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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
ドラグニティ魔法学園に入学 ~王子のことが大好きな令嬢と大嫌いな令嬢編~

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名前を覚えてもらう

「見ろ見ろ~。どうだどうだ。凄いだろ~」


 モクルさんは胸を張り、胸が比較的小さいパットさんに見せびらかす。


「えーえー、すっごいデカいおっぱいだこと。私にそんな見せびらかして楽しいの?」

「違う違う。ほら、ほら、どうだ。何か変わっているだろ」


 モクルさんは体を動かし、乳の揺れ具合をパットさんに見せていた。


「え、いつもより揺れてない。なんで?」

「キララちゃんに胸当てを貰ったんだ。それが物凄い良い品でさ。驚くくらい動きやすくて苦しさがなくなった。これで、もっと運動に集中できる!」

「モクルが今以上に強くなったら困るんだけど。まあ、別にいいか。モクルの気持ちがよくなったのなら。はぁ……」


 パットさんは胸に手を置く。手の平にすっぽりと納まってしまう程度なので、BかC。Aではないな。私はAAだ。ほんとまな板で揺れる部分がない。肩が凝った経験は前世を含めて一度もないよ。はははっ!


「お~い、皆。キララちゃんが皆にあった胸当てを作ってくれるって!」


 モクルさんは勝手に下着の宣伝を始めた。私はそんなこと一言も言っていないのに。


「自分に合った胸当て……」


 ここは女子寮だ。皆女子。多くの女子がモクルさんの方を向いた。どうやら、少なからず胸当てに対する不満があるようで……。


「うぅ。男性の店員さんに胸を見られるのが恥ずかしくて、昔からずっと同じのを使っているの。胸当ての高級店ってあまりないし……」


 二年生の乳がデカい先輩はブラジャーの大きさがあっていない模様。


「胸当てを付けると肩に跡が付いちゃうでしょ。あと、ものすごくゴワゴワして、着け心地が最悪なの。どうにかして~っ」


 一年の乳がデカい令嬢は胸当ての素材が気に入らないようだ。


「わ、私、胸はそこまで大きくないけど、その、あそこが内着と擦れると集中できなくて」


 二年の少女は、胸はないが、乳首が内着と擦れてくすぐったいのだとか。


「はぁー、良いでしょう。胸当てに不満がる人は全員私が解決してあげます! 特別に無料で!」


 私が作る下着は材料費や人件費がゼロ。原価ゼロで質が良いブラジャーを作っている。お金をもらえば、すべて私の手に入り、税金も取られず大儲け、出来るわけではない。

 売り物にすれば普通に税金が取られる。そもそも、寮の者からお金をもらったら、ちょっとやらしいじゃないか。なので、お金ではなく別の何かで返してもらおう。


「じゃあ、皆さん。食事が終わったら脱衣所に集合してください」


 私は女性達の悩みを解決するため、脱衣所に急いだ。料理はすでに食したので問題ない。

私が脱衣所で待っていると、ちらほらやって来た。


「じゃあ、手を横に広げて八秒待ってください」

「は、はい」


 女子生徒は腕を上げ、Tの字になって止まる。ベスパが胸の周りをグルグルと回って、計測した後、他のビーに製造を委託し、他のビーが持ってくる。

 もう、頼んだ八〇秒後に商品が届く。物流が全国に広がっている地球でもありえない速度だった。


 私はビーからブラジャーを受け取り、女性に手渡す。


「え……。もう?」

「はい。もし壊れたり、寝苦しかったり、不満があれば教えてください。すぐに交換します」

「わ、わかった」


 女性は服を脱いだ状態だったので、受け取った胸当てを一度付ける。


「うわっ、うわぁ~っ! すっごいっ!」


 毎回その反応を貰えるとこちらとしても嬉しい。今までのブラジャーの質が相当悪い品だったんだろうな。

 乳を包み込むようなフィット感。もう、なにも着けていないような着け心地。肩に紐の後が残ることがない伸縮性と軽さ。どれもこれも好評で、感謝の気持ちが飛び交った。

 加えて私が一度も経験した覚えがない苦労話を何度も聞かされる。


「キララちゃん! ありがとうっ!」


 脱衣所にやって来たデカ乳たちから感謝の言葉を何度も受けた。多くの者が私に興味を持ってくれたようで何よりだ。

 メロアとローティア嬢、パットさん、フェニル先生などは来なかった。きっと色々な誇りが邪魔したのだろう。


「さて、私もお風呂に入ろうかな」


 冒険者女子寮の共同風呂だ。床に埋め込まれたような石造りの浴槽は一据えしかないが大変広く大きい。

 大きいということは掃除が物凄く大変だということ。なので、ちょっと辺りを見渡せば、黒カビや赤カビ、青かびの宝庫。

 まあ、除き防止のために窓が小さいので換気が上手く出来ないのも原因か。魔法でどうにかできそうだけど、毎日掃除するマメな人間がいないのかな。


「ドキドキ、わくわく。ドキドキ、わくわく」


 周りの女子生徒は私が脱ぐのをまだかまだかと待っていた。この状況、ルドラさんの屋敷でも経験したな。

 どうも、妖精みたいに可愛らしい私の姿が見たくて仕方がないらしい。

 この世界の可愛いの基準が狂っている。でも、私みたいな存在が子供以外に本当にいないので、気になる気持ちもわかる。ただ、見られる側の気持ちに立ってもらいたいものだ。


「はぁー。平民が先にお風呂に入っても良いんですか?」

「あ……」


 多くの女子生徒は自分が貴族だったことを忘れていた。それだけ、私の体が見たかったということか……。変態どもめ。

 どうも年功序列というか、貴族階級の序列が高い者から入るという暗黙の了解でもあるのか、皆、全然はいらない。

 少し経つとフェニル先生とローティア嬢、メロアが風呂にやって来た。


「なんだ、お前ら。先に入ればいいのに」


 フェニル先生は服を豪快に脱ぎ捨て、壁側に作られている衣服入れの中に落とす。服が皴になってもお構いなしだ。


「ここはドラグニティ魔法学園の寮の中でしてよ。貴族の階級など気にする必要がないのだけれど、なぜ待っているのか不思議ですわ。先輩方の方が私より位が上ですのに」


 ローティア嬢はお淑やかに服を脱ぎ、素早い手つきで服を畳む。さすが大貴族の見本となるご令嬢。あれこそ、貴族のあるべき姿だ。


「うぅ。み、見られるとなんか、恥ずかしいな」


 メロアは私と同じくらい胸がないので、服を脱ぐのに躊躇していた。フェニル先生の後ろに隠れながら服を脱ぎ捨てちょこちょこと走りながら風呂場に入る。


「よ、よし。入ろう」


 他の女子生徒も次々お風呂に入って行く。大貴族以外は三年、二年、一年の順。私とミーナは一年で平民なので最後。


「おお~、広いっ!」

「ミーナ、濡れた床の上で走ったら危ないよ」

「あはは、ごめんごめん。こんなに大勢でお風呂に入ると、私の故郷みたいで嬉しくってさ~!」


 ミーナの故郷には温泉があるため、こういう状況は珍しくないのだろう。逆に、初めて入って来た一年の者達は皆、緊張している。

 お風呂は体と心を癒す場所なので緊張していたらもったいない。


「皆さん、こんばんは~。私の名前はキララ・マンダリニアといいます。よろしくお願いします!」


 私は桜の花のように満開の笑顔を作り、盛大に挨拶した。

 多くの女子生徒はポカーンとした表情を浮かべている。だが、私の突拍子もない自己紹介で緊張が晴れたのか少々笑ってからお湯の暖かさを堪能し始めた。

 これで、私の名前と顔を覚えてもらえたはずだ。こんな場所で挨拶するほどのメンタルを持ち合わせている者がいったいどれだけいるか。

 名前を覚えてもらうのが、仲良くなるための第一歩。この一瞬で私の名前は寮に住んでいる人達に色濃く記憶されただろう。


「では、失礼します」


 私は体をしっかりと洗い、髪をお団子状に丸めて邪魔にならないように配慮した後、女の子達が多く入っているお湯の中に足先を入れる。すると。


「うわっ……」


 私が足先を入れた途端、無色透明だったお湯に波紋が生まれ、ラメを入れたようにキラキラと輝きが広がる。


「えぇ。な、なにこれ」

「ど、どうなっているの?」

「なんか、お湯が柔らかくなったみたい」

「肌が赤ちゃんの肌みたいにすべすべに」


 女子生徒達はお湯の効果が変わったと直感したのか、体に擦りつけるように血行を促す。


「凄い、体がすべすべになっちゃった。お肌艶艶。こんなお風呂、入った覚えがないよ」


 女子生徒達はお肌のモチモチ具合を両手でいっぱい確かめて楽しんでいる。


 ――わ、私、まだ、足先を入れただけなんですけど。


「キララ様が入る前からお湯に魔力が多く含まれていた影響で、キララ様の魔力が加わったことで全体が纏まり、一気に飽和したと思われます」


 ベスパは私の魔力で多くの魔力水が反応したという。もう、それじゃあ私の魔力は触媒(化学反応の前後でそれ自身は変化しないが、反応の速度を変化させる物質)じゃん。


 何ということでしょう、私が全身浸かったころにはただのお湯だったお風呂がキラキラリンと光を放っているではありませんか。多くの女子生徒が入っているため、何とも窮屈で少々薄汚れているように見えていたお風呂場が光り輝き、あっという間に聖なる泉に大変身……。


「お、おぉ……。な、なにがどうなって」


 フェニル先生も何が起こっているのか謎に思っており、辺りを見渡す。


「ぴよ~っ!」

「ひゃっふ~っ!」


 神獣のフェニクスとフェンリルがお湯の中に突っ込んだ。すると、光が少々弱まり、少し柔らかいお湯質に戻る。


「ふぇ、フェニクス。何しに来た」


 フェニル先生はジャバジャバと体を洗っているフェニクスに近づき、持ち上げる。


「いや~。こんな、聖なる泉に入らないなど無理に決まっているじゃありませんか。私の美しい翼もこのようにさらに美しく元通り」


 フェニクスは翼をはばたかせ、左翼を見せる。前と何ら変わらないが、フェニクスからすれば全然違うらしい。


「あぁ~。きもちぃ~」


 通常より小さいフェンリルはおっさんの声を出しながら、犬かきしていた。


「おい、変態……。ここがどこかわかっているのか?」


 私は苦笑いを浮かべながら、真っ白な神獣に近づいていく。


「あ、あぁ~。いやぁ~、キララ。わ、われは雄だが人間の雌などに興味はないぞ……」


 フェンリルは顔を蒼白させる。いや、もともと白いが、もっと青白く見えた。全身の毛がはらりと抜け、魔力となる。どうやら、私を見て恐怖しているらしい。


「神獣が女子寮のお風呂に入ってくる? 神様が許すと思っているの?」

「め、女神はわれと一緒にお風呂に入っても何も言わなかったぞ。逆に目一杯抱きしめてくれた」


 フェンリルはしゅんと耳をヘたらせ、遠い過去を思い出し、寂しそうな顔になる。

 そんな顔を見せられたら、私の怒りメーターもしゅーんと下がり、ため息と共に平常値に戻る。


「まったく、他の女子の裸を見ちゃ駄目だよ」


 私は体を洗う用の布でフェンリルの目を隠す。


「ちょ、これでは何も見えないではないか……」

「お湯に入れたらそれでいいでしょ」


 私は小さなフェンリルを抱きしめ、お湯に浸かる。


「これで満足?」

「お、おう……」


 フェンリルは静かになり、舌を出しながら大変喜んでいた。そりゃあ、女の子の匂いむんむんなお風呂で世界一可愛い私に抱きしめられながらお湯に浸かれたら、嬉しいに決まっている。


「ぐぬぬ、キララ様に抱きしめられながらお風呂に入れるなんて、何たる贅沢……」


 ベスパは大変悔しいのか、歯を食いしばりながら翅をブンブン鳴らしていた。


「キララちゃん、その狼って……」


 モクルさんは私の方に歩いてくる。デカい乳がデカい……。おっと、語彙力がおかしくなってしまうくらいグラマーすぎる体型で、私の体は貧弱なもやしに見えてしまう。

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