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第2話:世の中様、再始動!現地調査だけども…

世の中様の異世界問題解決冒険の第2話です!

世の中様、ついに再始動!?

アレイアは神域を壊しては元に戻しまくり、城下町へ現地調査という名の散歩に行ったりと楽しんでいる

だけど、のんびり買い物のはずが――またしても世界がヤバい展開に…?

「それよりマスター。まず壊した神域、どうにかしてください。神々が“自分たちを脅かす何かがいる”と考え始めて、殺意を向けています」

さっきまで静かだった部屋の空気が、リゼリアの一言でピリッと引き締まった。

私はというと、布団でぬくぬくしながらポテチを手に取ったままフリーズ。

「――あっ、そういえばそうだった!」

やばいやばい、すっかり忘れてた!

神域壊したままだと、神々にバレて面倒くさいことになる!

今のうちに直して、“記録”もいじって、全部なかったことにしとこっ。


ぱっと立ち上がって、片手をゆる~く前に出す。

私の掌に、虹色の魔法陣がふわっと浮かび上がる。

出てきたのは一冊の大きな本――《記録書庫レコード・ライブラリ》。

世界の“本当の記録”が書かれた、ちょっとチートなやつ。

ページが自動でめくれてくと、「神域崩壊」って行を発見。

よしよし、ここを――

「こうして、こう! “神域崩壊:未発生”っと♪」

指先でちょちょいと修正した瞬間、本が虹色の光を放って、現実の因果を書き換え始める。

空間に走ってた亀裂もすーっと消えて、異常反応なんて最初からなかったことに。

ふふん、完璧。

「これでまた、神々の目をごまかしましたね」

リゼリアが軽くため息ついたのが聞こえる。

うん、分かるよその気持ち。でもね――

「うん、めんどくさいからね~。何もかもバレない方が平和だよ」

私は本を指ではじいて、キラッと光ったそれを霧のように消し去る。

はい、おしまい。現実修正、完了~♪



「じゃ、アニメの続き見よ――」

「待ってください。どこかの世界へ行って、調査しましょう」

今日こそ“何もしない”って決めてたのに、

やっぱりリゼリアが止めにくるんだよね~。


ソファに沈みながら、私はリモコン片手にタイトル画面を見つめる。

まだ第1話すら見てないんだよ?この気持ち、分かってる??

「今、1話見始めたから無理」

ガチで無理。ポテチも開けたばっかだし。

このまま寝転がって30分くらい、画面と一体化したい。

「調査って言っても散歩と同じです。どこかの世界の城下町にでも行って買い物でもしましょう。難しいことはありませんよ、マスター」

――散歩?

……ふむ、それならまあ。

戦いもなくて、買い食いとかできる感じなら、アリかも。

「……うーん、それなら少しは気が楽かも?」

リゼリアの言葉に、ちょっとだけ心が動く。

民衆の生活? はいはい、視察ね。うんうん、よくあるやつ。

「じゃ、行くか――ちょっとだけね。超・低出力でっと」

私はポテチを一枚口に放り込みながら、指をぱちんと鳴らす。

「インフィニティ・フォース、《ゼロ・ディフレクション》。目的地は……」

そうだな……買い物とかしに行くし、せっかくだから――


「『楽しそうな城下町』っと♪」


 細かい指定?そんなのいらない。気分がすべて。

どうせどこ行っても私がいれば何とかなるし。

「それ、完全に気分で選びましたね……」

リゼリアがあきれた声を漏らすけど、私は気にせず渦の中へ。

だってこれ、視察なんだからね。視・察!

虹色の渦に包まれて、私たちの姿はふわっと消えていった。



――転移、成功。

目の前に広がっていたのは、誰の姿もない静かな裏通り。

うわ、いきなり“異世界っぽい雰囲気”きたじゃん……!

石造りの建物に囲まれた中庭っぽい場所で、空気がちょっとだけ香辛料っぽい。

うーん、この異国感……嫌いじゃないぞ?


小道を抜けると、視界が一気に開けた。

わぁ……!


石畳の道に、木造の家々。風に揺れる木製の看板。

通りには旅人と商人が行き交ってて、遠くから鐘の音まで聞こえる!?

なにこれ、完璧に異世界じゃん!

「おお~……異世界のアニメとまったく一緒だな~! こういうの! こういうのだよ!」

テンション爆上がりで、私はくるくるその場で見回す。

こういう風景見るだけで楽しいんだよね~!


「ご機嫌ですね、マスター。ですが油断しすぎて迷子にならないでくださいよ。それにこのような異世界なら昔たくさん来たじゃないですか」

「それはそれ、これはこれ! ……っていうか観光目的で行ったことないじゃん、あたし!」

そうだよ!今までは「事件解決」か「空間の修復」か「世界の再構築」か、ろくでもない用事ばっかだったじゃん!

「確かに。いつも事件解決か、空間修復か、世界創造でしたね」

「……やだ、なんかブラック企業みたいな働き方だったじゃん昔の私」

「今は超・ホワイトですね」

うん、働かないって最高。


私はひとまず近くの案内看板をチラ見する。

えーっと……『ノイエ・ヴァレッタ王国 中央市場通り』、って書いてある。

ふむふむ。ここが今の私たちの観光スポットね!

ノイエ・ヴァレッタ王国、名前の響きも結構好きかも。


通りには屋台がいっぱい並んでて、パンに果物に焼き菓子に……あっちにスパイスまである!?

おいしそうな匂いがふわっと鼻をくすぐってきて、もう胃袋が本気出しそう。


さっそく私は焼きたてのパンを発見!しかもチーズ入り!

「んまっ! これチーズ3種類は入ってるね? 異世界グルメ侮れない!」

「分析よりも味を楽しんでください、マスター」

「楽しんでるよー! お財布とか気にしないでいい買い物、最高じゃん♪」

異世界で無限資産使って食べ歩きって、人生で一番有意義な時間じゃない?

アクセサリーをじっくり眺めたり、道端の大道芸人に投げ銭したり、

路地裏で売ってた“ぷるぷるスライムまん”とかいう意味不明なものまで買ったり――


あー、なにこれ超楽しい。

私がはしゃいでるのを、リゼリアは最初ちょっと呆れた目で見てたけど、

今はなんだかんだ隣で一緒に和んでるっぽい。やっぱり、平和っていいよね~♪



やがて空はすっかり夕暮れ色に染まり、街の灯りがぽつぽつと灯り始めた。

楽しそうに歩くマスターが、ふと脇道を指差す。

「……あっ、リゼリア、見て見て!」

「ああ、裏路地ですか……」

心の中で、すぐに警戒モードに切り替わる。

『近づかない方がいい』って、何度言えば分かるんだろう。


「こういうところだから行くんだよ。大体、異世界アニメで悪の組織が何かしてるのって、だいたいこういう場所だから!」

……またアニメ脳が爆発してる。


言い終わる頃には、彼女はもう路地に足を踏み入れていた。

ほんと、マスターは止める暇を与えてくれない。

これから何が起こるか、静かに覚悟を決めるしかない。



――んん? この路地、空気がなんか違う。湿ってて、重くて、ザ・裏路地って感じ。


そして見つけた怪しげな集団。檻。お金の受け渡し。

「……これ、まさか……」

目の前の光景に、リゼリアが警戒を強める横で、私はテンション爆上がりだった。


「来た来た来たーっ! 異世界アニメでよくある奴隷売買のシーン! ここで主人公が現れて助ける展開なんだよね! よーし、助けちゃおう♪」

「はしゃぎすぎです」

もう理屈とかどうでもいい。助けたいって気持ちが全部だった。

だから、私は迷わず前に出た。


「はいストーップ! その人たち、返してくれませんか?」

突然現れた美少女であるこの私に男たちは一瞬きょとんとしたが、すぐに下卑た笑い。

――正直に気持ち悪いんだけど……

「ちょうど奴隷としていい子が迷い込んだじゃねえか」

――うん、やっぱりこいつらやばいし気持ち悪い奴らだ……

屈強な護衛が私を囲んで、斧を振り上げた。と一緒に私は拳を突き出した。

「――えいっ!」

ドンッと放ったのは、ほんのちょっぴりの力……のつもりだったのに――

『あっ』

……気づいたときにはもう遅かった。

世界が砕け、空間が割れて、天界が吹き飛んだ。



空間には浮かぶ地面のかけらと、天界の神々の亡骸が残っているんだけど……

神々、南無。

『…………これはまずいっ』


「マスター。あなた、また世界を壊しましたね?」

「いやいやいや、ちょっと反応が良すぎただけで! パンチの威力の調整が……!」

「マスター、これは完全にアウトです」

「……はい、ごめんなさい、巻き戻します……」

私はそそくさと《記録書庫レコード・ライブラリ》を取り出し、「パンチ」以前の世界線を上書き。



──よし、やり直し!

「今度こそっ! 真の意味での手加減パンチ!」

バシュッ! ゴギャッ! メッシャァッ! ドガァンッ!

……ちょっと音が物騒だけど、まあいっか♪

「よしっ、助けられたー!」

護衛たちは目を白黒させながらバッタバタと崩れ落ちた。

体の曲がり方はちょっと……アレだけど、生きてるし問題なし!


商人たちも蜘蛛の子を散らすように逃げ出して、私は悠々と檻の鍵を破壊。

「もう大丈夫だよっ!」

子どもたちを解放して、教会の孤児院に送り届けたときのあの安心した表情――

……それだけで、来てよかったって思えた。



子どもたちを送り届けて、私たちは裏通りを戻る。

もう夕暮れっていうか、夜に片足突っ込んでるし。街灯もひとつ、またひとつと灯って、ちょっとだけノスタルジック。

――で、何この空気の違和感。

「……あれ?」

あの建物の奥から、微かにおかしな魔力を感じ取った。

「なんか、妙な防音魔法……?」

「マスター?」

防音魔法を使っている地点で怪しさ100%なんだよね。

「ちょっと静かに。リゼリア、あっちで何か話してる」

私たちは声を潜めながら、そっと建物の近くへと進む。


「奴隷の回収は順調だが、あくまで餌だ。問題は“被験体”をどう安定させるか……」

「魔物との融合実験は予想以上の成功率だ。このままいけば、王都ひとつくらい飲み込むことも夢じゃない」

「世界を転覆させるには、まず王国の首を落とす。首都ごと消してもいい」

「って、おい!こういう展開って普通、主人公たちは知らないまま進行するやつでしょ? でも、今私たち、聞いちゃったじゃん!しかも、1日で2回もやるようなイベントじゃない!でも……知っちゃったからには……先に潰してあげようじゃないのっ」

アレイアはくるりと踵を返して、満面の笑みを浮かべた。

「だからといって、突っ込むのは……!」

止めるリゼリアの声は華麗にスルー。スタスタ歩いて、怪しげなフード集団の前に、にこにこと立ちはだかる。


「ちょっとあなたたち、その計画、バッドエンド臭がすごいんですけど?」

「誰だ!? 見られたぞ――!」

うわ、ちゃんと即魔法展開とか覚えているんだ。

でも残念、こっちにはこれがあるんだよね。

「――《イレース・オーバーライド》ッ!」

パチン、と指を鳴らした瞬間、男たちの魔法がぐしゃっと潰れる。詠唱も構築もぶっ壊れ、魔力の流れが一気に霧散する。

「うわっ、詠唱が暴走っ……!?」

「マスター、もうちょっと物語の情緒というものを……!」

そんなことを考えないのが私なのだよ!リゼリア君!

あとはいつものように、ぼこぼこに――


まあ、手加減はしたよ?多分。物理的には、たぶん大丈夫。

最後に正気が残ってた男の襟をガシッとつかんで顔を寄せる。

「アジトの場所はどこかな~」

「アジトはどこかって? ふふ、こういうのは――」

「分かった。永遠復活回復地獄拷問するからリゼリア、準備お願――」

「な、なんだその物騒なワードは!?待ってくれ! 我々は“影の工房”《ノクターン・ファクトリ》だ! 本拠地は北の森の奥に――!」

「ありがとっ♪ じゃ、行こうか、リゼリア!」

と私は言って男にデコピンをくらわせて気絶させる。

「……強制的すぎて、もはや物語が追いついてません」



こうして私たちは、“影の工房”《ノクターン・ファクトリ》の本拠地へ向かうことになった。

異世界アニメの主人公もびっくりな即解決劇がまたひとつ更新された気がする。

お読みいただきありがとうございます!

前の投稿から遅いですが6日目にして投稿できました。

そして、次回も世の中様は止まらない!?アレイア、なんか企んでいる敵アジトに突入します!


次回、第3話「世の中様はメイドさんを巻き込みまくっている」

お楽しみに!

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