫の中から怪物が現れ今度は触手を同時に何本も飛ばしてくる。
「まずい!」
かわす事が出来ず、今度は数本の触手を同時にくらい、吹き飛ばされる。
「これじゃ拉致が開かない!」
「触手を斬って!」
「斬るったってどうやって……」
【ブレイカムズミキサー!】
そんな僕の手元に剣が現れる。
「うわぁ!剣出た!……というか名前危なくない?」
「いいから、触手を斬って!」
「はいはい」
そして僕は再び飛んでくる数本の触手を斬り刻む。
「ぐぁっ!」
触手を切り落とされた怪物は悲痛な声を上げる。
突如現れた剣は僕が怪物の触手を切り刻む度、紫色の閃光を放つ。やがて全ての触手を斬り裂いた僕は勢いよく怪物に斬りかかる。怪物を何度も切り裂くこの剣は相手に攻撃を当てる度に放たれる閃光がこの街のネオンのように宙を舞い、線を描く。
「はぁ!」
最後の斬撃で怪物は勢いよく、吹き飛ばされ転がり込む。
「それで、どうしたら取り込まれた人を助けられる?」
「もう一度、画面をタッチして」
「こうか」
【ファイナルミキシング!】
ベルトの音声が流れると、紫と緑のエネルギーが左足に集約し、混ざり合う。
「こんなところで終われるかぁ!」
「いや……ここで終わりだ!」
僕は力強く飛び上がり、キックをして左足に集約されたエネルギーを怪物に放つ。
「はぁぁぁぁ!!」
エネルギーに貫かれた怪物は
「うわぁぁぁぁ!!」
と断末魔をあげて粒子となって消え去った。
消え去った怪物の中から出てきたのはさっきバーで話を聞いたお客さんだった。
「あの人、さっきの!」
「後は警察の仕事ね、帰りましょ」
「え?は、はい」
「あ、その前に変身解除して」
「えっと……」
「ベルト、取って」
言われた通りドライバーを腰から外すと、僕の体を覆っていた紫と緑の液体は果汁のように溶け合って消滅した。その後、警察を呼んだ僕と純麗さんはバイクに乗り、現場を後にし、バーへと戻った。
☆★☆★
バーに戻った頃にはもう時刻は午前5時を回っていた。
「疲れたー!」
帰ってきた僕はカウンター席へとぐったりと座り込む。
「お疲れ様」
純麗さんは僕に労いの言葉をかけ、隣に座る。
「じゃあ、頑張ってご褒美も込めてさっきの続きを……ね♡」
純麗さんは今度は顎クイをしてそっとキスをした。
「んっ...///」
その後は容赦なく舌を入れられ、とても濃厚な時間を味わった__。
ちなみに主人公の名前の由来は見てわかる通り「カクテル」ですが、柏乃純麗さんは「カシスオレンジ」から文字ってます。後、日曜朝に新たに始まった特撮ヒーローの武器の名前のギリギリを狙って「ブレイカムズミキサー」という名前にしました。銃の方は「マグナムズミキサー」です