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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
ドラグニティ魔法学園に入学 ~王子のことが大好きな令嬢と大嫌いな令嬢編~

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臭い先生

「サキアちゃん、いやー、可愛いねー。この黒髪なんて炭みたいだ。よく燃えそう」


 フェニル先生はあまりにも品がない発言でサキア嬢を苦笑いさせていた。さすがフレイズ家の女性。そう言う部分がなっていない。きっと今までもあのような性格が婚期を遅れさせてしまったのだろう。

 サキア嬢は左から三番目の席に座る。


「次はサキア嬢の隣の獣族」

「はーいっ!」


 ミーナは両手を挙げながら席を立ち、そのまま教卓の前に出た。


「初めまして、ミーナ・ウルフです。私の趣味は戦うことと食べること、遊ぶこと、運動すること、寝ること、お風呂に入ること……」


 ミーナは趣味を何個も何個も話していた。ものすごく多趣味なのはいいが、さすがに趣味ばかり話されても飽きてしまう。


「ああ、沢山言い過ぎて何を言ったか忘れちゃった~。あはは~!」


 ミーナは仕切り直し、趣味を飛ばして特技を話し出した。


「私の特技は大食いです! この前は物凄く大きなボワを一人で食べました! 物凄く美味しかった~。今度、皆とも一緒に焼肉をしたいな~」


 ミーナは耳と尻尾を動かし、笑顔を振り撒く。何と可愛らしい笑顔だろうか。

 わんこが肉を見ただけで笑うように、口角をグーッと上げ続け、尻尾を振る。表情筋がずっと笑っているせいか、とても引き締まっており、笑顔がずっと出続ける。マシンガンのような笑顔の連射に、私達の心は常にほっこり。


「これから頑張りたいことは勉強です。私、勉強が苦手なので教えてくれると助かります。興味があることは部活とかかな。えっと、一年間、よろしくお願いします」


 ミーナは頭を下げ、自己紹介を終えた。


「ボワの肉か、いいな。私も食べたかった~」


 フェニル先生はまだ九時を過ぎた頃だというのに、お腹を鳴らしていた。想像しただけでお腹が空いたのだろう。


「こんど、一緒にボワの肉を取りに行きましょう!」


 ミーナは笑顔でフェニル先生を誘う。


「いいねいいね。ボワを狩って皆で大焼肉パーティーしようか!」


 フェニル先生はミーナの誘いに乗り、上機嫌になっていた。彼女なら本当にやりかねない。


「じゃあ、次、ミーナちゃんの隣にいる女の子」


 フェニル先生は私の方に視線を向ける。


「はい」


 私は軽く返事してから椅子を下り、教卓の前に出る。


「初めまして。キララ・マンダリニアといいます。趣味は仕事や料理。特技は魔法かな。動物と軽く会話も出来ます。これから頑張りたいことは勉強と運動、あと部活です。興味があることはお菓子とか、食材に関してですかね。一年間、よろしくお願いします」


 私は本当に普通の自己紹介をこなした。ただでさえ浮いている中でぶっ飛んだ自己紹介をしたらさらに浮いてしまう。

 出来るだけ浮かないように注意した自己紹介だったので、驚くほど普通になってしまったが、これでいい。だって、私のことは皆知っていると思うし。


「はぁ~。可愛い~。キララちゃん、可愛すぎるよ~。私の妹にした~い」


 フェニル先生は私にぎゅ~っと抱き着いて、デカい乳を顔に押し付けてくる。何とも美味しくなさそうな燻製臭。いや、酒の臭いか?

 彼女から女のにおいがしなかった。仕事現場にいる働き者のにおい。昨日、お風呂に入っていたはずなのに、いったいどうして。


「えっと、フェニル先生、臭いです」

「え。嘘? いやぁ~、この服、着た後に八日洗っていないから~。さすがに臭いか!」


 フェニル先生は笑い、服を叩く。いや、においは叩いたくらいじゃ抜けないから。


「まあ、後で燃やしておくよ」


 フェニル先生は洗濯物を焼却してどうするのだろう。まあ、考えなくてもいいか。

 私は席に戻り、椅子に座る。


「次は青髪の子だね」

「は、はい」


 青髪の好青年は椅子から立ち上がり、教卓の前に出る。


「は、初めましてパーズ・マグノリアスといいます。えっと趣味は鍛錬と剣。特技は一分以内に眠れます。これから頑張りたいことは魔法です。興味があることは魔法関連のことです。一年間、よろしくお願いします」


 パーズは頭を下げ、軽く自己紹介した。


「うーん、私でも一分で寝るのは無理だ。それは才能だねー。いいなー、私も一分で寝られるようになりたい」


 フェニル先生は頷きながら、パーズに興味を持っていた。


「じゃあ、次は俺だなっ!」


 橙色髪の少年はフェニル先生に指名される前から立ち上がり、教卓の前に走って向かう。到着しだい、両手を挙げた。


「初めまして! 俺の名前はライアン・ハートフル! 熱い心を持った男だ! こう見えて男なんだぜー。はははっ!」


 ライアンは面倒臭い性格なのか、自分で言って自分で笑っている。そういう笑いが一番笑えない。


「んんっ。趣味は美人なお姉さんを見たり、剣を振ったり、運動したりすることだ。特技は直感がよく当たる。これから頑張りたいことは、健康的な生活を送りたいかな。あと、彼女も作りたい! 俺、こう見えて彼女がいないからよろしく! ああ、でも、同級生には興味ないかな」


 ライアンは腕を組みながら私達の姿緒を見て頷いていた。


「はは、ライアン君は中々面白い少年だね。どうだい、私と付き合わないかい?」


 フェニル先生は面白半分でライアンを誘う。


「えー、臭い人は無理かなー」


 ライアンは女性の前で本音を言う。いや、臭くても臭いと言っちゃ駄目なんだよ。私は女同士だからよかったけど、男が言ったら悲しんじゃうじゃん。


「むぅ、私、そんなに臭いかな……」


 フェニル先生はいじけてしまい、床を指先でなぞり始めた。この人の熱い時と冷めている時の差が激しすぎるよ。


「お、お姉ちゃんが臭い訳じゃなくて、服が臭いだけだから。服さえ洗えば大丈夫!」


 メロアがすぐにフェニル先生の温度を上げ、気持ちを元に戻させる。


「そうだよね。大丈夫だよね」


 フェニル先生は復活し、胸を張った。この人、Sランク冒険者なのに少年にやられそうになっていましたけど。


「ライアン君、立派な女性に対して臭いと言ったら嫌われちゃうからな。気を付けたまえ」


 フェニル先生は大人らしくライアンにびしっと伝えた。


「えー、でも、女は良い匂いがした方が良いに決まっているじゃん。臭い女は論外~」


 ライアンはフェニル先生を女の外へと追いやった。


「私なんて臭いだけの大人だよ。そうだよ、臭い服って気づけなかった臭い女だよ」


 フェニル先生は床に倒れ込み、指先で円を描きながら、泣き潰れている。


「お、お姉ちゃんは部屋がお酒臭いだけだよ。鼻を治せばなんとかなるって。大丈夫、大丈夫だから!」


 メロアがまたしてもフェニル先生に炎を与え、気持ちを高ぶらせる。この二人、本当は物凄く仲が良いんだな。


「そ、そうだよね。私の鼻が悪いだけで臭い訳じゃないよね。きっと普通に部屋が臭いだけだよね。って! それも嫌だよ!」


 フェニル先生はノリ突っ込みが物凄く上手いらしい。毎回されても面倒臭いが、たまに見るくらいなら楽しいかな。

 フェニル先生が乗り突っ込みしている間にライアンは元の席に戻り、最後にレオン王子が出てきた。


「えっと、こんな空気で自己紹介するのもなんだけど、レオン・ルークスといいます。趣味は運動や読書。特技は相手の顔を覚えること。これから頑張りたいことは国民の代表として他国に行っても恥じない人間になること。興味があることは普通の生活かな。変な家系だけど、普通に接してくれるとありがたい」


 レオン王子の家は変な家系ではなく、王家なので普通に接することは物凄く難しいと思う。まあ、学園の中で上下関係はないというし、普通に接してあげた方がレオン王子のためになるのかな。


「レオン王子、私は臭いか……」


 フェニル先生は未だにいっていた。レオン王子にムギュっと抱き着いて匂いを無理やり嗅がせている。この先生大丈夫か?


「く、臭いというか、何というか。焼き鳥の臭いがします。焼き鳥でも食べました?」

「あぁー、部屋の中でフェニクスが燃えてたからその匂いが付いたのかも。もしかして、これは私の臭いじゃなくてフェニクスの臭いなんじゃ! うわーい、フェニクスが臭いんだって!」


 フェニル先生は窓際から外に叫んだ。この人、教師に向いていない気がするんだけど。

 私達の担任、というか、私とミーナ、メロアにとっては寮の先生でもある。ものすごーく面倒くさい生活が待っていると確定した。


「はぁ、だから嫌だったのに……。お姉ちゃんと学園でも一緒とか、ほんと最悪」


 メロアは机に突っ伏し、本気で嫌がっていた。せっかく離れられると思えた学園で、フェニル先生と授業をうけなければならないのだと。

 でも、フェニル先生の授業は必修だから、皆必ずあるわけで。まあ、担任といってもずっと一緒にいるわけじゃないはず。

 教科ごとに先生が入れ替わって授業してくれるはずだ。そう考えれば、フェニル先生が担任でも別に悪くない。悪くないけど、よくもない。


「よし、皆の自己紹介が終わった。今、二八分くらいたったか。今から何をしようかなー。普通なら、八〇人くらいが自己紹介するから、一限は潰れるんだけど、あと六〇分くらい余っちゃった」


 フェニル先生は教卓を背もたれにしながら後頭部に腕を組み、ものすごくだらしない恰好で私達の前に立っている。

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