牛乳の評価…
「常連さんが増えたのは喜ばしいですけど…。今回からはちゃんと一日の使用量を計算して牛乳を使わないと、またすぐに無くなっちゃいますよ。今のところは牛乳パック10本しか売れないので、ちゃんと考えて使ってくださいね」
「そうか…これ以上は買えないのか…本当に残念だ。もしこれ以上買えるようになったらすぐ教えてくれ。2倍…いや3倍の量は買わせてもらうぞ!」
オリーザさんは、瞳を輝かせながら私に詰め寄る。
――お…おじさんの眩しい瞳は、結構…気持ち悪いな…。
「ま…まだ、量産の目途は立っていないので何とも言えませんけど…。何とか頑張ってみます…」
「そうか、よろしく頼む。あ、料金! ちょっと待ってろ、今持ってくる」
オリーザさんはお店の奥の方へと走って行った。
そして瞬きをする間に…戻ってきた。
「ちょうど売り上げは上々でな、すぐ払えそうだ」
オリーザさんは、革製の袋から金貨2枚と銀貨5枚をキララに手渡した。
「あの…えっと、料金…間違ってますよ。今回の料金は銀貨10枚、または金貨1枚です…」
「前の牛乳パック分と助けてもらったお礼だ、取っときな」
「いや…でも前に来た時は配達が遅れちゃったし…」
「材料の納品が遅れるなんてよくある話だろ、3日、4日の遅延なんてザラだ。その遅延を考慮してこっちは材料を注文してるんだよ。だから嬢ちゃんが牛乳を3日遅れで持ってきた時は、俺の考慮ぴったりだったし、事前に遅れる連絡をしてきた時はめっちゃ驚いたぞ。普通、納品が遅れても面倒な連絡はしないからな」
「え…そうだったんですか…いや、でも時間に遅れるのは一番いけないことだって教わったので…」
――グラサンマネージャーに…。
「いいから、いいから。それだけ嬢ちゃんは良い物を売ってるんだ…。王都を見てきた俺が言うんだ間違いない。王都でもこんな美味い牛乳はなかなかお目に掛れる、代物じゃないからな。美味いだけじゃなく生で飲めるほど新鮮な牛乳だ。王都なら1パック金貨1枚でも売れるぞ! それを10パック金貨1枚だろ…もう買わなきゃ損じゃないか!」
オリーザさんは更に瞳の輝きを増し、私を見つめた。
「あ…ありがとうございます…。ぜひこれからも私達の牧場を…ご贔屓に…」
「当たり前だ! あ! そうだ、今日余ったパンをちょうど捨てるところだったんだ、好きなだけ持って帰ってくれ。俺は明日の仕込みをやらないといけないんでな」
「本当ですか! ありがとうございます。丁度夕食をどうしようか迷っていたので、とても助かります」
私がお礼を言うと、オリーザさんは笑顔でお店の奥へ向かった。
「『持って帰ってもいい』と言われても…。結構な個数…あるよな。これ全部捨てちゃうなんてもったいない…」
私は店内をちょっと見てまわる。
「あ…ゴンリパンだって、ベスパが好きそうなパンだね。値段は…銅貨5枚。フムフム500円くらいか、値段感覚はあまり変わらないんだね。そう考えると、やっぱり白パン銀貨1枚はちょっと高い気もするし…何なら私の牛乳パックだって1パック銀貨1枚はちょっと高すぎるかもね…。でもまぁ、あっちが喜んでるんだから良いよね。ってあれ…ゴンリパンが無い…」
「キララ様…もごもご…もごもご…美味しいですよ。ここのパン…もごもご…もごもご…」
「ベスパ…勝手に食べちゃったの…。まぁ…オリーザさんは『持って帰っていい』と言ってたけど。それに…喋るのか、食べるのか、どっちかにしてよ。行儀悪いよそれ…」
「モグモグ…ゴクリ…。大変申し訳ありませんでした、次からは気を付けます」
ぺスパは一礼しながら、礼儀正しく謝罪の言葉を口にした。
どうやら、今日の失態をしっかりと学習しているようだ…。
「はぁ…、許す」
お店に陳列されていた商品は、だいたい黒パンと黒パンを主体とした総菜パン。
それと一番見やすいところに置かれていた、単体の白パン…。
割合で言うと黒パン8、白パン2くらいで売られていた。
「まぁ…白パンより黒パンの方が安いし…庶民には買いやすいよね。オリーザさんの黒パンは普通の黒パンより全然軟らかくて食べやすいし」
黒パン単体なら銅貨1~2枚で1個、何か練り込まれていたりゴンリなどの果物が乗っていたりするとその分値段が上がり銅貨3~5枚ほどの値段になっている。
白パンは1個で銀貨1枚の値段らしく、単体でしか売っていないらしい。
「そりゃあ…ただの白パンでさえ銀貨1枚で手が出しにくいのに…、さらに値段が上がるんじゃ誰も買おうとしないよね。いや…でも街の平均賃金が分からないから、お店の単価は普通なのかも…。今度ギルドに行くとき街の平均賃金も聞いてみようかな…」
余ったパンを全部持って帰っても私達だけでは食べきれないので、値段が高い白パンと栄養価の高そうなゴンリ黒パンを、私は紙袋に詰めて持って帰る。
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