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第7話:マスターの実力を低く見ていました……「名誉のない二つ名(あだ名)つけられた……」

ア「おい!最近、作者の投稿が遅くなっていないか?前の投稿から1カ月以上もあるぞ!」

リ「このままだともしかしたらこれが終わるってなるかのう……」

ア「おい!それだけは絶対に許さないからな!」

い、いやぁ……色々とありましてね……

ア「なんか作者が一番、働いていない気がするぞ……」

本当に色々とあったんだけどね……

急に馬車の目の前にできたひび割れた空間から突き出した胴体が埋まっている九つの龍の首。

この伝説の生物みたいなの見たことあるな……

「これって――」

「”アーゼリガルブ”ですね」

私が言う前に、リゼリアに先を越されてしまった……

「神滅流に棲む神化魔獣です。おそらく……毎年一度以上起きている“世界侵入”の現場に、私たちは遭遇してしまったのでしょう」

こいつみたいなのが世界に来てしまったら強い奴がいない限り、簡単に世界が滅ばないか?


なるほど……つまりは――

これは私が活躍できるイベント……!?

「いよッッッしゃァァァァァァァァッ!待ってましたァァァァ!イベントォォォ!」

私はすでに脳内で、アーゼリガルブを倒して御者のおじさんに感謝され、冒険者ギルドでちやほやされる未来を妄想してテンション爆上がりだった。


しかし、私はアーゼリガルブが喉を膨らませ始めていることに全然気づいていなかった。

それに気づいたリゼリアは「……まずい」と顔が険しくなる。

リゼリアは即座に空・大地・海・生物すべてを覆う多重結界を展開し、自分の耳を塞いだ。

次の瞬間――

「グォォォォォォォォ――!!」

天地を裂くような咆哮が轟く。

リゼリアのおかげで世界は守られ、この地に生きる生物も無事だった。


――ただ、一人を除いて。

「いったァァァァァッ! 鼓膜がァァァァァァァァァッ!」

……そう、この私であった……


さっきまで「イベントだ!」と大喜びしていたせいで、全く注意を払っていなかった。

「マスター、何しているんですか?切り替えてください。 神化魔獣の雄叫びが、世界を吹き飛ばすほどの威力を持つのは分かっていますね?普通は耳を塞ぐものです」

完全に!油断していた!

――こうして、今日二度目の悶絶。

私の頭の中ではまださっきまでの妄想にあっている勇ましいBGMが流れるが、現実は油断して戦闘不能という悲しい光景であった……


「何馬鹿なことをしているんですか……」

思わずため息がこぼれる。

……これは、ため息も出ますよ。

あのマスターが油断して耳を押さえ忘れ、まともに咆哮を受けて悶絶――ですか。

昔のマスターなら、相手が何かをする前に一撃で跡形もなく木っ端みじんにしていたというのに……今はこのありさま。

何とも言えない気持ちになってきますね。

――ですが、今はそんな感傷に浸っている場合ではありません。

このアーゼリガルブをどうにかしなければ。

幸い、まだ胴体がひび割れた空間に挟まって抜け出せずにいるようです。

暴れられない今が、唯一の好機ですね。


それならこの好機の時に

「やってみたいことがありますね……」

昔、私がマスターに作られてから8年たった頃――



*******



神化魔獣が現れたとき、マスターは私に

「見てなさい」

そして倒すのだが、その倒し方がどうにもおかしいとしか言いようのない方法だった。

あのとき、マスターは重力系の妨害魔法を発動した。敵の動きを封じるために――発動したのではなかった。


次の瞬間、神化魔獣は普通につぶれる音ではなく、

 ゴリュッボゲッグリャァッ!

という、聞いたこともない音を立ててつぶれていった。

この光景を目にしたその当時の私の反応は――

「す、すごいです!」

目をキラキラさせながらそう言った。

……最初にこの反応をした地点で私もおかしいだろうと思うが、とにかくそのすごさに圧倒されていた。

さらにマスターは、

「フフ~ン! どうよ~」

とご機嫌であったことも知っている。


*******



今、私は自身がどれほど強くなったかを確かめたくて、

あの時のマスターの魔法――重力系妨害魔法――でアーゼリガルブを倒すことをしてみたい。

バリアを張っているから大丈夫だろうが……一応、この場から御者のおじさんを離す――必要はなかった。

近くの木の陰に身を潜めておびえていた。

逃げ足が速い人ですね……思うところはありますが今は好都合。


私はアーゼリガルブに面を向け、手を前に差し出す。

その下に大きな魔法陣が展開され――

静かに、しかし確実に力を込める。

「――《グラビティ・ノクターナ》」

その瞬間、アーゼリガルブの九つの首が同時に地面へと叩き伏せられた。

神化魔獣をここまで容易く拘束できるようになるとは……少しは強くなったのかもしれませんね。

そう思ったのも束の間、アーゼリガルブの体から「メシ……メシ……」と嫌な音が響きはじめる。

次の瞬間――描写にモザイクが必要な光景が広がった。

九つの頭から首まで、すべてが私の魔法によって発生した重力に押し潰されていく。

血が飛び散ることもなく、重力に従うように静かに地面へと流れ落ちていった。



アーゼリガルブを倒したあと、リゼリアは御者のおじさんに感謝され、そのままノイエ・ヴァレッタ王国へ向かっていた。

リゼリアは妨害魔法で神化魔獣を倒した達成感に満たされ、あの頃、私が見せた芸当と同じことをできるようになった自分に感動していた。

そんなリゼリアの“暖かい空間”のすぐ隣――

体育座りで落ち込んでいる私の“寒い空間”もあった。

ようやくそれに気づいたリゼリアが、最初にかけた言葉は――

「あなたの配下が達成感に満たされている時に、何を落ち込んでいるんですか? こういう時は普通、配下を褒めるはずですが?」

「それが落ち込んでる主に対して最初にかける言葉か!?」

これはひどい……


落ち込んでる主に対して、最初にかける言葉として終わってやがる……

涙目になりながら私は言う。

「せっかく久しぶりのイベントだったのに! それをちょっとの油断で逃したんだ! 落ち込むでしょ!」

「それは油断したあなたが悪いでしょう」

「ぐはァッ!」

それ、事実でも言ってはいけないやつじゃない!?

主の精神ゲージ、さらに削りやがったな!?

言い返そうとしても事実だから言い返せない!


「それよりもですね……」

こいつ、主の精神ゲージを削っておきながら平然と話変えてきやがったぞ!?

「ようやく妨害魔法で神化魔獣を倒せるようになりましたよ! 何か言うことがあるんじゃないですかね?」

……おい、まさか褒めてくれってことじゃないだろうな?

人の精神ゲージ削っといて、自分は褒めてもらおうって魂胆じゃないだろうな!?



少しの間、なんとも言えない沈黙が二人の間に流れた。

「まさかだけど……褒めてもらおうとしてないよね……?」

思わず、イラッとした勢いで問い詰めてしまった。

「そうですが?」

……はい?

「いやいや!主を慰めるどころか精神をガッツリ削っておきながら、それはないでしょ!?しかも普通の顔して答えてくるのがまた腹立つ!」

「さっきは事実しか言っていませんが?」

いや……だーかーらァ!!

「それが一番心に来るって知ってて言ったでしょ!主が凹んでたら従者は慰めるのが常識でしょ!」

「なんと面倒な主でしょうか。部屋にこもり過ぎて子供の知能に退化してしまいましたか?」

「リゼリア……君、本当に従者か……」

――この短いやりとりで、私は七年分のエネルギーと精神を持っていかれた……。



七年分のエネルギーと精神を消費した私は、ふと昔のリゼリアを思い出していた。


夜遅くまで魔導書を何度も読み返して、目の下にクマを作っていた姿。

新しい魔法を使うたびに上手くいかず、自分なりに原因を調べていた姿。

より強力な威力を求めて魔法の改造を施しすぎた結果――私の家を燃やしたこと……

あの時の私は燃えている家を前に「私の家がァァァァァーーッ!」と大声で魂の叫びをした。


そう考えると、ここまで成長したのは確かに称賛に値することかもしれない。

「確かに、あの頃から今もずっと魔法を研究してたからね。リゼリア、その努力が結果として出てるのを見ると成長を感じるよ。……よく頑張りました、リゼリア」

――余計なことは考えてはいけない。

私が神化魔獣を妨害魔法で潰してみせてからリゼリアが同じことをできるようになるまでに、百何もの文明が滅んでいる年月が経っているという事実は……忘れよう。


「マスター……」

「ん?」

「……あのマスターが、私を褒めた……?なんか……気持ち悪さが……」

「おい!なんだその反応は!褒めてやってその反応はなんだ!」

「マスターは褒める存在ではなく、見下してくる存在ですので……少し気味が悪いといいますか」

……私をなんだと思ってやがる!このメイド!



今、私は幸福感が満杯になっており、そろそろあふれ出しそうなほど幸せだった。

これで、魔法のレベルがマスターにようやく追いついた――そう思うとうれしくてたまらない。

その隣で、マスターがジーーィーーーっとジト目でこちらを見ている。

「なんですか、マスター? そんなに熱烈に私のことを見て」

「熱烈に見ているわけじゃないぞ、リゼリアくん」

「それじゃあ、なぜ見つめてくれるんですか」

「そこまで幸せそうな顔、長い間見たことないんだけど……」

「そりゃあ、ようやく魔法のレベルがマスターに追いついたと思うとうれしいもので……」

そう言うと、マスターは少し顔をしかめて、静かに口を開いた。

「えっと……リゼリア……とてつもなく言いづらいけど……」



王国に着いた私とマスターは、まずギルドへ向かった。

馬車の御者のおじさんの報告によって、私たちはグレーランクから強制的にグリーンランクへと昇格した。

そのうえ――ギルドの人々や他の冒険者の間で、私が“謎の九つの首を持つドラゴン”を倒したという話が広まり、ここの王国で少し名が知られてしまった。


そんな感じの噂がすぐに流れ始めた瞬間、マスターは――

自身の顔と私の顔との距離をわずか五ミリほどまで縮め、目を気持ち悪いほど見開いてこう言った。

「私がちやほやされるはずだったのになぜぇ……君がちやほやされる対象になっているぅぅ!?」

……本来なら油断していなければマスターが活躍できた場。

だが、あの御者のおじさんがギルドでこう報告してしまったのだ。

「あぁ、この人は竜が咆哮したときに、そこまで大きな咆哮でもなかったのに耳をふさいで転げ回ってた、”ただ何もできなかった冒険者”だよ」

――結果、マスターには『ただ何もできなかった冒険者』という名誉のない二つ名(あだ名)が付けられた。


今、マスターは城下町の誰か知らない家の片隅でこうつぶやいている。

「あのじじぃ……呪う呪う呪う呪う呪う……」

……うん?

なぜ私がさっきから道の真ん中で何もしゃべらないかって?

それは――

私は今、放心中だからだ。



***王国に到着する25分前***



「えっと……リゼリア……とてつもなく言いづらいけど……」

“とてつもなく言いづらい”?

「私があの時に見せた魔法――あれ、何階級・・・の魔法だと思う?」

……えっ? 何階級・・・って……?

「け、結構……高い階級に見えましたが……」

その瞬間、私は多分、まさか……と分かっていただろうが脳――いや、コンピューターはわざと答えを出さなかったと思う。

「……わかりません」

「――あの時に使った魔法は、初級・・なんだよ」

……。

……はい?

マスターはためらいもなく、ズバッと言い放った。


「な、何を言ってるんですか?」

分かってる。マスターは普通に考えたら――

「あの時のマスターの魔法、重力が強すぎて……魔法の発動範囲が真っ黒になってましたよ!? 階級は、相当高くなければ無理じゃないですか!?」

「うん……絶望させたいわけじゃないけど……私は初級であれ位は出せる……」

……。

マスターが別格すぎて、もはや階級の意味が消え去っていることを――

「ま、まぁ!リゼリアも頑張って威力とか高めれば出来るから……ね……」

私はあの時、改めて身をもって理解した……



*******



その時から現在まで、私はずっと放心状態だった。

周りの人が何を話して、何をしていたのか――まったく分からなかった。

マスターが顔を五ミリまで近づけてきたことにも気づかず、

私は城下町の道路のど真ん中でただぼうっと立ち尽くし、

マスターは、誰か知らない家の片隅で

「呪う呪う呪う呪う呪う……」と延々とつぶやいているという、

完全に絵面がやばい状態だった。

城下町の人々は、冷たい目で見ていたという。(特にマスターを)


その日は夜になるまで、ずっとそんな調子で――

ついにはその家の人が騎士団に通報した。

「なんか、“呪う”とずっとつぶやいてる女性が家から離れません!」

事情聴取されたマスターは……

「おい、こいつ”何もできなかった冒険者”じゃねぇか!

何も出来ないからって、呪い魔法に走るのはやめろよ!?せめてまともなスキルでも見つけろ!」

と不名誉な二つ名(あだ名)で騎士団に説教を受けた。

怒りが爆発しそうになりながらもギリギリ抑え、

マスターは放心状態の私を回収して宿に戻ったらしい。



ちなみに――

その「二つ名(あだ名)」の元凶となった御者のおじさんは、

その日の夜、酒場で飲みすぎて酔っ払い、

友人と見えないところで爆竹を鳴らした結果、

銃声と勘違いされて通報され、営業妨害で罰金を払ったらしい……

なんか投稿が1カ月以上も離れてしまいました!

って言っているともうそろそろ私も違うイベントが入ってくるという物語がなかなか描けなくなっていってる……誰かどうにかしてくれ!世の中面倒な事が多いです……

皆様……今日も明日も頑張って生きて行きましょう……


次回は「悪魔の召喚とはこんなばかばかしいものでしたっけ……?」

お楽しみに!

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