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第74話 ご注文は?

 店主さんが開店準備を進める間、わたしたちは更衣室で給仕服に着替えさせてもらうことにした。


「実は女房だけじゃ手が回らねぇってんで、近々人を雇う予定をしてたんだよ。女房が給仕服を用意していたはずだから、それを使ってやってくれ」


 そういって店主さんに案内された更衣室には、確かに給仕服がちょうどぴったり5着用意されていた。


「師匠、似合ってますか?」


 水色を基調とした給仕服に袖を通したミナリーが、首を傾けながらわたしに尋ねる。


「か、かわいいっ! 似合ってるよ、ミナリーっ!」


「ありがとうございます。わかったのでくっつかないでください」


 ミナリーにやんわり引きはがされながら、わたしは他のみんなの給仕服姿にも目を配る。


 アリシアは赤色を基調とした給仕服、ロザリィ様は黄色を基調とした給仕服、ニーナちゃんは緑色を基調にした給仕服。みんなとてもよく似合っててすっごく可愛い。


 ちなみにわたしの給仕服はオレンジ色を基調にしている。


「師匠も似合ってます」


「そ、そうかなぁ? えへへ……」


 ミナリーに褒められると嬉しくて頬が緩んじゃう。お世辞を言うような子じゃないから、ミナリーの誉め言葉は全部本心から来る言葉だもん。


「それにしてもこの服、可愛いけどちょっとひらひらが多すぎない?」


「王城のメイドの方々が着ている給仕服にも似ていますけれど、色合いが少々派手ですわ」


「きっと王都では今こういう服が流行してるんですよ! さすが王都です!」


「そういうものですか」


 なんて会話をしながら、着替え終わったわたしたちはお店のホールに出る。開店前の店内は静かで、テーブルと椅子があるだけの殺風景な空間だった。


 けれど、窓の外を見ればたくさんの人が今か今かと開店を待ちわびている。


「か、軽い気持ちで引き受けちゃいましたけど大丈夫ですかね……?」


「今更ビビっても仕方がないでしょ。姉さまとミナリーは接客の経験があるのよね?」


「う、うん。あんなにお客さんは多くなかったけどね? あと、ミナリーは厨房のお手伝いがメインだったかな」


「じゃあ姉さまはあたしとロザリィとニーナのフォローをお願い。ミナリーは厨房で店主さんの補助を任せたわよ」


「了解です」


「が、頑張るね!」


 アリシアと店主さんの指示を受けながら、わたしたちは開店の準備を進めていく。


 そうしてついにお店を開けると、10以上あった席が一瞬で満席になっちゃった!

「ニーナ、3番席オーダーお願い!」


「は、はいっ!」


「お待たせいたしましたわ。こちらアイスティーとプリンパフェになります!」


「アリシア、6番席お会計だよ!」


「わかったわ! 食器を下げておくから姉さまはお会計と次のお客様を!」


「うんっ!」


 予想以上のお客さんの多さに、わたしたちは時間も忘れて接客に走り回る。わたしもロザリィ様もニーナちゃんも、アリシアが上手く指示出しをしてくれるおかげでスムーズな対応ができていた。


 それから息つく暇もなく接客を続けて、ようやく落ち着けたのは太陽がちょっと傾き始めた頃だった。


「ありがとうなぁ、嬢ちゃんたち。すっかり材料が切れちまったよ。今日はもう店じまいするしかねぇなぁ。本当に助かったよ」


「よ、ようやく終わりましたわぁ……」


「つ、疲れましたぁ……」


 店主さんに声をかけられて、ロザリィ様とニーナちゃんがへなへなと近くの椅子に座り込む。アリシアも「ふぅ」と大きく息を吐いていた。


「お疲れさまでした、師匠」


「ミナリーもお疲れさま。キッチンのほうは大丈夫だった?」


「はい。次から次へと注文が来て大変でしたが、何とか乗り越えられました」


「いつもは接客が女房だけだからこんなに回転率がよくねぇんだけど、嬢ちゃんたちのおかげで今日は過去最高の売り上げになりそうだ。これで女房にいい薬を買ってやれるよ」


「頑張った甲斐がありましたわね」


「はいっ! …………あれっ? 何か忘れているような……?」


 ニーナちゃんが唇に人差し指を当てて首を傾げる。


 やがて顔面蒼白のニーナちゃんが「あぁああああああっ!」と大きな悲鳴を上げた!


「わ、わたしまだ超弩級ジャンボプリンアラモードパフェを食べられてませんっ!」


「そ、そういえばそうだったね……」


 忙しすぎてすっかり忘れちゃっていた。そもそもわたしたち、このお店にパフェを食べに来たんだった。


「で、ですがもう材料を使い切ってしまったのですわよね……?」


「そ、そんなぁ……っ!」


 がっくし、とニーナちゃんが肩を落とす。ニーナちゃん、慣れない接客業をすごく一生懸命に頑張ってたのに……。なんとかならないかなぁ……?


「大丈夫よ、ニーナ。それに関しては抜かりないわ」


「おう、実はポニテの嬢ちゃんに頼まれてあらかじめ用意しておいたのさ。全員で座ってちょっと待ってな」


 そう言って店主さんが厨房の方へと入っていく。わたしたちは言われたとおりにテーブルを囲んで待つことにした。


「アリシア、抜かりないってどういうこと?」


「言葉通りの意味に決まってるでしょ。ほら、来たわよ。お待ちかねのパフェが」


「ふぇ……?」


 ニーナちゃんが顔を上げたと同時に、厨房から店主さんが巨大なパフェを抱えながら出てきた。


 人の頭と同じくらい大きなプリンに盛り付けられた大量の生クリームと果物。とても一人じゃ食べきれないくらい大きなパフェが、取り皿と一緒にテーブルの中央に置かれる。


「嬢ちゃんたちご所望の超弩級ジャンボプリンアラモードパフェだ!」


「こ、これが超弩級ジャンボプリンアラモードパフェですかっ!」


「想像の5倍くらい大きいです」


「こ、これ食べきれるかなぁ……?」


「夕飯は不要になりそうですわね……」


「見ただけでおなかいっぱいになってきたわ……」

 


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