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10 反省会

 サナは、何故かユキのそばにいる怪しげな研究者、シドウを真っ先に疑った。


「シドウさん⁉ ユキに何したの!」

「ええ⁉ 私⁉」


「サナ、シドウさんは俺を助けてくれたんだ! 俺も色々なことが起こりすぎてちょっと困惑しているけど、このアランさんだけは助けて欲しい!」


 そう言って倒れている人狼の中の一人だけを指名するユキを見て、サナは困惑しながらも素早く対応した。


「えぇ……? 他にも色々倒れてるけど? とりあえず倒れてる人達全員に回復魔法かけとくね。事情は後で聞かせて!」


「私、怪しく無いです! 信じて……!」シドウが小声で呟いた。


 サナはとりあえず、その場で全員に回復魔法を施した。

 すると、その時点で起きたユキの親族の一人が、気まずそうにまだ気を失っている残りの親族を引きずって帰っていった。


「あの人達は?」サナはユキにそう聞いた。

「俺の親族だったやつらだよ……」


 ユキはどこか遠い目をして答えた。その瞳には、彼らと過ごした日々への複雑な感情が垣間見えた。

「え、マジで? もっと積もる話とか沢山あったんじゃないの? 帰っちゃうけどいいの?」


 サナは少し驚きつつも心配そうに尋ねたが、ユキは静かに首を横に振る。


「うん、もういいかな。今日は疲れたし、とりあえずアランさんとレーナ? だっけ? 屋敷で寝かせておこう」


 そう言いながらユキは、「そういえば、自分の母親はあの中にいなかったな」と気づいた。




 サナとユキは、事情聴衆のためシドウも連れて五人で屋敷へ帰った。屋敷でサナは、ユキとシドウから今日あった出来事を聞いた。


「え、それって結局、みんな私が目的だったってこと? ユキ、面倒事に巻き込んで本当にごめんね。私の噂が広まってこんなことになるなんて……もっと慎重に行動しておくべきだったのかも」


「本当にその通りですね……」


 シドウでもユキでもない声がすると思ったら、眠っていたアランが起きて会話に参加してきた。


「俺は、自分の正体を隠し通せず、自分勝手な行動に出て、皆さんやリヒトを巻き込んだ。皆さん、この度は多大な迷惑をかけて本当に申し訳ありませんでした」


 そう言ってアランは三人に対して頭を下げた。


「うっわ! びっくりした! 起きていたんですね。いえいえ、正直ユキに襲いかかった件に関しては怒っていますが、当のユキが許しているし、あなたが何かボロを出さなくても、いずれ彼女は別の方法で私について調べにきたでしょ」


「俺も自由に役者として活躍しているアランさんからいつも元気を貰ってました! どうか役者として生きたことを、自分勝手な行動でしかなかったとは思わないで欲しいです!」と、ユキもアランを励ました。


「サナさん、ユキ君ありがとう。本当に優しい……でも、これからはリヒトや劇団の皆に迷惑がかからないように、どこか遠い場所へ引っ越そうと思います」


 ユキはその言葉にとてもショックを受けたが、本人の選択を尊重した。


「あっそういえば! 魔法使いの少女に付けられた隷属紋が無くなってる! これもサナさんが解除してくれたんですか⁉」


「うん。そう」


「はぁ⁉」


 レーナが飛び起きた。


「ちょっと……あ、あんた、あたしがどれだけの代償を支払ってあの紋を付けたと思ってるの⁉ それを勝手に解除するだなんて!」


「あ、おはよう。いや、そっちの事情とか知らないから。だって、アランさんは貴方に脅されていたんでしょう? 可哀想だから取るよ。もし人狼のユキとアランさんが暴走してしまうのが不安なら、私が魔法で止めるから安心してよ」


 レーナは呆れてこう言い返した。


「おばさんさぁ、あんた王族? あんたの言ってることさっきからずぅーっと私の大嫌いな王族特有の偽善ムーブなんだけど」


 サナは、人生で初めておばさんと呼ばれて衝撃を受けたが、確かに十二歳からしたらあと一週間ほどで二十六歳になる自分はおばさんと呼ばれても仕方ないのか? と、気を取り直した。逆に、ユキがオロオロしながら、


「いやいや、サナまだ二十五だし、二十五にしては綺麗だし、全然おばさんじゃないよ!」


 と、小声でズレたフォローを入れてくれたことが、かえってサナの心を抉った。「にしては」ってなんだよ。


 シドウが「この前調べた結果、サナさんは特に王族とは関係なかったよ」とレーナに告げた。


「というかあたし、今まで人狼と同じ部屋に寝かされてたの? 普通に最悪なんだけど……デリカシー無さすぎじゃない? あー、ケモノ臭っ!」


「臭くないよ! ユキはなんかお日さまの香りがするし、耳はもふもふで尻尾はフサフサで可愛いのに」

 サナは見当違いの反論をした。


「いや、ユキ君が可愛く見えるのは普通では無いと思う」

「えっ……⁉」


 シドウの冷静な指摘に対し、ユキは普段からサナに可愛い可愛いと言われて育ってきたため、衝撃を受けていた。ふとサナはレーナを見つめ、少し真剣な顔つきで話題を変えた。


「それにしても、レーナちゃんの人狼嫌いは尋常ではないよ。何か理由があるんでしょ?」


 不意に核心を突かれたレーナは、一瞬表情を固くしたあと、サナを睨みながら反発した。


「ちゃん付けキモいからやめろ。なんでほぼ初対面で、色々邪魔してきたおばさんにそんなこと教えないといけないの!」


 レーナは反発したが、シドウがこう切り出した。


「いや、私は、レーナが人狼と王族を嫌う理由には納得している。話せば多分、わりと皆分かってくれると思う」


「何を根拠にそんなことを! というかお前は呼び捨てをやめろ。アンタはあたしのことを理解してやってるつもりみたいだけど、子供だからってなめてるんじゃないの?」


 レーナはなかなか話してくれなかったが、ユキとアランも、シドウが納得するほどの理由について気になってきた。

 皆の興味が高まり、レーナはついに渋々ではあるが、自分のことについて話し始めた。

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