水ノ神
僕も疲れたのでとっとと宿に帰ろうと思い、歩き出すと、アームストロング大佐に声をかけられた。
「先ほどのことの礼をしたい。できれば城に来てもらえないだろうか?」
「あの、宿屋のシチューを城に持ってきてもいいでしょうか?」
「どの宿屋のシチューだね?」
「あそこをぐるっと右に回ったところです。」
大佐が頷いたので先にテレポートして城へ向かった。
城の中に入ると、さっきの巨漢が声を掛けてきた
「先ほどはご協力ありがとうございます。私はグレイス。階級は准将です。」
「私はミズチです。」
「ねえ、なんで普段は『僕』なのに急に『私』になるの?」
ワダツミがそう聞いてきた。知らない。と僕が答えると不思議そうな顔をしていた。
「ところでそちらのお嬢さんは?」
「私はワダツミです。」
そう答え終わると、大佐とさっきの宿屋の人が入って来た。
「今日はこの方が料理を作ってくださるそうです。」
准将が頷くと、料理人はいそいそと料理場に歩いていった。
大佐と数十分城内を散策していると、鐘の音が聞こえて来た。
「食事ができたのでそろそろ行きましょう。」
大佐に連れられて食堂へ行くと、さっき食べたシチューが出て来た。
「ふん!こんなそこらの宿屋のシチューが食えるか!王に召し上がっていただくなんてもってのほか!」
(大佐、あの男の人は誰です?)
(あの人はクレイン少将です。)
「少将、そんなことを言わずに食べてみてはいかがですか。」
准将がそういうと、その静かな声からほんの少し漂う殺気を感じて黙って食べ始めた。
「!」
少将がその場に突っ伏して再び顔を上げた時、その目に涙を浮かべていた。
「クレイン、どうした?」
そう王様らしき人物に声を掛けられたクレインは涙を拭い、
「すみません、美味しすぎたので・・・」
「そうか、では余も食べるとしよう。」
改めて食べたシチューはとても美味しかった。やはり王宮の食材を使っているのが良いのだろう。しばらく経つと、王様が執事に話しかけた。
「この料理を作った者に、これからもこの城で働いてもらうよう手配してくれ。」
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