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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
ドラグニティ魔法学園に入学 ~王子のことが大好きな令嬢と大嫌いな令嬢編~

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入学式当日

「いえ、別に気にしないでください。じゃあ、続きを話しますね」


 ルドラさんは小さな眼鏡を掛けなおし、一度だけ頷く。


「仕事が終わって屋敷に帰ろうとしたら西の森に知り合いがいっていると知り、追いかけて止めました。その後、鍛錬して西の森から出てきた後、屋敷に戻っている途中、王都に危険が迫っていると情報を得たものですから、フェニル先生にお願してくい止めてもらったしだいです」

「つまり、空を飛んでいたフェニクスを呼んだのはキララさんということですね?」

「はい。ドラグニティ学園長が言っていました。危険が迫っていたらフェニル先生を頼れと。だから、私は王都が危険だと思ったので、フェニル先生に話を通しただけです」

「……本当ですか?」


 ルドラさんは私の顔に嘘とでも書いてあるのがわかるのか、じーっと睨みつけてきた。


「あぁー、えっと。フェニル先生が手こずっているようだったので、プテダクティルのお腹の中に爆発物を仕込んで花火を打ち上げました……。いやぁ、綺麗な花火でしたね」

「…………」


 ルドラさんは私の頭に手を置き、力をぐぐぐぐっと入れてくる。


「あ、あのー、痛いんですけどー」

「キララさん、なに頭を突っ込んでいるんですか。そういうことはしないでと言いましたよね?」

「で、でも、フェニル先生が攻撃を当てられていなかったですし、あのまま、放っておいたら王都の中で死人が出ていたかもしれません。プテダクティルの攻撃を受けたら、普通の人は死んじゃうじゃありませんか」

「あれは騎士養成学校の者が用意したプテダクティルのようです。剣聖と勇者の力を知らしめるために呼び寄せた魔物で、切り刻む予定だったのにキララさんが爆発させるから。いや、今はフェニルさんが爆発させたということになっていますね。でも、神獣を切れたから今回の件は不問になっています。最悪、フェニルさんが極刑になっていたかもしれませんよ」


 ルドラさんは私の頭を握りつぶすかの如く、掴んでくる。


「す、すみません。ま、まさか、教会側の者が呼び寄せたとは。でも、どうやって」

「特定の魔物を引き寄せるフェロモンを放つ魔道具を開発したそうです。どうも、光方がぼんやりとしていて見ている方が心地よくなってしまう光だったそうです。魔物を引き寄せる魔道具なんて開発する必要があるのかわかりませんが、悪魔の力の可能性が大いにあります」

「そ、そんな。もう、すでに四体の悪魔が正教会に捕まっているということですか?」

「四体の悪魔。なぜ四体なんですか?」

「え、えっと、私が会った悪魔は二体ですけど、能力的にあと二体いると考えていいと思います。心を操る悪魔と暴風雨を起こす悪魔、他の者を狂わせるような力を持つ悪魔、今回の力を使った魔物を引き寄せる悪魔。もう、四体も捕まっている」

「そうなると、本当に正教会が世界をとる日が近いですね。なんせ、勇者と剣聖、賢者、聖女までそろっている。四体の悪魔も保持。いったい、どこの国を攻めるのやら……」

「悪魔は一体で国が崩壊するほどの力を持っているはずです。なのに、命令に従ってじっとしている。つまり、悪魔の力を制御できる者がいる。そんな化け物が人間にいるんですかね?」

「いるんでしょうね、正教会かドリミア教会、五大老の中に。そんな力を持っていたら明らかに噂されますから、上層部に揉み消せる人物でしょう。普通じゃ知る由もない者が持っていると思われます」

「はぁ。悪魔を操れる人間って、訳がわかりませんね。そういう者がいると仮定して動いたほうが私達も動きやすいかもしれません。逆に、その者がいる限り、悪魔が暴走して多くの者達を傷つけないということですもんね」

「そうですね。あまり相手を刺激しない方がいいでしょう。少しずつ着実に力をつけて、ここぞという時に捕まえる。または倒す必要があります。悪魔の倒し方なんて教本に書かれている銀剣と聖水、奇跡、などしかありませんから、ひそかに買い集める必要がありそうですね」

「銀剣ならまだしも、聖水を集めるなんて他の教会に知られたら絶対に怪しまれます。たとえマドロフ商会でも、難しいんじゃ……」

「ふふっ、こういう時こそ、周りの者を使うんですよ。王都から離れた場所のカトリック教会やプロテスタント達にひそかに溜めてもらうんです。少しの量なら正教会が気づく余地もありません。少しずつ少しずつ力をためさせて行けば、いつの間にか大きく膨らんでいるものですよ」


 ルドラさんの人脈チートがこんなところでも役に立つとは。戦う力はないけど、こういう部分だと物凄く役に立つな、この人。


「ルドラさん。相手に気づかれたら終わりです。本当に信頼できるものとしか取引しない方がいいと思います」

「残念ながら、本当に信頼できる相手などこの世にいません。たとえキララさんが相手でもすべて信頼できないんです。すべてを信頼したら商人とは言えません。逆に私達は裏切れない。なんて辛い職業でしょう。相手は私が裏切らないと思っている。そういう点でいれば、有利に立ち回ることも出来ます」


 ルドラさんが何を考えているのかよくわからないが、彼なら何か成し遂げてくれそうな気配がぷんぷんするので、私は八割方彼に託した。


「では、明日のドラグニティ魔法学園の入学式、頑張ってくださいね。私は仕事をしながら応援しています」

「なにか頑張ることがあるんですか?」

「まあ、周りに多くの貴族がいますし、精神的に疲れると思いますから、その点で頑張ってください」

「あぁー、なるほど。確かにそうですね。わかりました。頑張ります!」


 私はルドラさんと話を終え、寝室に向かった。


「うぅーん、うぅーん。どうしよう、明日が緊張して眠れないよ~!」


 ミーナは尻尾を抱き枕にしながらゴロゴロ転がり、眠れていなかった。


「そんなに怖がらなくても大丈夫。死んだりしないよ。まあ、相手を怒らせなければだけどね」


 私は苦笑いを浮かべながら、勉強机に座る。


「キララ、まだ勉強するの?」

「まあ、勉強というか、習慣というか……。私、魔法陣と字を描くのが下手だからさ、こうやって毎日練習しているの」


 私はベスパが作ってくれた紙に魔法陣を描き、文字を書いていく。毎日練習してやっと読めるような字が書けるようになってきた。


「へぇー。じゃあ、私も勉強しようかな……」


 ミーナは丸テーブルの方に移動し、椅子に座って教科書を開いた。八分もすれば。


「すぴー、すぴ~、すぴぴ~っ」


 ミーナはあっという間に夢の中に入り、ぐっすり眠っていた。勉強による安眠効果だろうか。まあ、授業中にああなったら怒られずに置いてきぼりにされるんだろうな。私が手助けしてあげないと、進級するのも難しいかも。


 私は日課を終え、昨日買った教科書を見ていく。やはり位が高い学園だ。入学試験と比べ物にならないくらい難しい内容ばかり。

 もう、日本の高校生を卒業したからといって油断していた私も手が抜けるような内容じゃなかった。

 まあ、数学や言語は問題なさそう。魔物学や薬草学などの暗記部門も問題ない。

 今の私は暗記がバカみたいに得意なので暗記問題は何のその。原理を理解する魔法学や魔術学、錬金術学などが難しそうだ。


 私はパラパラと教科書をめくり、その後、この内容で一年生かと少々不安に駆られる。ちょっとでも予習した方がいいかなと勝手に考え、魔法学や魔術学、錬金術学を勉強した。うん、楽しすぎて夜更かししてしまったよ。いつの間にか午前二時。


「や、やばぁ。楽しすぎて勉強しすぎた。これだから魔法なんていう中二病心擽る学問はこまるなぁ」


 私はさっさとベッドに潜り、目を瞑る。あっという間に眠りについた。


 ☆☆☆☆


 次の日……。

 ドンドンドン、ドンドンドンと大きな音が鳴っている。誰か、太鼓でも鳴らしているのだろうか。


「キララさん! キララさん! もう、午前七時三〇分ですよ! 起きてください!」


 メイド長のような女性の声が響く。


「うぅーん、ふわぁ~。キララ、七時三〇分っておいしいの?」


 隣で眠っていたミーナも今起きたのか、大きなあくびをしていた。


「うぅん。バナナは美味しいよ。七時三〇分は美味しくないかも」


 私も目を覚まし、あくびをした。午前七時三〇分。入学式の開始時刻は午前八時三〇分。


「うーん。これ、大丈夫かな?」


 私は寝ぼけた頭で考えた。準備と食事で三〇分は掛かるか。その後、レクーで移動して三〇分以上。あれぇ~、間に合わないのでは?


「ふわぁ~。キララ様、おはようございます。現在の時刻、午前七時三二分になったところです。残り五八分後に入学式が始まります」


 ベスパは花から飛び立ち、あくびをしていた。


「どわっ! あわわわ、初っ端から遅刻はさすがにまずいよっ! ミーナ、顔を洗って、歯を磨いてさっさと着替えて!」


 私は寝間着を脱ぎ捨てキャミソールとパンツ一丁の姿になり、大慌てで部屋の中を賭け回る。


「め、メイド長さん! 朝食は荷台の中で食べるのでバスケットの中に詰めておいてください!」

「わ、わかりました!」


 メイド長さんは私の話を聴き、すぐに動いてくれた。


「うぅーん。お母さん、まだ眠たい……」


 ミーナは二度寝に入ろうとした。だが、尻尾を掴んで無理やり起こす。


「ベスパ、荷物を荷台に運んでおいて。レクーと荷台を玄関前に!」

「りょ、了解です」


 ベスパは私達の荷物を部屋の中からかき集め、荷台に詰め込んでいく。その後、レクーと荷台を繋いで、玄関まで運んでくれた。

 私とミーナはドラグニティ魔法学園の制服を着て、姿見で服装の乱れを確認。黒っぽいブレザーで、胸もとの赤いリボンが決まっている。ミーナはあくびをしながら、ぐっちゃぐちゃな服装だった。

 私がパパっと整え、部屋を飛び出す。服を着替えていた時間は八分。

 すでに午前七時四〇分。入学式まで五〇分を切った。

 だが、問題はドラグニティ魔法学園近くの道が混雑していないかということだった。まあ、十中八九混雑している。見なくてもわかる……。だって、ビー達の情報がベスパから伝わってくるから。このまま行くと渋滞に巻き込まれて多くの者がドラグニティ魔法学園の入学式に間に合わない。

 でも、きっと対策してくれているはずだ。騎士の馬に子供を乗せてくれるとか、親は後から入って来られるようにするとか。まあ、そういう救済措置があると願って私達は玄関に向かう。

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