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第72話 誰が誰でしょう?(アリシア視点)

 思わずといった表情で口元を抑えるミナリー……の姿をした姉さま。


 いったいどんな魔法なのかしら。外見は本当にミナリーそっくりに見える。


「ちちち違うよ? わたし、姉さま……じゃなくて! 師匠じゃないよです!?」


「はいはい、みんな教室で待ってるのよね」


「あ、ちょっと! 待ってよアリシアぁ!」


 慌てふためく姉さまを連れてみんなが待つ教室を目指す。


 その道すがら、あたしはミナリーの姿をした姉さまをまじまじと観察する。


「それにしても、本当にミナリーそっくりね」


「わ、わたしがミナリーですよ?」


「いやそれもういいから。見た目はミナリーだけど中身は姉さまよ」


「うぅっ、もうちょっと上手く騙せると思ったのになぁ」


「残念でした。あたしがどれだけ姉さまと一緒に居たと思ってるのよ。生まれてからずっと、10年以上。姉さまの隣に居たのはあたしだったんだから」


「うん、そうだね。さすがわたしの可愛い妹だよ。ご褒美に頭なでなでしてあげるね!」


「ちょ、ちょっと姉さま! ミナリーの姿で頭を撫でられるのは色々と複雑なんだけど!?」


 廊下をすれ違う生徒が何事かとあたしたちを見てくる。傍から見れば生徒会長が新入生に頭を撫でられている不思議な絵面だ。明日には変な噂が流れても不思議じゃない。


 だけど、あたしは姉さまの好きにさせることにした。


 だって嬉しかったから。こうして姉さまとスキンシップするのは久しぶりで、たとえその姿がミナリーでも、頭を撫でてくれる優しい手つきはあの頃の姉さまと変わらない。


 わたしの大好きな、姉さまの手だったから。


「大きくなったねぇ、アリシア」


「……だって、5年も経ったのよ? そりゃ大きくなるわよ、誰だって」


「えー? わたしこの5年でちっとも大きくなってないよ? いいなー、わたしもアリシアみたいに身長を大きくしたかったなぁ」


「姉さまは別の所が大きくなったわよね……」


 頭を撫でられているせいで前かがみになったあたしの眼前では、姉さまの豊かな双丘が歩くたびに揺れている。5年前はここまで大きくなかったはず……。姉妹なのに、どうして差が生まれちゃうのかしら。


「も、もしかして太っちゃったかなぁ!? ミナリーの手料理が美味しすぎてついつい食べ過ぎちゃった自覚はあるけど……」


「なるほど、それが原因か」


 そういえばミナリーも姉さまほどじゃないけどそれなりにあったわね。きっとミナリーの手料理には胸を大きくする魔法がかけられていたに違いないわ。


 今度ミナリーに手料理を作ってもらおうかしら、なんて考えている内に教室についた。


 中にはロザリィ、ニーナ、姉さまの姿がある。だけど、中身が本当に外見と一致しているかはわからない。少なくとも教室に居る姉さまは偽物ね。


「おかえりなさい、ミナリー。アリシアも」


 姉さま(仮)が微笑みながらあたしたちを出迎える。落ち着いた姉さまって感じね。今のところ誰だかわからない。


「遅いですわよ、二人とも! まったくもぅ、高貴なわたくしをいったいいつまで待たせるんですの!? もう少し遅ければ打ち首でしたわよ!」


 ロザリィ(仮)は何ていうか、いつもよりテンションが高いわね……。隣でニーナ(仮)が眉をぴくぴくと痙攣させているわ。


「ロザリィ様、少々お口が過ぎるのではないかしら?」


 ニーナ(仮)は上品な口調でロザリィ(仮)を窘める。これはわかりやすいわね。


「わぁ! みんなそっくり! ぱっと見じゃ誰が誰だかわからなくて面白いね」


「え、姉さまもわからないの?」


「うん。わたしだけ先にミナリーに魔法をかけてもらって教室を出たから、他のみんなが誰に変身したのか知らないんだよね」


 そう言って姉さまはみんなに駆け寄って、一人一人をまじまじと観察していく。あたしもせっかくだから、誰が誰に変身しているのか考えてみることにした。


 まず、ロザリィはニーナで確定ね。自分に変身している誰かのあまりのノリノリっぷりに、ニーナを演じる余裕すら失ってるわ。問題はミナリーとニーナ、どっちがロザリィの行き過ぎた演技をしているのかだけど、


「姉さま、どっちがミナリーかわかる?」


「うーんとねぇ」


 姉さまは顎に手を当てながら一人一人をまじまじと見つめていく。すると姉さま(仮)はどこか気恥ずかし気に目を逸らして、ロザリィ(仮)は落ち着いた様子で微笑む。


 そしてニーナ(仮)はそのまま姉さまと見つめあった。


 ……あれっ?


「ミナリーみーっけ!」


「さすがに師匠は騙せませんでしたか。一人一人見つめるのはズルですよ、師匠」


 姉さまに抱き着かれながら溜息を吐いたのは、ニーナ(仮)だった!


「さすがの師弟愛ですわね。我ながら良い演技ができたと思っていましたのに」


 そう言ってロザリィ(仮)が苦笑する。


「って、ロザリィあんた変身してなかったの!?」


「ええ。変身魔法の効果を確かめるのに、わたくし自身が変身しても効果が分かりづらいですもの。客観的に見るためにミナリーには他のみんなにだけ変身魔法を使ってもらったのですわ」


「し、師匠さんの演技は上手くできていたでしょうか……?」


 姉さま(仮)がおずおずと手を挙げながらあたしたちに尋ねてくる。


「うん、わたしそっくりだったよニーナちゃん!」


「全然そっくりじゃないです」


「えぇー? お淑やかなところとか似てたと思うけどなぁ?」


「お淑やか?」


「そんな不思議そうな顔されると師匠泣いちゃうよ?」


 およよと泣いたふりをするのはミナリーで、そんなミナリーに冷たい視線を送っているのはニーナ。そんな二人を微笑まし気に見つめているのはロザリィと姉さまで…………あーもぅ! 頭がこんがらがってきたわ!


「ちょっとミナリー! あたしにもその変身魔法をかけなさい! みんなだけ楽しんでずるいわよっ!」


「わ、わたくしも! 効果は確かめられましたし自分で試してみたいですわ!」


「じゃあ次は今と別の人になって遊ぼっか!」


「わ、わたしミナリーさんになってみたいですっ!」


「まったく、仕方がないですね」


 そんな感じで、あたしたちは寮の門限ギリギリまで変身魔法でお互いになりきって遊び続けた。


 その次の日。あたしとミナリーが付き合ってるなんていう変な噂が学園を駆け巡ったけど、聞かなかったことにした。


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