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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
ドラグニティ魔法学園に入学 ~王子のことが大好きな令嬢と大嫌いな令嬢編~

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モクルさん

「えっと、とりあえずフェニル先生みたいにカッコいい冒険者になるのは難しいと思ってください」

「え? どうして……」

「だって、ものすごく多くの人がいるルークス王国の冒険者の中で、Sランク冒険者はたった八組しかいません。普通に考えて成れるわけありませんよね?」

「そ、そうだけど『聖者の騎士』は諦めない心があれば、Sランク冒険者になれるって言っていたよ! なら、私にも成れる!」


 パットさんは凄い楽観主義者だった。まあ、悪い性格じゃないけど、不慮な事故が起こったら、どんがらがっしゃんと大転落しそうなので危なげない。


「聖者の騎士さん達がどんな経験を積んだか、私は知りませんし、パットさんがどれだけ凄い方なのかもわかりません。でも、言えるのは自分の決心は思ったよりも弱いということ」

「どういう意味?」

「失敗し続けたら、パットさんは気持ちがぽっきり折れてしまうかもしれません。しっかりと考えてから行動してください。私も考えてここに来ました。だから、今の私に後悔は一片もありません」

「す、すごい。キララちゃん、ものすごく大人だぁ……」


 パットさんは口をあんぐりと上げながら、呟く。そう、私は大人なのだ。パットさんの方が年齢は上だが、精神年齢は私の方が二倍は上。なので、大人に見えてもおかしくない。


「いやー。パットさんの色気に比べたら私はまだまだですよ」

「もー、上手いこと言って。キララちゃん、すっごい商売上手なんだろうなー」

「あはは、そんなことありませんよー」


 ――一日で金貨八〇〇枚儲けていると言えないよな。言ったら、なにを思われるか。


 私は苦笑いを浮かべながら、パットさんの話を聞く。他愛のない話だったが、先輩の話が聞けるのはとても貴重な時間だった。


「パットさんは何か部活に入っているんですか?」

「私は剣術部と生徒会に入っているよ」

「剣術部と生徒会ですか。生徒会ってことは、リーファさんと知り合いってことですね」

「うん。生徒会長は凄いよね。頭脳、強さ、美しさ、何もかも兼ね備えている。ほんとカッコいい」


 パットさんは腕を組みながらウンウンと頷き、リーファさんの姿を想像しているようだった。

 確かにあの女性は頭が良くて運動が出来て、美しい。ほんとミスパーフェクトと言いたいくらいの女性だ。

 大貴族の令嬢で、お兄さんはSランク冒険者。状況としてはメロアと同じだけど、性格が全然違う。それこそ、リーファさんの方が王族と結婚しそう。


「はぁー、私も生徒会長くらい何でも出来たらな~」


 パットさんはリーファさんに劣等感を抱いていた。同級生だし、そうなるのも無理はない。


「なんだ、なんだ~。パット、いつもの元気はどこに行ったよ。そんなんだから、胸もぺったんこなままなんだぞ~」


 パットさんの後方から先ほどミーナと一緒に話していた獣族の女性がやって来た。相も変わらずデカい乳。なに系の獣族か気になり観察すると、牛っぽい。この世界ではモークルというべきか。そりゃ、デカくて当たり前だ。


「もう、やめてよ。ここの大きさで女の魅力が決まるわけじゃないでしょ」


 パットさんは胸を隠すように腕を抱き、獣族の女性から身を引く。


「はははっ、まーまー、そう怒るなって。いやー。パットがどんな一年とつるんでいるかと思えば、超可愛い子じゃないか。私の名前はモクル。モークルじゃなくてモクルだ」


 乳がバカみたいに大きな獣族の女性は腰に手を当てながら自己紹介してきた。

 身長は一七〇センチメートルほどあり、大柄。肩幅や腰、脚、腕、どこを見てもデカい。さすが牛……。

 クマくらい力が強いし、草しか食わないのに筋肉だるまになっちゃうのかな。いや、さすがに肉も食べているか。

 モクルさんは色々デカいのでプロレスラーのように見える。顔がなまじ良いので、ものすごく違和感だ。


「は、初めまして。キララ・マンダリニアといいます。よろしくお願いします」

「キララちゃんか。よろしく!」


 モクルさんは手をさしだしてきた。

 私はモクルさんの大きな手を握り、握手を交わす。もう、私の手の二倍はあるのでは。


「凄い大きな手ですね……。握力がすごそう……」

「んー、岩位なら砕けるぞ」


 モクルさんが握り拳を作ると腕の筋肉が膨張し、制服が弾けた。いや、制服もったいない。


「ありゃ、また破れた。まあ、今年もこれでいいか~」


 モクルさんはワイルドな男性のように袖なしの制服を着ていた。学生で袖なしの制服を着ている者がいるだろうか。スカートを履いているのも違和感だし。まあ、ズボンならズボンで弾け飛びそう。


「うわあ~っ、モクル先輩の筋肉すっごいです! 私もそんな筋肉になりたいです!」


 ミーナはモクルさんの体に憧れを抱いていた。いや、いや……、ミーナ。モクルさんの体になるのは種族の違いだから無理。

 というか、ミーナの肉体もモクルさんと同じくらいの力を秘めていると思うから。


「そうかっ! はははッ! やっぱり、獣族の女は強くてなんぼだからな!」

「いや、そうじゃないでしょ……」


 パットさんは普通に突っ込んでいた。仲が良さそうで何より。将来の私とミーナもあんな風になっていたらどうしよう。


「どっこいしょー。キララちゃん、ちっさいな。料理をしっかりと食っているのか~?」


 モクルさんは私の脇に手を入れて軽く持ち上げた。そのまま、膝の上に乗せて大きな手で体を握ってくる。後頭部に巨大な乳があり、ピロー枕なんか目じゃないくらい反発と柔らかさが完璧だった。このまま沈んで眠ってしまいそう。


「キララの腕、筋肉がなさすぎるだろ」

「あはは、私、筋肉が付きにくい体質で……」

「まあ、それなら仕方ないが、こんな華奢な体じゃこれからの学園生活について来られるのか?」


 モクルさんはよくわからない質問して来た。


「え……、筋肉がなかったら、生活していけないんですか?」

「ああっ。筋肉がなかったら戦えないからな!」


 モクルさんは満面の笑みを浮かべ、頷く。

 彼女は茶色の短髪で手入れをまったくしていないのか物凄くゴワゴワしている。顔が良いのでもったいない。

 ものすごく頼りがいのある姉御気質で、私の皿に具材を沢山突っ込んできた。そんなに食べられないっつーの。


「モクルさんはモークル族とでもいう種族ですか?」

「そうだなー。獣族の中でもモークルっぽい性質を持った種族だ。だから、乳がこんなにデカくなっちまった~! はははっ!」


 モクルさんは豪快に笑い、冒険者女子寮の中で一番デカい乳を見せびらかすように胸を張る。

 制服がミチミチと音を上げており、このままじゃ弾け飛びそうだ。


「も、モクル、落ちついて。また、上半身の服が破裂しちゃう。多くの男子の前でそうなってめっちゃ泣いていたじゃん」

「あ、あの時はちょっと力を入れ過ぎて……。って、泣いてないし!」


 パットさんとモクルさんは言い合い、口喧嘩していた。やはり、昔弾けた経験があるそうで、男子生徒も混ざっており恥ずかしい思いをしたという。なら。


「モクルさん、良い品があるんですけど付けてみますか?」

「良い品?」


 モクルさんは首を傾げ、私が何をいっているのかわからない様子だった。


 ――ベスパ、モクルさん用のブラジャーを作って。


「了解です」


 ベスパはモクルさんの周りをブンブンと飛び回り、乳の大きさを測定した。


「Mカップですね」

「ぶっ!」


 私は飲み物を吐きそうになり、モクルさんの大きさがぶっ飛んでいることがわかる。よく制服が耐えられたな……。それだけ伸縮性があるってことか。


「モクルさん、ちょっと移動しましょう。脱衣所が良いですかね」


 私とモクルさんは脱衣所に移動した。

 私の顔がすっぽり入ってしまいそうなほど大きなブラジャーがやって来た。モクルさんの力を考え、耐久性を増したブラジャーなので、そう簡単に壊れないはずだ。


「モクルさん、どうぞ」

「な、なんだこれ……。胸当てか?」

「はい。モクルさん専用の胸当てです。輪に腕を通しておっぱいを包むようにして付けてください。地肌にお願いします」

「あ、ああ、わかった」


 モクルさんは袖が破れた制服を脱ぎ、バカでかい乳を曝した。もう、ここまで行くと嫉妬心が沸かない。逆に、これほど大きな品はいらないなと思ってしまう。何でも限度があるんだな。


「ん……。おお、おおおおお~っ! す、すごいっ! 肩が軽い!」


 モクルさんは無地のダサいブラジャーを付け、頬を赤らめながら盛大に喜んでくれた。やはり、あれだけ大きな乳をぶら下げていたら肩がいたくなるのも必然だ。


「ありがとう、キララちゃんっ! 物凄く嬉しいっ!」


 モクルさんは私を抱き上げ、人形のようにむっぎゅ~っと抱き着いてきた。


「し、しぬぅぅ……」


 私はモクルさんに抱きしめられすぎて、窒息しかける。


「ああ、ごめん。でも、凄いな、この胸当て。こんなに体に合う品は初めてだ。私に合う品が人族の店になくて、ずっと布で巻いていたんだ。毎回面倒臭くてさ。これなら、すぐに風呂に入れる、苦しくもない!」

「そんなに喜んでもらえるなら、よかったです。伸縮性があるので筋肉の膨張にも耐えられますから、服が破れてもその胸当てが露出を防いでくれます」

「うぅ。ありがとう、キララちゃん。もう、あんな思いはこりごりだ……」


 モクルさんは橙色の瞳をウルウルと潤わせ、モークルのような小さな耳をピコピコと動かしていた。大柄で豪快な方といっても心は未だに一五歳の少女。男に裸を見られたら嫌に決まっている。


「獣族の体なんか見ちまった~、最悪だぜーとか、あんな女、女じゃねーぜとか、言われて。人族に舐められないように豪快な性格になっちゃって。でも、ほんとうはそんな見せかけで。うぅ……」


 モクルさんはしゅんと縮こまり、私の前でポツポツと呟く。


「そうですかそうですか。大変でしたね。冒険者女子寮の皆さんはモクルさんを嫌っていないと思います。それだけで十分じゃありませんか。きっと、モクルさんを好いてくれる男性も現れますよ。冒険者の男性は強い女性が好き……という訳でもありませんけど、頼りがいのある女性は人気がありますから」


 私はモクルさんをなぜか勇気づけていた。なぜ、私がこんな役目を。また、お節介なお姉さんになってしまった。


「キララちゃん、ものすごく大人だな。もう、母さんみたいな……」

「あ、あはは。面白い冗談ですね。私はモクルさんの後輩ですよー」


 私はモクルさんの頭をよしよしと撫でて立ち上がらせる。その後、食堂に戻った。

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