表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/5

第4話:マスター、やり過ぎです…

北の森で早速やらかしているアレイアが今回、ようやくボスと衝突です!

はたしてアレイアは今回の戦いで本気を出すか……?

アレイアはノイエ・ヴァレッタ王国の運命を握っていることを忘れて戦います……

……おや、これはお客様のお出ましらしいです。

これは、さっきまでの兵とは比べものにならない。工房の奥から、低く濁った鳴き声が響いてきました。

「……来ますね」

見えたのは、生物のいい所だけで構築された無数のキメラ兵。脚は猛禽類の脚力、腕は巨人の筋肉構造、眼球は夜目対応の蛇の視力……完全に戦闘に特化した、量産型のキメラ。

さっき開発した新しい魔法は全部試したので――

「――素手でいいですね」

これぐらいのものは簡単に素手で倒せます。昔のままだったら簡単に素手でも倒せることなんてなかったでしょうね。あれは確か私が作られて13年たった頃のこと――


***約47澗年前***


「またサボってましたね、リゼリア」

「……だって、情報詰め込みすぎなんです。世界の全歴史とか覚えて何になるんです……」

「だからって、ベッドの下で寝てるのはどうかと」

昔のマスター――アレイア様は、今とは違って真面目で少し厳しく、でもとても優しい人でした。

私はあの人が“自分を助けるサポーターが欲しい”という理由で生み出された存在。

強くも、賢くも……できたはずなのに、「感情がある普通の性能」で作られた私。

マスターがなぜ私を「普通の性能」で作ったかその時は知らなかった。


「模擬戦やるわよ。私は丸腰。あなたは自身の力を全力で」

「ッ!?マスターは丸腰ですか!?」

「安心して。すぐ終わるから」

……その通りでした。私は派手な魔導兵器をいくつも使いましたが、結果は――圧敗。アレイア様は、ただの拳と足さばきだけで、私をボコボコにしたのです。


悔しくて、泣きながら聞きました。

「どうして……もっと強く作ってくれなかったんですか? こんなに頑張らなくても済むのに……」

マスターは私の頭を撫でてやわらかく微笑みながら言いました。

「どんな天才だって、努力しなければ“普通の人の努力”に負けるのよ。努力しなければ、才能も、力も、知性も……全部、落ちていく。だから、あなたには……努力して、その先にある“感動”を知ってほしかったの。面倒くさがりでも、これは大事な事だから覚えておいてね」

その時の私には、意味がわからなかった。でも今は――ほんの少しだけ、わかる気がします。


*******


昔のマスターは素晴らしかったです。

今はもう、あの頃の面影もないですが……マスターのおかげでこうしていられることには感謝ですね。

そしてなぜ私は今こんなことを回想しているのでしょうか……?

「まあ、いいでしょう。今とは違うマスターとのいいい思い出です。そして――」

リゼリアはゆっくりと一歩を踏み出した。

「さっさと終わらせてしまいましょうか」



「「「「ゴウラあッ!待てや!」」」」

あーーーもう、うるさいっ!

いろんな扉を開けてたらいつの間にかこんなに多くなってしまった……

そっちの通路はさっきスライディングしたときにワイヤートラップとかの罠が作動しまくっていた。

私ではなく敵に……

ってか、どんだけ人いるのこの工房!?


あ、これ完全に――

「おお!ボス部屋っぽい大きな扉が見えるけど──逃げ場ないじゃん……」

両側からズラッと現れる黒装束たち。

君たち多すぎ!


面倒だけど仕方ない……

「邪魔だァッ!」

軽くデコピン。

風圧だけで十数人が吹き飛んでいった。

ドゴオォンッ!

壁にめり込む人もいれば、一人は完全に天井を突き抜ける人もいた。

ここにいるほとんどをこのデコピンの風圧だけで気絶させた。


そこへ、妙に筋肉が主張した鎧の男が登場。

「ほう……お前が例の侵入者か。名を名乗れ」

「名前?アレイアっていう名前だよ」

「当然のこと誰か知らんが――この“鉄狼の牙”ゼルグ=クルマイン様が、ぶっ倒――」

──チュドーンッ!

「あ~れ~ 」

拳を軽く前に出しただけで、彼は空のかなたへと消えていった。

我ながらかわいそうな事をした。

これでここにいる全員を気絶させたらしい。

さ、でっかい扉。きっとボスはここだよね?

さあ、いざ!



「ボス部屋――っぽい」扉を開けた先はどうやら違かったらしい……

ここはーー

「――え、倉庫?」

ボス戦を考えていたから残念だ……


でも倉庫にあるアイテム、どれもこの世界じゃまず見かけない。

魔力の密度、加工精度、どれを取っても超高品質。

ちょうどいいね~ゲームの課金アイテム“鬼目”を手に入れるためにレア鉱石がないか掘っていたし。

出た場所は敵の食堂でめっちゃ追いかけられたのは最悪だったけど……結果オーライ!

「うん、これは……換金案件♪」

私はここにあるすべてのレアアイテムを収納魔法で収納!

普通に盗みだけどまあ、悪い人たちの物だからいいか!


倉庫を後にして、次の扉へ。

今度は普通のサイズの鉄扉だったけど、開いた先は――

「普通は大きい扉でしょ……」

そこは広々とした研究室のような部屋。

床には無数の計算式が書かれた紙が散乱し、机には液体の詰まった瓶や、異形のパーツらしきサンプルが並んでいた。

そして――

部屋の奥、大型のカプセルの前に、ひとりの男が立っていた。

その男の後ろに浮かぶのは、明らかに合成生物、いわゆるキメラ。

「あー……あれだな。あれがこの工房のボスで、あのカプセルがやばそうなキメラか」



全身を覆う黒銀のマント。それに――例の《ノクターン・ファクトリ》の紋章が金色に書かれている。

これは間違いなくボスで合っている!


「こんにちは~。お邪魔してまーす」

私はごく自然に声をかける。

「…ッ!? 貴様、誰だ!? どうやってここに入ってきた!?」

あ、驚いてる。

当然だよな~

自分の拠点に知らないやつが普通に話しかけたら怖いよね~

「えっと、地面から掘ってきた」

「なんだと!? 地下50メートルはあるんだぞ!?」

「レア鉱石がないかって掘っていたら先に目的地に着いちゃったんだよね~」

「馬鹿なことあるかァ!まさか……さきほど工房に侵入した“メイド”の仲間か?」

リゼリアのことだね。それしかありえない。

「そうそう。うちのメイドは優秀だよ?」

男はため息をついてすぐに冷静になった。

「……私は【ヴァシリウス・グレイオル】。かつて名門貴族の血を引いた者にして、この《ノクターン・ファクトリ》を統べる者だ」

うわ、すごく堂々とした自己紹介。

「じゃあ私は、アレイア。よろしく~」

「アレイアか……しかし、私はすぐに忘れる人でね……」

男は一拍遅れてまた、ため息。

「ここまで辿り着いたことは褒めてやろう。だが――」

バシュンッ

ヴァシリウスが横のレバーを引いた。その瞬間、カプセルの中のキメラが――目を開けた。

「ここで貴様らには、死んでもらう!」

ガラスが砕け、キメラが姿を現す。

――うわ、でか。

軽く10メートル以上。天井スレスレまで伸びたその体躯は、ドラゴンをベースに異形の要素を無理矢理パッチワークしたみたいなモンスターだった。背中には蝙蝠の翼、腕は狼、尾は蠍。しかも頭は……なんだあれ、ライオン?虎? いや、たぶん混ざってる。

「どうだ?これが我が究極の合成獣ラグナ・キメラ!君はこれをどうにかできるかい?」

こういうの、だいたい一撃で沈むよね~

だけど、能力とか気になるな……

上級魔法使い程度で戦って能力を見て見ようか。



この娘……なんだ。

少しの間、戦ってこいつが只者じゃないとわかった。

キメラ・アーセナルが咆哮と共に拳を振り上げた。十メートルを超える巨体から繰り出される、質量と魔力の暴力。

だが――

「っと」

娘はまるで、風をなでるかのような動きでそれを避けた。重い空気を裂く拳の余波で部屋の壁がひび割れるが、彼女は軽々とした動きでかわす。


《エレメンタル・シージライン》、発動。

床に埋め込まれた六属性の封呪陣が同時起動し、空間に罠が走る。突如、空間に火炎・氷結・雷撃が発動する。

「おおっと!」

……ッ!?

娘はまたも、軽々と罠の隙間をくぐって、詠唱なしの魔法を構築する。

「単属性・強化スロット使用、火属性でいこうかな~」

軽口と共に飛び出したのは、鮮赤に輝く球状魔力。着弾と同時にキメラの左肩が爆ぜ、肉片が飛び散る。


しかし――傷口はすぐに塞がった。

俺のキメラは超再生を持つ。

この程度の傷すぐに治る。

咆哮一閃。強化ブレス、発射。

俺が同調魔術で組み込んだ《スペル・カスケード:ネクサス》によって、炎と毒の複合属性へと変化した灼熱の奔流が娘を襲う。

「おっとっと。危ないなぁもう」

なのに、またも無傷。あろうことか彼女は再び、さっきと同じ火属性の魔法を発射してきた。

キメラの胴体に再び深い裂傷。


しかし、

「――アダプト開始。対象属性への適応、完了」

キメラの体表が、赤黒く変色してゆく。肉が固まり、炎を弾く。

「なんか強化されたと思うけど……もう1発!」

三発目。だが、傷は浅くなり、すぐに閉じた。威力が落ちている。

ここで、俺は笑った。

「無駄だよ。《アブソーブ・アダプト》――我がキメラ・アーセナルに組み込まれた特殊適応核。

同じ属性を三度以上受けることで、体組織そのものがそのエネルギーに耐性を獲得するんだ。つまり――同じ属性の魔法は通用しなくなる」

俺の言葉に、娘は目を見開き――そして、叫んだ。

「えーっ!?強すぎない!?どうしようかな~」

……こいつ、真剣に戦ってるのか?

なのにどうして、口ぶりがまるで軽い。

なぜこの状況で余裕があるのかとても不気味だった。



この娘は火に続いて、今度は氷。そして雷。彼女は三つの単属性魔法を順に放ち、キメラ・アーセナルへと攻撃を加えてきた。いずれも初撃は効果を発揮したが──

「ふぅん。やっぱ最初は効くんだね。最初の1発目で倒さなければだめか……」

その言葉には悲壮感など一切ない。むしろ、余裕すら滲んでいた。

魔法の威力が、目に見えて落ちていく。三度目には、炎も氷も、キメラの皮膚に掠り傷すら与えなくなっていた。

だがおかしいな……この娘、さっきから動揺が見られない。

「言ったはずだ。《アブソーブ・アダプト》によって同一属性には耐性がつく。何度撃っても無駄だ」

牽制のように言葉を投げる。だが、娘は反応すらしない。ただ軽やかにキメラのブレスを避け、再び別の魔法を構築し始めている。

 

今だな──

俺は指を鳴らす。《スペル・カスケード:ネクサス》の魔法陣が、足元で展開された。キメラ・アーセナルの口元が、光に満ちる。今度のブレスは、炎と毒の複合属性。それだけではない。《ネクサス》の連鎖増幅で、その威力は過去最大。逃げられるわけがない。

ドォゴーン!

ブレス攻撃は破滅の奔流となりアレイアを呑み込んだ。

「……終わりだな」


砂煙の奥で、何も動かない。キメラ・アーセナルは低く唸りをあげ、余熱の名残で大気が歪んでいる。

今回の戦闘で十分な戦闘データも取れた。王国の連中など、このキメラを出せば一瞬で制――


「《ライトニング・クロス・インパクト》」

バチィンッ!!

砂煙の中から突如、光の光線が閃いた。反射的に俺は結界を展開して無事だった。

爆風の中、キメラ・アーセナルの右腕が吹き飛ぶ。

……なんだと!?

俺は思わず顔をしかめるが、すぐにキメラは再生を始めた。

……奴は、生きていた。


砂を裂いて現れたアレイアは、ボロボロだった。服は焼け焦げ、髪は乱れている。しかし、そこに血も、傷も、骨折すら見られなかった。

「……なん……でだ……? あのブレスを……直撃で……?」

思わず、漏れ出る俺の声。理解できない。ブレスを受けてなお、無傷に等しいとは。

「ねぇ、それぐらいで“最強”だと思ってる?それってどうかと思うよ〜?」

にやりと、唇の端をつり上げて言う彼女のその顔は、この後戦闘は簡単に終わる雰囲気を出していた。

「強がるな。お前の魔法はもう通じない。こいつは、倒せん!」

「へぇ。ほんとにそう思ってるなら、けっこう馬鹿だよ?」

と同時に背筋が凍るような嫌な寒気が走った。



――これは、冗談になりません。

私は工房の外で、量産型キメラを素手で片付け、気絶した魔術師たちの見張りをしていました。

いつものように、退屈で、くだらない時間。けれど、その瞬間――

「……っ!」

空気が震えた。

まるで“この現実”そのものが軋んでいるような、そんな異様な感覚。

――これは、ただの魔力じゃない。

「……また、やらかしましたか、マスター」

即座に断定できたのは、それが“∞属性”の気配だったから。

マスターの力。それも、この世の中すべてが壊れる領域――。

そう。工房どころではない。この惑星でも、宇宙でも足りません。

世の中すべてが壊れますよこれ……

私は即座に動いた。

「……はしゃぎ過ぎです!あの脳筋バカには普通かもしれませんが!」

毒を含んだような声音で呟きながら、防御に移る。

工房全域に結界を展開。

六属性すべてに対する軽減結界と、魔法耐性の結界を二重三重に。

さらに、工房内にいる者すべて――味方も、気絶中の敵も――個別に対応した防御バフを同時に付与。

これで私の全力ですがこれでも被害は大きそうです……

「これでまた空間が裂けたら、今度こそ私、説教で済ませませんからね……?」

無表情のまま、冷や汗をこっそりと拭う。

アレイア様……あとで覚えておいてください……



……なんだ、この圧……!

この娘から急激に、とてつもない力の波動を感じた。背筋を氷のような寒気が駆け抜け、恐怖を感じる。

即座にキメラ・アーセナルに攻撃を指示しようと声を上げようとした。

「《パルミナス・ストラケイン》」

「――動けないっ……!?」

キメラ・アーセナルも、そして俺も。

雷の痺れが全身を走り、関節が凍りついたように動かない。……麻痺、だと!?

つまりこの魔法は雷属性のはずだ!さっき適応化されたはずでは!?

《アブソーブ・アダプト》。受けた属性魔法を適応化していくキメラの最強能力。

それなのに――効いている。しかも状態異常まで。


その疑問に、恐怖が追いつく前に――彼女は、静かに動いた。

彼女が両手がゆっくりと胸の前で添えられた。

するとその間に、ぽっ、と虹色に輝く火の球が生まれた。

その存在を認識した瞬間、全身の毛が逆立った。

視線を逸らせば焼かれそうな熱量。だが、色彩は優美で、まるで神域の祝福のような幻想。

キメラ・アーセナルでさえ、その火を見た瞬間、後ずさっていた。

それは意思を持たぬはずの兵器にすら感情を与えるほどの“圧倒的な力と恐怖”。

そして、彼女は口を開いた。

「広がれ――《アケロン・ソルエグゼリオン》」

その名と共に、両手の火球が爆ぜ、虹色の光が森一帯を覆った。

最後まで読んでくださってありがとうございます!

キメラ・アーセナルをどうやって倒すか気になった方、知的に倒すって思っていた人がいるでしょう!

すみませんでした…知的ではありません…

知的なところはいずれか他のところで出します…


次回は第5話「マスターが冒険者登録って大丈夫でしょうか……不安しかありません……」

お楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ