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16 受容

 衝撃的な事実が発覚し阿鼻叫喚の屋敷へ、ユキが街から帰ってきた。ユキはつらつらと自分の話をし始めた。


「ただいま~今日はいつもの劇場に行ったけど、やっぱりアランさん、いなくなってたよ。アランさんの親友も、凄く心配そうで、本当に俺、なんだかいたたまれなかったなぁ」


 レーナは、「げっ、人狼……帰ってくるのが早いわよ!」と文句を言い、

 シドウは「お帰りなさい! ユキ君」とユキを出迎えた。

 サナは、「ユキ~!」と涙目で名前を呼んだ。


 サナの様子に驚いたユキは、

「サナ⁉ シドウさん! サナに何したの!」と問い詰めた。

 シドウは驚きながら「ええ⁉ 私⁉」と反応し、内心、「この展開、前にもあったような……?」と思っていた。


 ユキはサナを守るように前に立ち、「サナに何があったの?」と緊迫した声でシドウに詰め寄った。

 シドウは慌てて手を振りながら弁解した。


「いやいや、待ってくれ! 私が何か悪いことをしたわけじゃないんだ」


 レーナはその様子を見て呆れながら、


「まあ、いろいろあったのよ。アンタには関係ないから、気にしないでまたどっか行ってなさい」


 と冷たく言い放ったが、サナがそれを遮るように「ユキ、聞いて……」と、まだ涙目のままユキに話しかけた。


「私、肉親のことについて、いろんなことを知ってしまったの。それで、自分が一体何なのか、すごく混乱していて」


 サナの声は震えており、ユキもその様子を見てすぐに深刻な事態だと察した。


「え、父親が人狼⁉ 母親の実験で産まれてきた⁉ なんかエグいね!」


 ユキはサナから今回の調査で分かったことを聞いて率直に驚いた。


「父親が人狼ってことは、もしかしたらオマエの親戚かもね~?」


 レーナはそう言ってにやつきながら、ユキをからかった。


「私もまさか、こんな情報が出てくるとは思わず……サナさん、本当に申し訳ない。私の研究に協力していただいた結果、嫌な事実に直面させてしまった」


 シドウは、申し訳なさそうにそう言った。サナは一瞬言葉を飲み込んだが、すぐに静かな口調で答える。


「いえ、謝らないでください。シドウさんのせいではありませんよ。私がこのことを知ろうと知らなかろうと、事実は変わらないんですから……」


 そう言いながらも、どこか落ち込んだ様子のサナを見て、シドウはさらに後ろめたい気持ちになった。彼女にとっては、想像以上に重い事実だったのだろう。どうにか場の雰囲気を明るくしようと、シドウは急に思い立ったように言った。


「いやぁ……あ、そうだ! サナさん、魔法はお好きですよね? 今回いろいろと情報をいただいたお礼に、私からも研究成果や貴重な魔道書を報酬として差し上げます!」


「え⁉ 嬉しい!……と、普段なら思っていたんだろうけどね」


 サナは一瞬驚いて目を輝かせたが、すぐに苦笑いを浮かべる。そして、ぽつりとつぶやいた。


「なんか、私が魔法を好きで、魔法を習得して強くなっていくのが、母親の思惑通りに育っているみたいで……ちょっと複雑な気持ち」


 まだ自分の出生の事実を受け入れられずにいるサナの様子を見て、ユキは胸が痛んだ。普段明るい彼女が、こんなにも悩んでいる姿は珍しかった。どうにかして元気づけたいと、ユキは決意を固め、優しく話しかける。


「いや、自分がどう産まれたとか、親の思惑がどうとか関係ないよ! サナはサナ。俺だって実の親からは捨てられたけど、今はサナと一緒に楽しく暮らしてる。今ある事実はそれだけ」


 そう言うと、ユキはそっとサナの肩に手を置き、真剣な瞳で彼女を見つめた。


「サナ、俺、何があっても君の味方だよ。君がどんな過去を持っていたって、俺たちの関係は変わらないから」


 ユキが懸命に自分のことを励ましてくれるのを見て、サナは胸が熱くなり、気づくと涙がこぼれ落ちていた。


「ありがとう、ユキ。本当に……確かに、私がどう産まれたかなんて関係ないよね。大事なのは、今どう生きているかだもんね」


 サナは目元をぬぐい、微笑みを浮かべた。ユキの言葉は、彼女の心の奥にしっかりと響いていた。

 シドウとレーナはその光景を見ながら、しばし言葉を失った。レーナは気まずそうに口を開き、


「まぁ、なんだかんだ言って、アンタがいてくれて良かったわね、人狼。とりあえず、今日はこれで一件落着ってことでいいのかしら?」


 シドウも安堵の表情を浮かべながら、ユキの言葉に感心した。


「ユキ君、さすがだな。君の存在は本当にサナさんにとって大きいんだな」


 ユキは照れくさそうに頭をかきながら、

「いや、そんなことないよ。ただ俺は、サナが落ち込んでいるときくらい、力になりたいんだ」と微笑んだ。


 サナは深呼吸をし、明るい表情に戻り、


「よし、じゃあ、今まで通り、魔法の研究を頑張っていこうかな。だけど、母親みたいには絶対ならないからね! みんな、ちゃんと私のこと見ててね!」


 と力強く言った。


 ユキは元気よく「もちろん!」と答え、シドウも笑顔で

「よろこんで! これからも楽しく健全に、魔法について研究しましょう!」と返した。レーナは

「はいはい、見てるわよ」と軽く手を振りながら、心の中でサナが前を向けたことを少し嬉しく思っていた。


 こうして、サナは自分の過去を知った後も、前向きな姿勢を取り戻していった。

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