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『涙の出るパン』

騎士団を見た私たちは、最後に美味しい料理を食べたいと言うデイジーちゃんのお願いに応える為、ちょっとした料理屋さんへ来ていた。


「それじゃあ、私はパン屋さんに行ってくるから。デイジーちゃんたちは楽しんでね。私の用事が終わったら、すぐ近くのベンチで待ってるから。私の方は気にしないでいいからね」


「ありがとうございます、キララさん! それじゃあ行ってきます」


デイジーちゃんはお母さんと弟君を連れて、料理屋さんに入って行った。


――この料理屋さんは昔、お父さん達と一度来たお店だったので雰囲気も知っていたし、料理の値段も覚えていた。だから、料金的に考えて今のデイジーちゃんの手持ちなら十分食べられると思って選んだお店だ。


キララはデイジーちゃんたちを送り届けた後、オリーザさんのパン屋さんへ向かっていた。


「さてと…オリーザさんのパン屋さんもそろそろ空いてきた時間帯でしょ」


キララ達はパン屋へ直行する。


少しして何事もなく、キララ達はパン屋へ到着した。


「えっと…うん、もう夕方を過ぎた時間帯だから、人はいなさそうだね…」


――オリーザさん…大丈夫だったかな。前来たときは相当ひどい顏だったけど…。まぁパン屋さんが開いてるから大丈夫だよね。


キララはパン屋さんの木でできたレトロな扉を開き、中に入る。


「こんばんわ…って! オリーザさん、大丈夫ですか!」


扉を開けたすぐ近くに、オリーザさんはまたもや倒れていたのだ。


「えっと…オリーザさんですよね。何でお店の床で倒れてるんですか…」


「ん…んあ! 嬢ちゃん! やっと来てくれたか! もうずっと待ってたんだぞこっちわ!」


オリーザさんの大きな手がキララの肩を鷲掴みにする。


「ちょ…痛いです、オリーザさん…」


――ちょ! ベスパもストップ…。


なぜかよく分からないが、ベスパはオリーザさんの行動に反応したのか大量のビーを連れてパン屋を包囲していた…。


「キララ様に危害をもたらす者は、敵です…」


ぺスパのほわほわした雰囲気は一転し、目の色を真っ赤に変え、強くそして速く羽を動かしていた。


――だから、ベスパ…ちょっと落ち着いて。


「いや、すまない…。ここんところずっと働きっぱなしだったからな、ちょっと…疲れてたんだ」


「いえ…別に大丈夫です。前も倒れてましたけど…そのときも働き過ぎだったんですか?」


「ん…ああ、7日前のときか…。あのときは新しいパンを作ろうと思って色々試行錯誤したパンを食ったらあまりにも不味すぎて…ぶっ倒れちまっただけだ」


「不味過ぎて倒れるなんて…」


「あのとき運んでくれたのは嬢ちゃんだろ。助かったぜ、ありがとうな。それと嬢ちゃんの持ってきた牛乳…やばいなあれは…」


「え…もしかして腐ってましたか…。それは大変申し訳ございませんでした…」


「何言ってんだ、滅茶苦茶…美味かったに決まってるだろ。そのせいで半分は俺が飲んじまったんだからな。試飲しようと少量飲んだら止まらなくてよ…。パンに使う量が半分になっちまったぜ」


「はぁ…でも、腐ってなかったなら…よかったです…」


「それで…牛乳は今日も持ってきてくれたのか?」


オリーザさんは、早く出せ…と言わんばかりに迫ってくる。


「一応今日も持ってきましたけど…。今回は料金を頂きますよ」


「当たり前だ、何なら前の分も払わせてくれ。いや、払わないと俺の気が済まない!」


「え…えっと、そこまで言ってくださり誠にありがとうございます…。あの…お手数ですが、外の荷台に牛乳パックの入ったクーラーボックスがありますので、持って来てくれませんか。私の力じゃ持ち上げられないので」


「おう、力仕事は得意だぜ! 任せておきな!」


オリーザさんはお店から飛び出していき、私達の荷台から牛乳パックの入ったクーラーボックスを持ち上げると、お店の工房まで一気に運んでしまった。


「ふ~。いや~待ってたぜ、牛乳達…」


「それで…牛乳を使ったパンはできましたか?」


――今日、街に来た目的の一つである、牛乳入りパン…完成しているのだろうか…。完成していたら食べてみたいんだけど…。


「ああ、作ったさ…。だが、あまりの美味さに感動しちまってよ…。今までの15年間が…やっと報われたような…そんな気持ちになっちまった。もうこの感情を名前にしてやろうと思って『涙が出るパン』って売り出したら…即完売。初めの1日で全部牛乳を使い切っちまったから残りの6日間は、ずっと『あのパンは無いのか…あのパンは無いのか…』と言われ続ける日々…。そのお陰か常連さんも増えてよ~ホントに感謝してるんだよ、嬢ちゃんには…。」


「へ…へえ…そうなんですか…。つまり…今ここに牛乳の入ったパンは無いんですね…」


「ああ…すまねえな。嬢ちゃんにも食わせてやりたかったが…、なんせ作る元が無かったからな…」


「それじゃあ…仕方ないですね…。また今度買わせてもらいますよ…」


――私も『涙が出るパン』食べてみたかったな…。オリーザさんの作った普通の白パンでも涙を流してしまった私が食べたら、いったいどうなってしまうのだろうか…。でも…楽しみは後に取っておいた方がいいよね…。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!


もし少しでも、面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら、差支えなければブックマークや高評価、いいねを頂ければ幸いです。


毎日更新できるように頑張っていきます。


よろしければ、他の作品も読んでいただけると嬉しいです。


これからもどうぞよろしくお願いします。

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