表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/43

40 幼少期ユキのゆる番外編

 ある冬の夜。雪がちらちらと舞う中、屋敷の中はぽかぽかのお風呂タイム。

 ユキは湯船の中でほわぁ~っと気持ちよさそうに目を閉じていた。


「はぁ~……しあわせ……」


 お風呂上がりには、サナお手製のココアと、ふかふかのバスタオルが待っている。これが至福。


 その日、サナはふと思いつきで新しい魔法入りのヘアトリートメントを試作していた。


「ユキ~、このトリートメント、使ってみて! “しっとりふわさら魔法”入り! つやっつやになるよ~!」


「ほんと!? じゃあちょっとだけ使ってみるね!」


 軽い気持ちで毛先に塗ったユキ。……が、これは、ただの“人間用”だった。


 ユキの髪は、いや、人狼としての毛は、ふつうの魔法じゃ済まないほどのポテンシャルを秘めていたのだ。



 お風呂から上がったユキ、バスタオルをぐるぐる巻きにして、サナの元へやって来る。


「サナ~、お風呂あがったよー」


「おかえり! じゃあ、髪乾かそっか。はい、風魔法!」


 ふわぁ、と優しい風が吹いて、ユキの濡れた髪が揺れる。と同時に。


 ぶわぁあああああああああ!!


「……え?」


 目の前に現れたのは、綿あめ状態の巨大ふわもこユキだった。


「ユ、ユキ……⁉ ど、どこまでが髪⁉ ていうか毛⁉ ていうか顔どこ⁉」


「うぅぅ……髪、ふくらんじゃったぁ……!」


 なんと、サナの魔法トリートメントとユキの人狼毛が合わさったことで、“ふわふわ属性が100倍ブースト”されてしまったのだ!


 その結果、髪は膨らみ、耳も膨らみ、しっぽなんてもう綿毛の塊レベルに。


「ちょっと! そのまま座らないで! クッションに見えて間違えて座るから!」


「こんな姿じゃ外に出られないよぉ〜!」


「いや、森の動物ならむしろ集まってくるかもしれないけど……! いや違う、そうじゃない!」


 慌てて魔法で毛を戻そうとするサナだったが、もふもふしすぎた毛は、なんと魔力を跳ね返してきた! まさかの魔法無効化。


 最終手段──地道にブラッシング作戦へ移行。



 1時間後。


「……はぁ、やっと戻った……」

「毛が……毛が普通のサイズになった……」


 二人ともぐったり。

 サナはくったりしたユキを見て、そっとココアを手渡す。


「ごめんね……今度は“人狼は効果過剰注意⚠️”ってちゃんと書いておくね……」


「うん……でも、ふわさらではあったよ。すごく」


「ほんと? ……じゃあ、ちょっとだけ成功かな?」


 ふたりは顔を見合わせて、ふふっと笑った。


 その後、サナの研究により、「もふ度を調整できる魔法入りブラシ」が開発された。

 名付けて《もふりコントローラー》


 ユキはこっそり、ふさふさしっぽ全開モードを「落ち込んだ時のおまもり」として愛用している。






 ある冬の朝。

 屋敷に静かに雪が降る中、ユキが目を覚ますと、サナの部屋からなんだか聞き慣れない“ぐったりした声”が聞こえてきた。


「……うぅーん、さむいぃ……」


 そっと部屋を覗くと、サナは布団にくるまりながら、顔が真っ赤。


「サナ!?」


「……ユキ? なんかね……頭ぽわぽわする……」


 触れてみると、びっくりするほど熱い。

 どうやらサナは、風邪をひいたようだった。


「ちょ、ちょっと待ってて! おかゆとか! 冷たいタオルとか! えっとえっと……!」


 ユキは大慌てで家の中をバタバタ走り回り、焦って水をこぼしたりした。おかゆはなぜか米のかたまりになり、タオルは結局、自分のマフラーだった。


(でも、全力で頑張った……!)



 ベッド脇で、ユキは必死に看病を続けた。

 おでこにマフラーを巻きながら(?)冷やし、なんとか完成させたドロドロのおかゆを差し出す。


「……ちょっと不思議な味だけど、体に良いと思うんだ……」


「……ユキ、ありがとう……でもこれ、おかゆっていうより……スライム……」


「えぇぇぇっ⁉︎」



 しかし、しばらくすると、サナがむにゃむにゃ喋り始めた。


「ねぇ……ユキ、今日は魔法の本読んで……新しいやつ……んむ……」


「だめ! 寝てて!」


「……おっきい氷の竜のやつ読みたい……」


「寝ててってばぁ!」


 サナは完全にぐだぐだ甘えモードだった。

 いつもの自信家でキリッとした姿はどこへやら、だるだるのダメなサナがそこにいた。


 ユキは頬を赤くしながらも、「……仕方ないなぁ……」と、横で本を読んで聞かせることにした。



 夕方。

 熱が少し下がったサナは、布団の中からぽつりと呟いた。


「ユキ……今日はいっぱい助けてくれて、ありがとね……。すごく嬉しかった」


「ううん、僕……サナの役に立ちたかったから」


 その言葉に、サナが微笑む。


「……風邪も悪くないね」


「だめです」


「うん、ごめん」



 その日、ユキは初めて「サナに甘えられる自分」に少し誇らしさを感じた。


(これからも、サナを守れるくらい、もっとしっかりしなきゃ)


 心の中で、そっと誓ったのでした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ