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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
ドラグニティ魔法学園に入学 ~王子のことが大好きな令嬢と大嫌いな令嬢編~

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ライバル関係

「えっと、えっと……。この子はフェンリルで、なんか、魔力が多い場所が好きみたいです」

「やっぱり、フェンリルか。すっげえーちっさくなっている。ウルフィリアギルドにいたのに、こんなところに来ちゃ駄目だろー」


 モクルさんはフェンリルを持ち上げ、抱きしめる。フェンリルの顔がモクルさんのデカい乳に挟まれ、もの凄い状況になっていた。


「ふぐぐぐ、は、放せ、この無礼者っ!」


 フェンリルは尻尾を盛大に振りながらその状況を楽しんでいた。


 ――こいつ、駄女神の乳でああやって遊んでたな。やはり、変態狼だったか。


「フェンリル、帰れ」


 私は満面の笑みを浮かべながら指示した。


「……きゃいん」


 フェンリルはベスパに連れ出され、皆の注目を集めていた。


「はぁ、あんな奴でも神獣なんですよね」


 私はフェニクスに話しかけた。


「はい。あんな奴でも神獣なんですよ。まったく、破廉恥なやつです」


 フェニクスは水面に浮かぶ白鳥のように羽をしまい、優雅に漂っている。


「まったく、こんな大騒ぎするようじゃ、全然疲れが取れませんわ」


 ローティア嬢は立ち上がり、お風呂から出た。お風呂に入っていた影響でたてがみロールは真っ直ぐになっており、とても長い。お尻すら隠しているくらい長く、手入れが大変そうだなと思ってしまった。


「お風呂はワイワイ入った方が楽しいのにな~。なーんでそれがわからないかな~」


 メロアはお風呂の縁に頭を乗せ、手を広げながらくつろいでいた。くつろぎ方が銭湯に通っているおばさんなんだよな。


「お風呂は一人で入るものですわ。誰にも邪魔されず、じっくりとお湯の暖かさを楽しみ、疲れを癒す至高の場。それにもかかわらず、大勢で入り、談笑しながらなんて、意味がわかりませんわ」


 ローティア嬢は風呂椅子に座り、蛇口をひねる。どうやら、このお風呂場は水道が通っているようだ。さすがドラグニティ魔法学園。田舎とは違う。

 ローティア嬢はシャワーを使い、頭を洗う。一人で髪を洗い慣れているらしく、メイドや執事がいなくても何ら問題なかった。いつも一人でお風呂に入っていたのかな。


「はぁー。やだやだ、そんな一人、私は特別な存在なのよ~。なんて雰囲気を出していたら、友達なんかできずに、一人ぼっちのまま学園生活が終わっちゃうつーの」


 メロアは何かとローティア嬢に噛みついていた。自分と真反対の存在が気になるのかな。


「学園は勉強する場。遊びに来たわけじゃありませんわ。逆に友達にかまけていたら、共に落ちますわよ」


 ローティア嬢の本気の視線がメロアに突き刺さる。


「……はぁ? この私があぶれるっていうの。舐めたこといってくれるじゃない」


 メロアはお風呂から立ち上がり、他の女子生徒を分けながら、ずいずいと歩いていく。


「あんた、あたしよりも入学試験の結果が悪かったからって喧嘩売ってんじゃないでしょうね?」


 メロアはローティア嬢の側面に立ち、メンチを切る。


「わたくしとあなたの試験の結果で大きく違ったのは仲間の違いですわ。わたしの試験会場にいた生徒では実技試験を最後まで到達できなかった。逆に、あなたがいた場所は実技試験を突破した。その違いでしかありませんわ」

「つーまーりー、私の方があなたよりも実力が上ってことよ!」

「なんですって……」


 ローティア嬢は立ち上がり、大きな胸をメロアの胸に押し当てながら、額をぶつけ合う。両者共に似た者同士。


「なによ、私の方が上に決まっているでしょ。まあ、今度のクラス発表の時に白黒つくと思うけどね!」

「大貴族なのだから一番上のクラス同士に決まっているでしょ。なにを上から目線な。わたくしとあなたなら、どう考えてもわたくしの方が優秀だわ!」

「へーへー、そんなこといってらー。まあ、すぐに私の実力に気づくでしょうけど、逆に案んたのその伸び切った鼻をへし折ってやるわよ」

「望むところですわ。そっくりそのまま、同じ発言をお返しいたします」


 ローティア嬢はメロアの獣のような鋭い視線にびびらず、逆に言い返していた。


「はいはい、二人共、そんな恰好で言い合っていたら風邪をひくだろうが」


 フェニル先生はフェニクスの魔力を使い、両者を包む。


「も、もう、お姉ちゃん。これは私とこいつの問題なの!」

「まあ、こいつですって。こいつってどいつですの!」

「どう考えてもあんたしかいないでしょうが」

「あんたですって! わたくしの名前はローティアよっ!」

「しっているっつーのっ!」


 メロアとローティア嬢は言い合っていたが、その光景が切れ漫才のようで、面白かった。私と同じように思っていたのか、お風呂場にいる者達もクスクスと笑っている。


「「笑うな!」」


 メロアとローティア嬢の声と顔を向ける瞬間が重なり、完璧だった。

 多くの者は大貴族に命令されて押し黙る中、私だけ、堪えるのに必死だった。


「ともかく、ローティアだけは絶対に負けないから」

「同感ですわ。メロアにだけは絶対に負けませんわ」


 両者共に同室でありながら、良いライバル関係になっている。ライバルがいるということはそれだけで、成長出来る機会が増すので、大変羨ましい。


「はぁー、さて、私達も体を洗うとするかー」


 フェニル先生が立ち上がる。引き締まった体に割れた腹筋。骨太な体なのに、華奢に見える。今朝あった、フレイズ家の当主とガタイが似ており、しっかりと遺伝を継いでいた、そのガタイの良さのわりに、スタイルが良すぎる。きっとお母さんの遺伝子だろう。ほんと、いいとこどりをしたんだな。


「ん、んん? 体の傷が……」


 フェニル先生は体を見回す。私の魔力は傷を癒す効果もあるので、フェニル先生の体についていた傷を癒していた。


「う、嘘。昔の火傷跡が……」

「え、打ち身が消えてますわ」

「生まれながらのあざが綺麗さっぱり」

「体中の発疹が消えちゃっている」

「ニキビがない。そばかすもない」


 女子生徒達は少しずつ自分の体に異変を感じていた。嫌な異変ではなく、良い異変を……。


「うわぁああああああああああああああああんっ~!」


 多くの女子生徒は泣きだした。いや、フェニル先生も泣いている。


「な、なになに、なになになに」


 ミーナは周りが一斉に泣き出したことに違和感を覚えていた。そりゃ、ミーナにとって体の傷は勲章で、別に気にする点じゃないのだ。


「うわぁ~ん、バカみたいに綺麗になっている~。嬉しいよぉお~」


 鏡を見て自分の顔を見ながら泣き叫ぶ上級生。


「体の傷が綺麗さっぱり。何なんだこれは。フェニクスでも古傷は癒えなかったのに」


 フェニル先生は体中を舐めまわすように見て、触りまくっている。


「自然の魔力で体が活性化し、古びた傷も内側から盛り上がる皮膚に押し出されただけですよ」


 フェニクスはぴよ~っと叫びながら、ジャバジャバと水浴びをしていた。


「はは……。こりゃ、ほんとうに聖なる泉じゃないか……」

「だから、そう言ったじゃありませんか。簡易版聖なる泉なんですよ。ほんと、妖精よりすごい存在なんですから」


 フェニクスは私の方に移動してくる。

 撫でろとでも言いたそうに私の前で止まった。まったく、調子が良い神獣たちだ。


「皆さん、若く見える効果は数時間で消えますが、体の負傷は戻りません。普通に喜んでもらっていいですよ」


 私は広々としているお風呂の中で優雅にフェニクスの背中を撫で、寛いだ。ミーナも私のもとに寄って来て、共にお風呂を堪能する。


「キララちゃん。君はいったい何者なんだ」


 フェニル先生は異物を見るように私に声を掛けて来た。


「うーん、ただの村娘ですけど?」

「そうだが、さすがにこんな効果を生むスキルは聖女くらいしかいないだろ」

「あー、聖女じゃありませんよ。断言します」

「あぁ、調子が狂う。キララちゃんは普通の女の子でとんでもない子ってことでいいか?」

「とんでもない子ではないと思いますけど……。さすがに不思議ちゃん属性を付けられるのは困ります。あのキャラ、ものすっごく面倒臭いので」

「……はあ」


 フェニル先生は疲れたのか、ざばーっとお湯に浸かり直した。そのまま、私もとにやって来て。私を抱きしめてくる。母親に抱きしめられているような安心感があり、とても心地よい。まあ、年齢で考えると、私のお姉ちゃんというのが一番近いか。


「フェニル先生、あんまりくっ付かれると恥ずかしいんですけど」

「良いじゃないか。私はキララちゃんを知る義務がある。そう、学園長からいわれている。しっかりと守らないといけない存在だとも聞いている。信頼関係を結ぶのは重要だろう」


 フェニル先生は笑いながら、私の頬を突いてくる。面倒臭い。


「もう、そういう生徒一人にひいきするといじめとか、学園に対する不満とか問題が起こるので、やめてください」

「おぅ、なんか、振られた気分」


 フェニル先生は小山座りをしながら呟いた。


「もう、振られたんですか?」

「いや、まだ、手紙を書いただけだ……。冒険者ギルド経由で渡してもらおうと思ってな」


 フェニル先生の乙女な表情が可愛らしく、少々にやけてしまう。上手くいくと良いけど。


「あぁ~、もう、無理~。あっつーい」


 ミーナはお湯から出て体を洗いに向かった。すでに、私とフェニル先生だけになり、輝くお湯の光が目に刺さる。


「ほんと、キララちゃんの魔力量は凄いな。こんな状態になるなんて」

「まあー、ちょっと量が多すぎて困りますけどね。皆さん、もう一度入りますか?」

「はーいっ!」


 体を洗っている女子生徒達は大きな返事をした。


「なら、なるべく滲み出しておきますね」


 私はお湯に浸かって出汁を取られている鰹節の気分に成り、汗に自分の魔力をふくませてお湯の効能を聖水張りに変える。


「よし、私も体を洗おうっと」


 私はお湯から立ち上がり、体を洗いに向かう。


「ぽぉ…………」


 女子生徒は私の姿を見て、頬を赤らめさせていた。


「えへ?」


 私はとりあえず笑う。職業病みたいなものだ。


「ぐはっ!」


 女子生徒達の大半はなぜか、攻撃を食らったかのような声を出した。私は、精神魔法や無詠唱魔法を放ったつもりはないのだが。


「お、思ったよりも神々しいですわね」

「キララ、なんで、あんなに可愛いの」


 ローティア嬢とメロアもダメージを食らっており、鼻をつまんでいた。鼻血が出てしまったらしい。私が可愛すぎるのがいけないのかな?


「キララ様、皆さん、魔力過多でございます」


 ベスパは私の魔力量が放出されすぎていると警告音を鳴らした。どうやら、無意識に魔力を制御するのを忘れていたらしい。


「あぁ、なるほど」


 私は体から溢れ出るオーラのような魔力を内に秘める。


「えっと、皆さん、もう、お風呂に入らないようにお願いします。そのまま入ったら危険なので」


 私は忠告し、開いている風呂椅子に座って体を洗った。

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