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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
ドラグニティ魔法学園に入学 ~王子のことが大好きな令嬢と大嫌いな令嬢編~

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部屋の人との相性

「靴も、見ておかないとね」


 私達は踵が少しだけ高い靴を木製の箱から出す。


「うぅ。私、これ、苦手。ものすごく歩きにくいもん」


 ミーナはヒールを手に持ち、苦い顏をした。私も好きじゃない。昔のヨーロッパの方々は道路が汚いからそういう靴を履いていたそうだが、今はお洒落のために履く。

 この世界で、どのようにしてヒールが生まれたかわからないが、美意識が高い者がいたのだろう。


「まあ、辛いけど、美しく見られるために必要な靴なの。少しの間だけ我慢しよう。ミーナは脚が綺麗だし、ヒールが物凄く似合うよ」


 私はミーナのスラッとした脚に触れる。彼女の脚は毛が生えておらず、すべすべだ。筋肉が引き締まっており、無駄な脂肪が一切ない。太ももだって太くない。

 でも、この脚で蹴られたら木など簡単にへし折れる。人間に当たったら完全に背骨がおれちゃうね。


「私は、もっとがっしりとした脚が良かった。そうしたらもっと速く走れて、脚力も上がった。跳躍力だって……」

「ちっちっちっ。ミーナ。筋肉が付けばいいというものじゃないんだよ。人の体は不思議でね。一部に筋肉が付いていても意味がないの」


 ミーナは興味深そうに私の話に耳を傾ける。


「運動するとき筋肉全体を動かすから一部が発達している人より、全体が発達している人の方が何倍も力が出しやすいんだよ。ミーナの体は物凄くよく連動しているから強い攻撃が出せるし速く走れるの。だから、気にしなくてもいい!」


 私はミーナの頬に手を触れて彼女をはげます。まあ、落ち込んでいるわけじゃないと思う。


「何となく、キララが言っていることがわかる気がする。じゃあ、キララの力が弱いのは何で?」

「えぇ~、それは、私が乙女だから~」


 私は両手を重ね、弱々しい女の子を演出する。


「キララ様は魔力に全振りしているから筋力が必要ないんですよね」


 ベスパは両手を上げ、力こぶを作るもぺったんこ。彼も力はあまりない。だが、魔力で無理やり補っている。


「キララが可愛い子ぶるとなんか、イラッとする」


 ミーナはむっとした顔をする。


「まあー、女子はそんなもんだよ。別に不思議なことじゃない。あまりに可愛い者を見ると嫉妬しちゃうのが人の性。ミーナも私に嫉妬しすぎちゃいけないよ。人それぞれ良い所と悪い所がある。完璧な人間は本当につまらないからね」

「キララは何でも出来るけど、可愛い子ぶるのが面倒くさいね」

「そういうのをはっきり言えちゃうのがミーナの良い所であり、悪い所だと思う」

「えへへ~、私、嘘つくの苦手なんだよね~」


 ミーナは悪気の無い表情を浮かべ、後頭部で腕を組む。

 私達は明日の社交界(パーティー)に向けて準備が万全か見て回る。髪飾りや服装は完全にそろっており、問題ない。


「ふふん、ふふん~。明日のパーティーでこのネックレスを着けていこうかな。外していこうかな。いや、着けていかないと男達に目を付けられちゃうよな」


 私は姿見に映る自分の顔と首元に着いた質素なプラチナのネックレスを見る。フロックさんから受け取った品で、彼の母親の形見だそうだ。そんな大切な品を私に渡した理由は他の貴族から守るためらしい。ほんと、不器用な人~。私のこと、好きすぎかよ~。


「キララ、そのネックレスをほんと大切に着けているよね。誰かから貰ったの?」


 ミーナは私の方を見ながら訊いてきた。


「ああ、これ? これはねー。私の命の恩人から受け取ったの」

「えぇ。き、キララを助けられる人がいるの」


 ミーナはよくわからない所で驚いていた。


「なんで、そっちで驚くの」

「だって、キララを助けられる人が想像できなくて。なんなら、命の恩人って。つまるところ、キララが命の危機に瀕したってことでしょ。どんな状況なの?」

「うーんと、暴走した狂暴なブラックベアーに襲われた時とか、瘴気でアンデッド化したブラックベアーに襲われた時とか、五〇メートルくらいの巨大なブラックベアーに襲われた時とか……」

「わ、訳がわからん」


 ミーナは頭を抱え、混乱していた。


「まあ、気にしなくてもいいよ。とりあえず、私の命を何度も救ってくれた方から受け取ったネックレスなの。だから、私の一番大切な品なんだよ……」


 私はネックレスを手の平に乗せ、顔をほころばせる。なぜかわからないが、このネックレスを見ると無性にドキドキするのだ。いや、心が温まるといったほうが正しいか。

 何度、このネックレスを見て、努力を続けられたか。フロックさんが他のところで頑張っているのに、私が頑張らないでどうするという気持ちで自分を鼓舞し、ここまでやってこられた。ほんと、私のお守りみたいな品だ。


「キララにも気になる男がいたんだね~」


 ミーナはにやにやしながら呟いた。


「な、ち、違うよ! そんなんじゃないよ!」

「へぇー、そのネックレスを渡してくれた相手は男なんだー。いや~、キララも隅に置けないな~」


 私はミーナの口車に乗って喋ってしまった。なぜ、こういうところでは、彼女の頭の回転が速いのだろう……。


「うう。そ、そうだよ。男性だよ。でも、ただの知り合い。別に気にしていないもん」

「ふーん、そうなんだ。まあ、キララの気になる相手がどんな人か知らないけど、キララよりも強い男性っていうだけで興味がわくよ。いつか会ってみたいな~」


 ミーナは窓から空をみて、フロックさんの姿を想像している様子。


「まあ、生きていたらいずれ会えるよ」


 私だって会いたいし……。いや、別に、普通に会いたいというか、情報を交換したいだけであって、ちょっとお茶したいなという下心は一切ない。

 なんせ、彼は私にとって年下の少年だ。初めて会った時で一五歳。私は五歳だったが、すでに精神が二〇歳を超えていた。

 そのため、恋愛対象の男に見えるわけもなく、ただの好青年でしかなかった。

 でも、曲がりなりにも命を三度も助けてもらった。そんな経験、前世でもした覚えがない。本当に死ぬと思った時に毎度来てくれるスーパーヒーローみたいで、ちょっとカッコイイな、と思い始めた気もしなくもない。


「キララ様、先ほどから心拍素が上がり続けていますが、大丈夫ですか?」


 ベスパはブンブン飛びながら私に話しかけてくる。


「すぅーはぁーすーはぁー」


 ――ごめん。ちょっと取り乱した。いや、ちょっとさ……。ネックレスを見ていたら、フロックさんは無事かなと思って。


「フロックさんとカイリさんはSランク冒険者ですよ。簡単に死ぬわけがありません。五〇メートル超のブラックベアーと対峙しても生き残っていたんですから、実力は相当です」


 ――そうだよね。無事だよね。あの、ライトの魔法陣で確認できる?


「はい。魔法陣がちゃんと発動しているので、生きていますよ」


 私はフロックさんとカイリさんが生きていると聞いただけで胸が軽くなる。元から軽いが、もっと軽くなった。


 ☆☆☆☆


「うーん、お腹空いた!」


 ミーナは午前一一時頃、お腹がぐ~っと鳴り、ベッドから飛び上がる。


「じゃあ、メイド長が持たせてくれた昼食を得ようか」

「うんっ!」


 私達は部屋で食べてもよかったが、食堂に行って昼食をとる話になった。

 誰か話し合いをしている者がいるかもしれないと思ったのだ。話し合いに混ざれば、仲を深められる。なんなら、ちょっとくらい甘い蜜を啜れるかも。そんな悠長な気持ちで食堂に向かう。


 食堂は部屋を出て広間側に向って歩き、そのまま真っ直ぐいった場所にある。もう、寮の入口のすぐ隣で、結構広い空間だった。

 今日は昼に食堂がやっていなかった。夕食前に料理人が来るのかな。


「ん~、キララちゃん、やっと来てくれた」


 一人寂しそうにパンをかじっていたのはフェニル先生だった。

 こんな広い食堂で一人とか寂しすぎるだろ。


「フェニル先生、ずっと一人でここにいたんですか?」

「いやー、だれか来てくれるかなーっと思ったんだけど、だーれも来てくれなくてさぁ……」


 フェニル先生は露骨に落ち込んでいた。この人は怖そうに見えて、案外寂しがりの乙女なのかもしれない。


「まあ、皆、同じ部屋の者と楽しく会話しているのかもしれませんね」

「まあ、そうだと良いんだけどね……」


 フェニル先生は苦笑いを浮かべる。

 私はなぜ、苦笑いを浮かべているのかわからなかった。だが、すぐにわかる。


「あぁああああああっ! もうっ! 話にならない! どういう性格しているの!」


 食堂の外から物凄く大きな声が聞こえてきた。どうやら、メロアがぶちぎれたようだ。


「はぁ、部屋に入って一時間。ここまで持った方か……」


 フェニル先生は自分の妹だからか、メロアのことをよくわかっているようだ。

 彼女は癇癪もちなので、すぐに沸点が上がる。加えて貴族といえないような性格なので、周りの者と折り合いが付かなかったのかもしれない。


 フェニル先生はすぐに食堂を出てメロアがいる部屋に向かった。


「キララ、なんか、皆イライラしているよ。私がこっち! いや、私がこっち! とか、なんで、そんな臭い香水を着けているの! あなたの方が臭いわ! とか、もの凄い喧嘩が寮の中で繰り広げられているよ」


 ミーナは耳を動かし、少々怖がっていた。

 どうも、怒っているのはメロアだけじゃないようだ。私とミーナのように相手のことをよく知っている者と同室になれたら喧嘩が起きにくい。逆に、見知らぬものと我が強い貴族が落ち合ったらそりゃ、喧嘩になるよな。

 でも、ほとんどの生徒が貴族。貴族は自分の考えを曲げるのが嫌いな者が多い。

 位が同じ相手の意見を簡単に尊重するわけがない。

 知り合いかもしれないけど自分の方が、位が上だとか、マウントをとっていたのかもしれない。

 私とミーナは貴族じゃないので、よくわからないが、他の貴族に舐められたら負けという風潮があるのかも。


「まあ、私達は気にせずに昼食にしよう」


 私はミーナの手を握り『クリーン』を使って綺麗にした。

 私も手を合わせていただきますをすると同時に手を魔法で綺麗にする。


 長いテーブルが三列ほどあり、椅子がずらっと並べられているような見た目の食堂だ。軍隊の食堂に近い。質素でわかりやすかった。


 私とミーナは向かい合って座り、テーブルの上に大きめのバスケットを置く。開けるとパンや干し肉が入っていた。サンドイッチも入っており、ミーナが沢山食べるので配慮してくれたようだ。ほんと、優しい方だな。

 ミーナのために食べ物に沢山の魔力をそそぐ。


「はい、ミーナ。魔力が一杯パン」


 私は魔力をそそいだパンをミーナに手渡す。


「ありがとう!」


 ミーナは私からパンを受け取り、齧り付く。


「ふわぁ~、俺も腹が減った……」


 今まで荷台の中で寝ていたのか、フルーファが私のもとに歩いてきた。

 器に魔力水をみたし、与える。フルーファは魔族なので魔力さえ補充すれば生きていられるのだ。私の魔力は大量なのでコップ一杯分の水を飲めばお腹は満たされる。

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