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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
ドラグニティ魔法学園に入学 ~王子のことが大好きな令嬢と大嫌いな令嬢編~

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バートン術部

「ガタイが良くて筋肉質な男……。身長が大きくてフェニル先生よりも強そう」

「あとあと、年齢なんか気にしなくて、案外優しいみたいな。きゃぁ~! 私、生徒に向って何を話しているんだ~!」


 フェニル先生は乙女のような可愛い声を上げ、私とミーナ、フェニクス、フルーファを引かせた。フェニル先生が乙女のような声をあげるなど、中々ないので驚いてしまった。


「フェニル先生は強面が好きなんですか?」

「うーん、なんか、見るからに優しそうな人が実は腹黒かったりするだろ。そういうのを見ているとなかなか信頼できなくてさ。顔が怖い奴って案外優しかったりするじゃん。そういうところにグッとくるというか。お見合いの絵を見せられると、皆、カッコいいんだけど、なんかそうじゃないというか」


 フェニル先生はうーんと悩みながら、考えこんでいる。理想が高いのか、少々普通の女性と趣味嗜好が違うから失敗しているのか。


「じゃあ、相手が平民でも良いって思っていますか?」

「私は問題ないが、父さんや母さんが何て言うか。兄さんも怒るかも」


 フェニル先生は色々可哀そうな立場だ。


「でも、フェニル先生は冒険者ですから、自由に生きても良いって言われているようなもの。それなら、何ら問題ない気もしますけどね。好きな人と一緒にいた方が人生は楽しいですって」


 ミーナは後頭部に手を当てて、尻尾を振り、思い人であるハンスさんのことを考えているのか、顔がにやけている。


「ミーナちゃんは好きな相手がいるのかい?」

「はいっ! もう、すっごくカッコいいんです! 私のことを物凄く可愛がってくれて~。私、その人のために強くなって冒険者になるのが夢です!」


 ミーナはフェニル先生に質問されて物凄い熱量を帯びていた。ほんと、恋する乙女は熱々だ。


「いいな~。私もそんな熱くなれる相手が欲しいよ~。どこかに私を熱くさせる男はいないかな~」


 フェニル先生はテーブルに肘をつき、ため息をつきながらオーエルみたいな悩みを打ち明ける。まあ、貴族で二〇代になっているのに結婚していないのは珍しいんだろうな。


「フェニル先生に許嫁はいないんですか?」

「いやぁ~、私に許嫁はまだ早いと父さんが言ってね。結局この歳まで男っ気ゼロなわけ。だから、父さんもメロアに許嫁を渋々付けたんだよ。まさか、王族とは思わなかったけどさ……」


 フェニル先生は苦笑いをうかべ、視線を逸らす。やはり、大貴族でも王族に入るのは珍しいんだな。

 そう考えると、カイリさんの奥さんは王族の第三王女らしいし、相当凄い。それなら、フェニル先生も王族の男性と結婚できるんじゃ。だって、レオン王子で第八王子なんでしょ。なら、間に七人もいる。まあ、第一王子と第二王子は無理だとしても、第三王子から第六王子まで行けば。


「王族と結婚するのはどう思いますか?」

「えぇ~、無理無理。あんなガッチガチの上下関係は嫌だよ。あと、規則も厳しいし、最悪。だから、メロアはちょっとかわいそうだなーって、思っているんだよ」


 フェニル先生は案外妹思いなのか、ため息が絶えない。

 あのメロアの性格が王族の中でやって行けるかといわれたら無理だろう。普通に、ローティア嬢の方が王族にお似合いだ。メロアもレオン王子と結婚したいわけでもなさそうだし、難しい話だな。これが貴族か。平民でよかった~。


 私は堅苦しい貴族生活より、貴族くらい金持ちになった平民の方が生きやすいと知った。親からの圧力も少ないし、自分で自由に動ける。位が高くなればなるほど見栄を張れるけど、張ってどうするのって感じ。

 私は私の生きたいように生きる。これが一番楽で幸せな生き方なんじゃなかろうか。ほんと、冒険者みたいな考えだな。


「フェニル先生、私、知り合いにフェニル先生の好みっぽい冒険者さんがいるんですけど、紹介しましょうか?」


 私は頭の中にいる、ゴツイ冒険者を知っている。今年で二〇歳くらいのはずだ。


「ええっ! ほ、本当かい! って、私は生徒に何を提案されているんだ。だ、だが、気になる……」


 フェニル先生は恋愛に飢えているのか、普通に結婚願望があるようなので、くいついてきた。フェニル先生に対して弱みを握るじゃないが、貸しを作るのも悪くない。


「じゃあ、ちょっと待っていてくださいね。似顔絵を描いてもらいますから」


 ――ベスパ。バッファー団団長のドルトさんの似顔絵を描いてくれる。出来るだけ本物調に。


「了解しました。映像を紙に転写します」


 ベスパは写真みたいなこともできるのか、模造紙に白黒のドルトさんの絵を映し出した。その品を私のもとに持ってくる。


「はい、フェニル先生。私の知り合いのドルト・パイソンさんです」


 私は似顔絵をフェニル先生に見せた。


「…………おうっ」


 フェニル先生の表情が一気に赤くなった。どうも、好みにドストライクだったらしい。久々の心の高鳴りに髪がふわりと浮いていた。瞳が赤いので、ほんと凄く熱く見える。


「え、えっと。ドルトさんかドルト君かどちらだろうか……」

「多分、フェニル先生の方が年上ですね。その方、年上の女性が好きなのでフェニル先生なら完璧かもしれません。身長は二メートル近くありますし、筋骨隆々で雄モークルみたいな体格です」

「お、おぉおおお˝っ!」


 フェニル先生は心からの叫び声を出した。似顔絵を胸にぎゅっと抱き、すでにときめている。


「ドルトさんは冒険者です。王都から南にバートン車で半月くらいかけて行った街のバルディアギルドに所属しているバッファー団と言う冒険者パーティーのリーダーをこなしています。Aランク冒険者パーティーなので実力はかなりありますよ」

「す、すごい。凄い凄い! だ、だが、会ってみないとわからないな。でも……」


 フェニル先生はドルトさんの顔を見ながら、すでにぽーっとしていた。Sランク冒険者の女性でも、やはりそうなっちゃうんだ。


「この冒険者に手紙を書いて会えるかどうか聞いてみてもいいだろうか……」

「いいに決まっているじゃありませんか。結婚していないはずなので、もしかしたら付き合えるかもしれませんよ」

「くぅううっ~。あぁあ~、いてもたってもいられん! さっさと手紙を書かなければ!」


 フェニル先生は食堂を飛び出して自身の部屋に走って行った。


「あはは……。恋する乙女は何とやら」

「フェニル先生も恋するんだね~。やっぱり、女の子は恋してなんぼだよ~」


 ミーナは両手を握りしめ、珍しく女の子っぽい雰囲気を醸し出していた。こんなに女の子っぽいミーナを見られるのも稀なので、目に焼き付けておこう。


「キララも、好きな相手が見つかるといいね」

「う、うん。そうだね……」


 ――精神年齢四〇を越えた私に好きな相手が出来ると思えないんだけど。出来るかなぁ。結婚相手が見つからなかったら、フロックさんが結婚してくれるって言っていた。ま、まぁ、その話も悪くないか。余らないから、気にしすぎる必要も無いな。


 私は楽観視しながら、恋愛について考えた。


「さて、昼食も終わった。午後からどうしようか?」

「学園の中を回るのはどう?」

「学園の中が広すぎて普通に迷子になりそうだけど。ベスパがいれば問題ないか。でも、歩くのは面倒だよな」

「じゃあ部屋でグーたらする?」


 ミーナはテーブルに突っ伏し、尻尾を揺らしながら呟いた。


「それももったいないな。よし、フルーファに乗って学園の中を回ろう」

「うえぇ。俺が一番疲れるじゃん……」

「つべこべ言わない」


 私はフルーファの背中に乗る。魔力体になっているフルーファは大きさを変えられる。そのため、通常の大きさに戻った。すると、体長二メートル越えの大型のウォーウルフの姿になる。もう、親玉クラスだ。これで、相手がいないのだから、相当モテないんだねー。


「ミーナは走る? 背中に乗る?」

「うーん、走ろうかな」

「じゃあ、一緒に行こう!」


 私とミーナは冒険者女子寮を出た。広すぎて出た瞬間からどこに行けばいいかわからん。


「まあ、いった覚えがある場所から見に行こうかな。ベスパ、バートン術部に向って飛んでくれる」

「了解です」


 ベスパはマルティさんが所属している廃部になっているバートン術部に向かった。


「フルーファはベスパを追って。ミーナは私に付いて来て」

「はーい」


 ミーナはピョンピョンと飛び跳ね、体を温めていた。もう、陸上部の選手みたいで、強者感がにじみ出ている。


「フルーファ、出来るだけ、揺れないように走ってね」

「はぁ、注文が多い女王様だ……」


 フルーファはなんだかんだいいながら、滑らかに走ってくれた。膝のクッションのおかげでガタガタ道もなんのその。荷台に乗っている時より快適だった。


「うわっ! デッカいウォーウルフ!」

「まじかよ。学生であんな魔物を連れている奴、初めて見た……」

「ウォーウルフってあんなに黒かったっけ?」

「魔力が多いと黒く変色するんだろ。なんか、超可愛い子が乗っているけど、テイマーか。ちょっと不遇だな」


 私達が通った道の近くにいた生徒達が私の姿を見て口々に呟いていた。まあ、なにを言われても私の鋼のメンタルを崩せる者は早々いない。そう自分に言い聞かせて訊いていないふりをした。


 ☆☆☆☆


 私とミーナはマルティさんがいると思われるバートン術部にやって来た。


「はあぁああっ!」


 マルティさんはイカロスと走っていた。ダートのような荒い地面を駆け、砂煙を巻き上げながら全力疾走。こけたら、ひとたまりもない速さだが安定しており、棒や傾斜などもろともしない豪快な姿が見えた。


「はぁ、はぁ、はぁ。よし、いい感じだ。明日は上手く行くといいな……」


 マルティさんはイカロスを止め、息を整える。


「マルティさんっ! こんにちは~」


 私はフルーファの上からマルティさんに手を振る。


「ああ、キララさん。ミーナちゃんも」

「マルティさん! 今のがバートン術という競技ですか!」


 ミーナは目を輝かせながら聞く。


「そうだよ。ルークス王国の国技……ではないけど、人気な競技なんだ。ミーナちゃんもやってみる?」

「私、バートンに乗るより、自分で走った方が速いので。バートンに乗る気が起きないんですよねー」


 ミーナはあはは~っと笑ってみせた。まあ、獣族の人外な身体能力に掛かれば、バートンよりも早く走れて軽やかな身のこなしが可能だろう。


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― 新着の感想 ―
受験後に王都から帰る時はバートンに興味持ってたよね? 獣族の考えは古くさいとか言って。考え方変わってない?
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