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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
ドラグニティ魔法学園に入学 ~王子のことが大好きな令嬢と大嫌いな令嬢編~

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冒険者女子寮の歓迎会

「うーん、でも、ミーナちゃん。バートンは一時間走り続けられる。ミーナちゃんは一時間ずっと走り続けられる?」

「う、うーん、難しいかも」

「バートンは早さも重要だけど、この体力の方が大切なんだ。だから、バートンに乗れたら体力を温存できるんだよ」

「なるほどー。そういう考え方も出来ますね」

「じゃあ、一緒にバートン術を……」

「結構です!」


 ミーナははっきりと断った。

 マルティさんも上手い誘い方だったが失敗し、落ち込んでいる。すぐに気を取り直し、私の方に視線を向けた。


「キララさんは……」

「私はバートン術に興味が無いといったらうそになりますけど、まだ、他の部活も見たいですし、私がしたい部活もありますから」

「そうだよね。まあ、強制じゃないし、兼部でも構わない。そもそも、部活として機能していないけど……」


マルティさんはドンドンと落ち込んでいく。


「もう! マルティ君がそんなに暗い表情だったら、入部したくても部長が頼りなさすぎて無理ってなっちゃうよ!」


 白いバートンに乗った綺麗な女性が近寄ってくる。どう見てもファニーと生徒会長のリーファさんだ。


「り、リーファちゃん……。いやぁ、ごめん。部長を見た覚えがないから」

「私は生徒会長しているから、乗バートン部の部長になれなかったけど、ほんとうは部長がしたかった。これくらい堂々としていたら部長っぽく見えるでしょ」

「なにを言っているのかよくわからないよ」


 マルティさんは切れのある突っ込みをリーファさんに与える。リーファさんもふふっと笑って気を良くしていた。ボケるのが案外好きなのかも。


「さ、今日も練習しよう! 最後の大会まで、あと五ヶ月しかない。出来るだけ沢山練習しないとね!」

「う、うん! 頑張ろう!」


 マルティさんは握り拳を作り、頷いた。そのまま、ダートのようなバートン場に入り、走り始める。


「私達はお邪魔かなー」

「そうだねー」


 私とミーナはマルティさんとリーファさんのラブラブな姿を見て、目を細めながらお爺さんお婆さんみたいな声を出した。

 まあ、ラブラブしているわけじゃないけど、すでに赤い糸で結ばれていそうな二人だった。もし、リーファさんの方に許嫁がいたらマルティさんは悲しいだろうな。


「さ、次はどこに行こうか?」

「うーん、とりあえず、ぐるっと回ってみよう」

「そうだね。学園の中にある施設を軽く見て回ろうか」


 私達は道があるところをずーっと走った。学園の園舎があって、周りに広い土地があるような地形だ。園舎を取り囲むようにいろんな施設があった。

 特に大きな闘技場は目を張る建物で、いろんな生徒が戦いや魔法を練習するために訪れる場所だという。そんな闘技場が何カ所もあった。大きさはそれぞれ違う。いろんな用途があるんだろうな。

 各部活の建物や寮が離れ離れの状態で建てられている。圧迫感が無いように考えて作られているようだ。

 広すぎて半日じゃ回り切れそうもない。途中で断念し、冒険者女子寮に戻る。


「はぁ~。疲れた~。もう、ずっと走っていたよ」


 ミーナはぐぐーッと伸びをして汗ばんだ笑顔を見せてきた。スポーツ少女その物で、腕をあげた時にちらりと見える腹筋がすでに綺麗に割れている。ほんと、凄いな……。男子でもそこまで割れていないでしょ。


「ん、キララ、どうしたの?」


 ミーナは私の視線に気づき、話し掛けてくる。


「いやぁ、凄くいい筋肉だなと思って」

「えぇー、私が? こんなの全然だよ~」


 ミーナは汗ばんだ半そでのすそを持ち、上に持ち上げる。八個に割れた腹筋が見えた。真っ白な肌という訳ではなく、日光で少々焼けた薄い小麦色なので、筋肉も十分映えて見えた。


「それで全然って」

「だって、お父さんとか男の獣族はもっとすごいよ。もう、岩みたいだもん」

「岩って。さすがに言い過ぎだと思うけど」

「言い過ぎじゃないよ。本当に硬すぎて叩きつけたら岩の方が壊れるとおもう」

「はは、肉体が兵器だよ……」


 ――よくルークス王国の人はビースト共和国との戦争で負けなかったな。それだけ、魔法の力がすごいってことか。獣族の脳筋具合がちょっと可愛いかも。それで繁栄している。魔法の力と肉体の力は均衡状態にあるのかな。


 私は勝手に妄想を膨らませていた。いい筋肉をした獣族の男性達が頭に浮かび、悶々と……するわけじゃない。そういう年齢でも趣味でもないのだ。まあ、フロックさんの肉体はたまに思い出すけど。


 私達は汗ばんだ服を着替えるため、部屋に戻る。

 現在の時刻は午後六時三〇分。午後七時から食堂で歓迎会があるようだ。どんな先輩がいるか楽しみ。だけど、フェニル先生の教え子たちだからなぁ、ちょっと心配だ。そもそも、フェニル先生はどこに行ったのだろう。


 私は『クリーン』で汗を消し、新しい服を着てにおいにも気を遣う。女の子の汗がにおわないと思ったら大間違い。トップアイドルの汗はフローラルの香りがするなど迷信だ。普通に同じ人間なので幹線から出た汗はにおう。

 汗のにおいが好きだといったら変態なので要注意。


「はぁ~。キララ女王様の服、ものすごくいいにおいがする~」


 フルーファは私の脱ぎ捨てた服に顔を埋め、尻尾をブンブンと振りまくっていた。どう見ても変態だ。


「あぁ~、キララの服、ものすごくいいにおいがする~。甘い感じ。花の蜜みたい~」


 ミーナも私が脱ぎ捨てた服に鼻を近づけ、尻尾をブンブン振りまくっていた。


「あぁ。キララ様の体から出た汗がしみ込んだ服が私の体に撒き着いている……」


 ベスパは私の服に身をくるみ、キモイ発言していた。こいつらは全員変態だ。

 全員燃やしてやろうかと思ったが、放火魔になる気はないので、そのまま放置。


 私だけ服を着替えてさっさと食堂に向かう。途中でミーナがおいついてペコペコと謝って来た。まあ、謝れる子はとても貴重なので、許すとしよう。フルーファとベスパは燃やそうかな。


 食堂に移動すると、三列の長テーブルが人数別に埋まっていた。一番奥が三年生、中央が二年生、一番近くが一年生といった具合。

 そのため、私とミーナは、一番近くの長テーブルで空いている椅子に座る。丁度一番前が開いていた。どうやら、皆一番前に座りたくないらしい。私は積極的に前に座り、優越感に浸る。


「うぅ。キララ、一番前は何か恥ずかしいよ。というか、皆貴族なんだから、平民の私達は後ろに座るべきでしょ」

「ちっちっち、ミーナ。ここはもう学園の中なんだよ。つまり、平民や貴族なんてほとんど関係ないの。私達は座りたいところに座って良いんだよ。胸を堂々と張っていれば舐められないで済む!」


 私はぺったんこな胸を張り、姿勢を良くして座っていた。


「ふわぁ~。疲れたぁ。ほんと、なんで私達がパーティーの準備しないといけないんだよ」

「仕方ないでしょ。私達が入学した時だって三年生の先輩が準備してくれたんだから、何も言えないよ」

「そうだけどさぁー。あぁーあぁー。一年のひよっこたちがいるー。ほんと、私達の時よりも少ないねー。皆、冒険者寮に入りたくないのかな?」

「普通に学者寮に行く女子が多いだけでしょ。私達の時とあんまり変わっていないって」

「いやいや、顔ぶれが全然違うでしょ。昔はもっと強気な者達が多かった気がするって」


二名の先輩はぺちゃくちゃ喋りながら一番奥の長テーブルに座る。


「むむむ……。むむむ……。むむむ……」

「なにを言っているか全然わからん。ちゃんと喋れや」


 すでに大食している先輩と完璧に突っ込む先輩。

 もう、先輩たちの印象がわかりつつある。でも、名前を覚えるのが大変そうだ……。

 すでに四名の三年生は座っていたので、今、目の前を通った四名で三年生は全員揃ったことになる。二年生はすでに全員座っており、礼儀正しい。

 冒険者寮だから、もっと横暴な人達ばかりなのかと思っていたが、そういう訳ではなさそうだ。


 ミーナと同じ獣族の先輩もいるから話し合えそう。


「んんっ、あー。皆そろったな。一番多い者達が冒険者女子寮に加わる新入生だ。今年は威勢がいい奴らが入ったぞ。喜べ!」


 フェニル先生は一番前の通路に立ち、食堂のカウンターにもたれながら喋る。


「誰が威勢良いんですか!」


 三年生の獣族の先輩が叫ぶ。威勢が一番いいのはあなただよ。


「そうだなー。そこにいる赤髪の子は威勢がいいぞー」


 フェニル先生は私達の近くにいるメロアに視線を送る。


「おお~。真っ赤に燃えている頭。強そうっ! 今度勝負しよう!」


血気盛んな三年生の獣族は笑いながら椅子に座った。


「まあ、ここは冒険者女子寮だ。簡単に言えば、冒険者に適性がある者達の集まりといったところだな。だが、必ずしも冒険者にならなければならないという訳じゃない。ただたんに気が知れた仲間が多いというだけだ」


 フェニル先生は食事前の挨拶と言わんばかりに頷きながら喋る。


「あー、今は一年、二年、三年で並んでもらっているが、夕食を開始したらばらばらになってもらう。皆、同級生とばかりつるみたがるから、別の者と話すように。どうしても話すのが苦手という者がいたら、私が話し相手になってやろう。一年は積極的に上級生と話せ。上級生は下級生と積極的に話すように。では、後は寮長のパットに任せる」


 フェニル先生は食堂から飲み物を受け取り、三年生の長テーブルがある場所に座った。


「えっと、じゃあ、今から私が手を叩くので話したことがない人と話すようにしてください。動かないと、夕食は抜きですっ!」


 何とも強引な歓迎会だ。コミュニケーション能力が皆無だったら地獄だぞ。でも、まあ、全員女の子だし、問題ないか。


「うぅ。私、大丈夫かな……」


 ミーナは少々怖がっていた。


「大丈夫。名前を言って、話し掛ければいいんだよ。三年生の獣族さんとか、丁度良いかも」

「な、なんか、噛みつかれそうで……」

「噛みつかれたら噛みつき返せばいいよ。喧嘩は駄目だけど、挨拶みたいなものなら、積極的にしないとね」


 私はコミュニケーション能力お化けなので、何ら心配していなかった。うん、ほんとうに初対面の人と話すなどアイドルとして何千回とこなしてきたので、どんとこいっていう気持ちだった。


「では、歓迎会、始めっ!」


 パットさんは両手を叩き、歓迎会が始まった。私は立ち上がって先輩たちに話しかけようとしたのだが……。

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