エピローグ〜これからも
森の木々の間から差し込む優しい光と少し木の葉をさらさらと揺らす心地よい風。
森の入り口に静かに佇んでいる『喫茶こもれび』には今日も美味しいスイーツを求めてやって来たお客さんで賑わっている。
7人の精霊たちとこの喫茶店を守ってきて早2ヶ月余り…。
今日私は退院するおばあちゃんを迎えに病院へ行く。
「美味しいスイーツをたくさん作って待ってますね!」
笑顔で見送ってくれたパンくん。
「なんかばあちゃんに会うの緊張するな。」
そう言ってソワソワしているモード。
「老人には暖かい抹茶がいいだろうか?」
細かいところまで気を配ってくれるラテさん。
「気をつけて行ってこいよ!」
今ではみんなの〝お父さん‘’的存在のブレンドさん。
「お客さんのことは任せてね〜。ふわぁ。」
眠そうに手を振ってくれたパフェくん。
「心配無用だ。行ってこい。」
言葉少なながらも頼もしいソーダさん。
「みんなで待ってるからな。」
メガネを押し上げながら笑顔で送り出してくれた小倉さん。
「皆さんありがとうございます!行ってきます!」
私は素敵な仲間たちに見送られながらおばあちゃんが待つ病院へと向かった。
「森の精霊たちが手伝ってくれてるなんて心強いねぇ。」
信じているのかいないのか、おばあちゃんは私が運転する車の後方の席に座りながら笑顔で言った。
おばあちゃんにはお見舞いのたびに7人の精霊たちのことを話していた。
「みんな、おばあちゃんに会えるの楽しみだって言ってたよ。待ってるって。」
「そう。うふふ。私も楽しみだよ。」
そんなやりとりをしているうちに車は喫茶店の入り口にたどり着いた。
「あらぁ。素敵なお店になって。」
前の喫茶店とは外観が全く変わっていることにおばあちゃんは驚いている。お店の周りを見て回るほど興味津々だ。
「じゃあ中に入らせてもらおうかね。」
おばあちゃんはそう言うとお店のドアを開けた。
「いらっしゃいませ!『喫茶こもれび』にようこそ!」
私とおばあちゃんが中に入ると、カウンターの周りに7人の精霊たちが並んでお辞儀をした。
おばあちゃんは少しびっくりしたようだがすぐに笑顔になった。
「あなたたちが森の精霊さんたち?いつも柚を手伝ってくれてありがとうございます。本当にお世話になったわねぇ。」
そう言っておばあちゃんは1人1人にお礼をしている。
みんなはそれぞれ照れたり言葉を交わしたりしていたが最後に代表してブレンドさんがおばあちゃんの前に立った。
「俺たちからも礼を言わせて欲しい。いつも森を大事にしてくれてありがとな。何十年もこの森が枯れずにいられるのはオーナーのおかげだ。森の精霊を代表して礼を言う。」
ブレンドさんが言い終わるとまたみんなでお辞儀をした。
「あらあら。そんなに大層なことはしていないよ。私だってこの森にはずっとお世話になってきたのだもの。お互い様だよ。ありがとうねぇ。」
みんながしみじみとした雰囲気になっているとパンくんの声が響く。
「ほら、みんな!オーナーさんをもてなさないと!」
「そうだな!ばあちゃん、こっちの席に座ってくれよ!」
モードがおばあちゃんの手を取り席に案内してくれる。
「退院おめでとう!」
数々のスイーツを堪能したり、おしゃべりしながらおばあちゃんも私たちも終始笑顔でその時を過ごした。
「今日は本当に楽しかったわ。またこれからも柚のことをよろしくね。」
おばあちゃんは満足げにみんなに微笑みかけた。
「え?まだ俺たちここで働いてもいいのか?」
ソーダさんが驚いた顔でおばあちゃんを見た。
「私はもうゆっくりさせてもらいますからねぇ。このお店は柚と精霊さんたちに任せたいの。ダメかしら?」
「ダメなわけないじゃないですか!ねぇ、ブレンドさん!」
「そうだな。俺たちも結構楽しんでやらせてもらってるからな。これからもよろしく頼む。」
パンくんの言葉にブレンドさんがおばあちゃんに頭を下げた。
「やったな!これからもよろしくな、柚!」
「お前、くっつきすぎだ!離れろ!」
私に抱きつこうとしたモードを小倉さんが引き剥がす。
「やれやれ。まぁこの仕事も悪くない。」
「俺みたいなクールな奴もいないと困るだろ。」
「自分で言わないの〜。ふわぁ。」
ラテさんソーダさんパフェくんがモードと小倉さんを見ながら笑い合っている。
私もそんな彼らを見て胸がいっぱいになる。
「皆さん、これからもよろしくお願いします!」
泣きそうになるのを堪えて精一杯の笑顔をみんなに向ける。
そんな私を1番嬉しそうにおばあちゃんが見守っていた…。
森の入り口に静かに佇む喫茶店。
あなたも一度訪れてみませんか?
美味しいスイーツを堪能すればあなただけのストーリーが生まれるかもしれません。
願いが叶うフォーチュンクッキーを添えて。
スタッフ一同心よりあなたのご来店をお待ちしております。
『喫茶こもれび』
完