20 番外編『十三歳の誕生日』
本筋とはあまり関係無い番外編です。
山奥の屋敷に暮らして早六年と半年。ユキが十三歳を迎えた日、屋敷ではささやかな誕生日祝いが開かれていた。サナは朝からキッチンで特製ケーキを作っており、屋敷のリビングは彼女が用意した飾りつけで華やいでいた。
「ユキ、おめでとう! 今日はユキが主役だから、何でも言ってね!」
サナは大きな声でそう言うと、満面の笑みを浮かべてケーキを運んできた。ケーキには、魔法で作った美しい飴細工が飾られている。
「ありがとうサナ! ケーキ、すごい綺麗!」
ユキもまた笑顔で、サナが自分のために準備をしてくれたことに喜びを感じていた。二人で楽しくケーキを食べていると、ふとサナが呟いた。
「ユキも、もう十三歳かぁ。私が初めてユキに出会ったときも十三歳だったんだよね。あの頃は自分もまだ子供なのに、人狼の子を引き取るなんて無謀だったなぁって、今になって思うよ」
ユキはその言葉に驚いて目を見開いた。
「そっか……あの時のサナ、十三歳だったんだよね」
「そうだよ。ほら、私ってめちゃくちゃ魔法が得意でしょ? だから自立も早かったんだよね。でもね、改めて考えると、あの歳で子育てなんて無茶苦茶だったなぁって思うよ。まぁ、それでも何とかやってこれたのは、ユキが素直で良い子だったからだよ」
サナはケーキを食べながら笑うが、ユキは黙り込んでしまった。
「どうしたの? ケーキ、まずかった?」
「ううん、そうじゃない。ただ……サナが十三歳のとき、俺を拾ったんだって思うと……なんだか申し訳ないなって」
「えっ?」
「だって、俺のせいでサナの生活、いろいろ大変だったでしょ?」
ユキは少し俯きながらぽつりと言った。その言葉を聞いたサナは、しばらく呆然として彼の顔をじっと見つめた。そして次の瞬間、思いっきりユキの頭をぐしゃぐしゃっと撫でた。
「ちょっと何言ってるの? 私が勝手に拾ったんだから、ユキは全然悪くないよ! それに、確かに十三歳でユキを引き取るのは無謀だったかもしれないけど、あの時の私、めちゃくちゃ自信満々だったんだよ。『私は天才だから何でもできる!』ってね」
サナは照れくさそうに笑いながら続けた。
「それに、実際にユキと過ごす中で、私もいろいろ学んだんだ。だから、大変だったなんて思ってないよ。むしろ、楽しかったっていうのが正直なところかな」
ユキはその言葉を聞き、少しだけ目を潤ませながら小さく笑った。
「そっか……じゃあ、俺もサナみたいに十三歳で誰かを助けられるくらい、ちゃんと強くなりたいな」
「うんうん、それは良い目標だね。でもさ、私を超えるのは結構大変だと思うよ~」
「えっ、それ、俺がサナを超えるの無理ってこと?」
「無理とは言ってないよ! だけど、まぁ私は天才だからね!」
サナは得意げに胸を張り、ユキは思わず吹き出してしまった。
「今でも全然自信満々じゃん!」
その後、二人はお互いをからかい合いながらケーキを食べ続けた。
その夜、ベッドに入る前のユキは窓から満月を眺めながら、ふとサナに話しかけた。
「ねぇサナ。ずっと思ってたんだけど、あの時どうして僕を拾ってくれたの?」
サナはしばらく考え込み、少し照れたように答えた。
「うーん……たぶん、なんとなく、かな? あの時のユキ、めちゃくちゃ弱ってて、流石に放っておけないって思ったんだよね。それに……一人で寂しかったのかもしれない。ユキが家に来てから、私もずいぶん楽しくなったよ」
その言葉を聞いて、ユキは少しだけ驚いた表情を浮かべた。そして、静かに答えた。
「そっか……それならよかった。サナ、これからは僕もサナを守るね。今はまだ無理かもしれないけど、大人になったら絶対に」
「うん、じゃあその時は頼むね。でも、まだまだ私はユキに負けないから!」
サナは笑いながらユキの頭を軽く撫でて、部屋を出ていった。窓から見える満月は、いつもより少しだけ柔らかく輝いていた。




