第2話 7人の精霊
「そういえば、さっき"みんな"で、って言ってたけど他にも誰かいるの?」
恐る恐る聞いてみると男の子は大きく頷いた。
「あ、そうなんです。僕とモードの他にも5人いまして。」
「えっ。(ご、5人?!)」
数の多さにまた動揺しているとモードが笑い出した。
「2人も5人も同じだろ?今更そんな驚くなよ。」
「そ、そうだけど…。」
そんなやりとりをしていると聞き慣れない声が聞こえてきた。
「おいおい。いい加減俺たちもそっち行っていいか?」
「待ちくたびれたんだけど。」
「飽きたんだが。」
「長すぎて眠くなっちゃったよ〜。ふわぁ。」
「早くしてくれ…。」
ほんとに5人いたんだ!そう思い立ち尽くしていると1番年上らしき人が私に言った。
「そろそろ明かりつけてくれないかな、お嬢さん?」
「は、はい。」
言われるままに急いで明かりをつける。するとカウンターの上に男の子とモードと同じくらいの背丈の男の人たちが5人並んでいた。もう何が何だかわからない。もしかしてこれは夢?夢なら早く覚めて!藁にもすがる思いで頬っぺたをつねってみる。
「痛ッ!!!」
無情にも頬に痛みが走った。
「大丈夫ですか?お姉さん!」
「うん、大丈夫だよ、ありがとう…。」
(現実なのかー。そうかー。)
もうなんとでもなれ!という気持ちで森の精霊たちに話しかけた。
「あの、あなたたちは森の精霊なんですよね?おばあちゃんが倒れたのを心配してくれたんですか?」
「そうなんだが、まぁとりあえず自己紹介させてくれや。」リーダー的な1番年上らしき男の人が前に出る。
「俺はブレンドコーヒーのブレンドだ。よろしくな。」
少し白髪混じりで黒いスーツに身を包んでいるブレンドさん。
「あー次俺ね!名前はもう知ってるよな!モード。プリンアラモードのモードだ!よろしく!」
赤い髪の陽気なお兄さんって感じのモード。
「次は俺か?俺はクリームソーダのソーダだ。よろしく。」
青い髪のクールな語り口のソーダさん。
「あ、次は僕ですね。僕はパンケーキのパンです。よろしくお願いします。」
クリーム色のクルクル巻き毛が可愛いパンくん。
「俺は抹茶ラテのラテだ。よろしく。」
深緑の髪で口数が少なそうなラテさん。
「はいは〜い、よろしくぅ。僕は苺パフェのパフェだよ〜。」
ちょっと不思議ちゃんな印象のピンク髪のパフェくん。
「俺が最後か。俺は小倉トーストの小倉だ。」
(トーストじゃないんだ、名前…。)
「あー!おまえ今、なんでトーストじゃないんだ?とか思っただろ!」
(やばい!バレてる!)
「す、すみません、小倉さん!」
「でも、私的には1番親しみやすい名前で…汗」
焦っておどおどしている私にブレンドさんが助け舟を出してくれる。
「その辺にしとけよ、小倉。」
「冗談だよ。悪かったな嬢ちゃん。」
黒髪で眼鏡をかけたちょっと神経質そうな小倉さん。
この7人が森の精霊…。
改めて7人を見つめているとモードが口を挟んできた。
「なあ、お姉さんの名前教えてよ。」
「あ、私は、柚、南田柚って言います。よろしくお願いします。」
「柚ちゃんな!よろしくな!」
ニコニコと明るいモードの様子に少し気持ちも落ち着いてきた。
「そういえば、皆さんの名前なんですけど。ここの喫茶店のメニューの名前ですよね?」
ふと思いついて聞いてみることにした。
「そうなんです!僕たちは普段名前ってものはなくて。
でもここを手伝いたいって思ってから色々と考えたんです。」
パンくんが嬉しそうに教えてくれる。
「それでここのメニューを見た時にそれぞれ気に入ったものを名前にしたんです。」
「そうなんだね!なんかみんなの雰囲気によく合ってると思う。」
「そう言ってもらえて嬉しいです!ありがとうございます柚さん!」
それぞれタイプの違う7人の精霊との出会いに戸惑いつつも1人ではない心強さを感じている自分がいたのであった…。