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第3話:世の中様はメイドさんを巻き込みまくっている!

今回はリゼリアさんがアレイアさんに振り回されます。

今回の大事な時でもアレイアさんはいつもどうりやらかします!

そして、裏社会の黒い計画、その奥に潜む《ノクターン・ファクトリ》とは……?

――北の森って、虫多くない?

あ〜もう、ちょっと歩いただけで葉っぱ絡んでくるし、リゼリアは真面目に地図とか見てるし……

リゼリアさんが話してくれないからすごく静かなんだけど…


…………。

本当につまらないな!せめて話題を振って話を――

なんか空気が、ほんのりピリッとした。

「マスター、何かを感じます。気配が、変です」

これは──

暗殺者だね…

アサシン専用スキルの《グレイフェイズ》を使っているか。

気配、足音、殺気などを消す能力だけど私たちには意味ないよそれ。


背後。風の向こう。

殺意の匂い、ひとつぶん。

刹那、私の指先が軽く動いた。

まあ、デコピンだけども。

パチン──

風の音。

木が何本かバキバキって倒れる。

「ぶべらっ!」

その声とともに、アサシン7人が草むらに叩き込まれた。

「……マスター、加減、しました?」

「した。してあげた。あれでも」

本当に手加減したよこれ…


草むらに倒れ込んだアサシンの服をじっと見ていたら、あれ?

この紋章――前にあの男たちが着ていたのと同じ。

そう、「ノクターン・ファクトリ」と思われるのマークだ。

「リゼリア、こいつもあの工房のものだよ」

「マスター……解析しました。これらはノイエ・ヴァレッタ王国の住民で、精神支配の魔法によって操られている模様です。

また、ジョブが強制的に書き換えられている形跡も確認されました」

「ふーん、国の住民をさらって、暗殺者に作り変えるなんて……ほんとにやばそうな組織だね~」

と言いながら元住民を放置して進む私たち。



……あー、さっきのデコピン、けっこう飛んだな。たぶん、木が10本以上倒れてたし。

大丈夫かな…あの人たち…

 ま、それは置いといて。問題はここから。

「……ん。リゼリア、気付いた?」

「はい。……これは、結界ですね。しかも、迷彩と防衛の、二重です」

リゼリアが指差す先は、普通の空間に見えて、実はぐにゃりとした“圧”がかかっている。空気がわずかに引き締まってる。

これは、ただの魔法じゃない。本気で侵入者を拒絶する、結界構造だ。

「……ふーん。けっこうちゃんと作ってあるじゃん。やっと本拠地って感じだね」

「でも、このままじゃ私たちも弾かれます。……試してみたいものがあるのですが、よろしいでしょうか?」

お、きたきた。新技のお披露目ってやつ?

「いいよ。任せる。お願い。」

「任されましたので早速…」

そう言うと、リゼリアは手のひらをそっと前にかざした。

「──《アブソリュート・キャンセル》、発動」

空間がふわっと揺れた。いや、それだけじゃない。目に見えない“拒絶”の層が、ぷつりぷつりと糸が切れるようにほどけていく。

……え、なにこれ、ちゃんと解けてる?いや、正確には“解けてるように見えるのは私たちだけ”って感じか。

私の下位互換ではあるけどいつの間にかうちのメイドが無効魔法使えるようになったよ……

「……侵入可能領域、確認。マスター、どうぞ」

「やったね、リゼリア。入っちゃおっか~。ふふふ」

──さすが、うちのメイドさん。頼りになるなあ。



結界の中に入ったらすぐに工房が見えると思ったがしばらくは、ただ木々の間を静かに進んだ。

そうして少し歩いていくと木々の影の先に、ぽっかりと開けた空間が見えた。

そこにあったのは……工房。いや、工房というには大きすぎた。

巨大な鋼鉄のドーム構造。無数の鉄塔と魔導ケーブルが絡まり、地中に根を張るように広がっている。

これが《ノクターン・ファクトリ》か──

──でっか……思ってた3倍はあるじゃん、これ。

その外周にはたくさんの魔法使い達がいた。ノイエ・ヴァレッタ王国の裏道で見た、あの男たちと同じ制服、同じ紋章。

数は……ざっと二十人。いや、それ以上か。

そして、巡回する量産型のゴーレムたち。魔力炉心がむき出しで、過剰に赤く光っていいて、どれも同じ鋳型から作られたかのような無機質な兵器。


私はそっと、視線だけをリゼリアに向けた。彼女もすぐに目配せを返してくる。

「どうしますか、マスター」

リゼリアの問いに、私は目を細めて前方を見据えた。

巡回する魔法使いと、無機質な量産型ゴーレムたち。

──多い。いや、めちゃくちゃ多い。数えるのも面倒なレベル。

「よし、決めた!」

私は指をパチンと鳴らして、誇らしげに胸を張る。

その瞬間──

ギュイン、と耳障りな音を立てて、遠くの量産型ゴーレムの首が一斉にこちらを向いた。

……え?

「マスター……なぜ今、指を鳴らしたのですか?」

冷たい声が背後から突き刺さる。振り返ると、リゼリアがすでに笑っていない。

「ち、違うの! 気合いを入れたというか、ちょっとした演出というか!」

しまった…ノリでかっこよくしようとしたら、敵の目がこっちに!

「リゼリア! ええと、さっきの話だけど、雑魚はお願いできる!? 私、ボスを倒して王国でチヤホヤされたいから!」

「……押しつけようとしていることにもイラッとしますが、先ほどの軽率な行動にも腹が立っています」

ゴーレムたちは着実にこちらへ距離を詰めている。リゼリアは一つ、小さく息を吐いた。

「……まあ、ちょうど使ってみたい魔法もありますし。やってみましょう」

「やった!助かる!」

「ただこれが終わったらお説教ですね。油断しすぎです」

お説教は避けられそうにないな…

まあ、お説教は回避できないが面倒くさい戦闘は回避できた!



私は逃げてきてさっきのとこから結構離れたところへ来た。

「それじゃあ、潜入しようか…」

私はバッグからスコップとつるはしを取り出す。

「どうせ潜るなら、鉱石くらい掘って帰りたいし。レアなやつ見つけたら売って、課金アイテムの鬼目おにめ)に変えて――あっ、あの期間限定ガチャがまだ回せるかも……!」

思わず顔がにやけた。

決して遊びじゃない、これは戦略的副業。経済は回すべき。自分の財布も含めて。

「よーし、今日もバリバリ働いちゃうぞー(鉱石掘りを)!」

潜入という名の穴掘りを静かに始めた。



──はぁ。なんで私が片付け担当なんでしょうか?

量産型ゴーレム、ざっと三十。それに魔法使いたちが十人以上、ぞろぞろと迫ってくる。

マスターは指を鳴らしただけで私に全部押し付けて、颯爽と工房に突入。

「ええ、ええ。働きますとも」

私はスカートをひるがえして、前に出た。

「さあ、圧倒的な不平等を教えてあげます」

私は静かに指を鳴らした。

冷笑と共に展開するのは──《アブソリュート・キャンセル》。まず、相手のあらゆる魔法を強制無効化する。

そして――相手全員の展開された魔法陣が全部、砕け散る。さて、拘束しますか──

「なっ……!?」

「魔法が……展開不能!?」

「魔法陣が砕け散っただと……!?なんだこの魔法は――!?」

よく喋りますね、あなた方。


動揺の声が一斉に響く中、リゼリアは冷ややかな目で周囲を見回した。

──次の出番はゴーレムですか。

さっきの魔法無効化で魔法使いたちは沈黙状態。となれば、残るは物理で押してくる量産型ゴーレム三十体。

分厚い鋼鉄装甲に魔力を仕込んだ、王国製とは思えない無骨な機械人形。視線に反応し、一斉に私へと走り出す。

「なら、これでいかがです?」

展開するのは私の超高精度演算魔法、《カタストロフ・メジャメント》。

空間座標、重力波、衝撃分散角度、あらゆるデータを測定・把握し──

「測定完了。最適破壊演算を開始」

次の瞬間、地面が裂け、空間が歪む。

圧壊。飛びかかれば、反重力の渦に翻弄され、ねじ切られる。

無数のラインが空中に浮かび、ゴーレムたちの行動範囲を予測通りに制限していく。

「ただ、数が多いだけですね」

──さて、あとは魔法使いたちの処理ですが。

さすがにもう動けないと思っていたんですが、まだ意地を見せますか。

生き残った者たちが、あらためて魔力を集中し始める。仲間の倒れた場所に飛び、回復と結界の展開。

「ほんと、しぶとい」

足元に魔法陣が広がる。

漆黒の魔力が一点に収束し、空間を吸い込むように歪ませた。

「発生、黒の重力核。《エナジー・ブラックホール》」

闇色の球体が浮かび上がり、空間の光さえ呑みこみながら激しく脈動を始める。

風が渦を巻き、周囲の魔力などがが音もなく吸い寄せられていく。

「な、なんだ!?魔力が無くなっている!?」

今度はあきらめて逃げようとしているが証拠を残さないといけないので捕まえなければ。

金色の光が舞う。

神秘的な金糸が、空間を螺旋状に這うようにして広がり、魔法使いたちを中心に包み込んでいく。

触れた瞬間、魔力の流れが“切断”される。

詠唱が止まり沈黙する。

「――これでスキルも魔法も加護も、おもちゃも使えません。せいぜい“ただの人間”として震えていてください」

叫ぼうとした口が、金糸の静寂に沈む。

静まり返った工房に、私の足音だけが響いた。

あとは、アレイア様の好きなように“壊して”もらえばいい。



穴を掘ってから5分くらい経過した。

「ふふふ……この辺り、微妙に魔力の流れが濃い。つまり、レア鉱石の可能性が……!」

腰に下げたスコップを握りしめ、私は一心不乱に掘り進めていた。お金を稼いで課金するぞ!

地面をひと突き――硬い音。

「お? これは……!」

期待に胸を膨らませて、私はガンッと勢いよくつるはしを振り下ろす。


――ドゴォォォォン!!


しかし、びっくりな事に出た先は――まさかの巨大食堂だった。

「………………あれ?」

見上げれば、鉄骨むき出しの天井。左右には長机がずらりと並び、その周囲には、雇われた護衛たち、見習い魔導士っぽい連中、研究員風のローブの男たちまでいる。

……全員、スプーンを持ったままこちらを見ていた。

静寂。まるで時間が止まったかのような無音の世界。

私はそっと、そこの皿に盛られた肉じゃがを一つつまんで口に入れる。

「……うん、薄味。やっぱり塩足りてない」

そして極めて自然な動作で皿をテーブルに戻すと――、

「「「侵入者アアアアアアアアアッ!!」」」

天井が揺れるような怒号とともに、食堂の全員が総立ち。

「やっべ!こっちへ逃げよ!」

私は全力で身を翻し、食堂の奥にある出口へと疾走!

ここからボス部屋まで行こ!

「「「ゴウラあッ!待ちやがれや!」」」


俺は、ただ任務をこなしていた。それだけのはずだった。

なのに、あの少女に出会った瞬間、何もかもが崩壊した。

魔法も、術式も、ゴーレムさえも。

すべてを“無”に変える、ありえない存在。

「《アブソリュート・キャンセル》──って、なんだよ、あれ……!」

あのメイド服の少女ひとりで、我々全員を──いや、30体の量産型ゴーレムと10人以上の魔術師を、数分で殲滅したのだ。

俺は戦場を転がり、息を殺して逃げた。生き延びるために。


そして今、たどり着いたのは──《ノクターン・ファクトリ》の最奥。

「ヴァシリウス様っ……!ご報告があります!」

黒き法衣を纏い、仮面のように無表情なその男が振り返る。

我々のボスである《ヴァシリウス・グレイオル》。

「どうした──」

「た、たった一人のメイドが、我々の戦力を一掃しました……ッ!もはや通常兵力では対応不能かと……!」

沈黙。

ヴァシリウス様は目を閉じ──そして、嘲笑のような声を漏らした。

「ふふ……なるほど。ならば――そのメイドごと、王国を踏み潰せばいい」

「……え……?」

「こちらの《キメラ・アーセナル》、ついに調整を終えたところだ。そのメイドは、好都合な実験体になる」

数十体の、異形の兵器たちが――檻の中で蠢き、咆哮した。

「そして、そのまま“計画”も発動する。さあ、世界転覆をさせようか」

最後まで読んでくださってありがとうございます!

前の投稿から2週間もたってしまいました!すみません!

今回はリゼリアさんのバトルシーンを中心に描きました。

リゼリアさんはやっぱりしっかりとしていますね!


次回は第4話「マスター、やり過ぎです…」

お楽しみに!

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