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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
試験本番 ~賢者と聖女も現れたけど、気にせず受験する編~

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騎士育成学校の入学式を祝う花火

 王都の西門にやって来た頃、真っ赤な鳥が空に飛びあがった。もう、あんな燃えている鳥は一体しか知らない。


「おぉおっ~、フェニクスだっ! すげえっ! 俺達、運が良いなっ!」


 ライアンは両手を上げ、空に飛びあがるフェニクスを見ていた。確かに、ものすごく神々しい。あれが神獣と聞かされたら、そりゃそうだろうとなる。


「神獣を見られるなんて……。でも、いったい誰が操っているんだ?」


 ライアンとパーズはフェニル先生がフェニクスを操っていると知らなかった。まあ、他の国の人だししかたがない。Sランク冒険者のフェニルは知っているかもしれないがドラグニティ魔法学園にいるとは思っていないのだろう。


 フェニクスは東方向に飛び、火の粉を空に散らしていた。もう、彗星の尻尾のような炎が残っており、神々しいにも程がある。


「キララ様。フェニル先生に連絡しました。今、東に向かって飛んで行っています」

「はぁー。よかった……。これで、プテダクティルの被害は出ないね」


 私が安堵したころ、何かが空に飛んだ。次元が切り裂かれるような……、よくわからない亀裂が空中に入るとフェニクスの左翼が切れた。


「え?」


 大空を見ていた私達は頭に疑問符が浮かんだ。なぜ、フェニクスの左翼が切れたのか。全く理解できない。


 フェニクスは回転しながら地上に向かうも途中で翼を生やし、空を再度飛ぶ。あれが普通の魔物だったら完全に地上に落下していたが、神獣のフェニクスだったから事なきを得た。


 ――今、あんな攻撃を放てる者がいるとしたら騎士養成学校にある闘技場に集まっている者の誰かだよね。敵襲だと思って切っちゃったのかな?


「見ていたビーの報告からすると、学生が剣を振るったようです。切れるのか試したみたいですね。近くにいた白いローブを着た者が切れるかどうか煽ったみたいです」

「えぇ。あの距離を切れちゃうって相当な化け物だな。絶対普通の人間じゃない。もしかしてアイク?」

「でしょうね」


 ベスパは苦笑いを浮かべながら頷いた。アイクの剣はすでに神獣も切り割けるほどの域に達しているようだ。スキルを貰ってからまだ二年しかたっていないのに。成人まであと三年でどれだけ強くなる気なんだ。あんなの国家転覆とか余裕じゃん。


「フェニル先生は無事?」

「はい。問題ありません。驚いていましたが、騎士養成学校の上を飛んだのがまずかったと反省しています。自分が悪かったので、フェニクスに謝っていますね」

「上を飛んだものは無条件で攻撃するって……」


 私は苦笑いを浮かべながら、王都の中に入る。そのまま、フェニル先生がプテダクティルを対処してくれると信じながらライアンとパーズを宿まで送る。


「はぁ~。今日は良いものが見れたぜ。ありがとう、キララ。明日は学園で会おう!」


 ライアンは名残惜しそうにレクーの頭を撫でて胸を張る。


「わかった。また、明日ね」

「何度もごめん。ライアンの奇行を許してほしい……。こいつは昔からこんな性格なんだ」


 パーズはライアンの父親のように何度も頭を下げる。


「うん。別にもう怒っていないよ。でも、また同じようなことをしたら大量の虫を体に纏わせる。それが嫌なら、もう危険な行動は起こさないこと」

「はーい!」


 ライアンは子供みたいな返事して笑っていた。何とも生意気なガキンチョだ。

 ライアンとパーズは共に宿の中に戻って行った。


 私はレクーと共にマドロフ家に戻ろうとしたのだが。


「キララ様、フェニル先生が結構苦戦しています」


 ベスパはビー達の情報を脳内で処理し、私に伝えてきた。


「え? なんで。Sランク冒険者のフェニル先生が苦戦するってどういう状況」

「どうも、普通のプテダクティルじゃないようです。新種の可能性があります。先ほど、剣聖に左翼を切られ大量の魔力を失った影響も考えられます。あの傷を治すのはフェニル先生の魔力を使うようなので、体力を大きく消耗した模様」

「なるほど。あんな巨大な翼を生やす魔力を補ったら、疲れるよな。その新種のプテダクティルがフェニル先生でも倒せないくらい強いの?」

「いえ、そういう訳ではなく、恐ろしく速いようです」


 ベスパは空を見上げた。ドッ! っと弾けたような突風が上空から聞こえた。もう、ジェット機が通過していったような音で、普通の速度じゃない。


 プテダクティルは落下する速度で音速を超える。でも、通常の飛行で音速を越えているようだ。そんな魔物に攻撃を当てられるのか?

 バットを時速一六〇キロメートルで飛んでくる野球ボールに当てるのも難しいのに。

 さすがにSランク冒険者でも苦戦すると考えられた。


「ありゃ、大変だ……。でも、あんな速度で飛んでいたらプテダクティルの方も対象がまともに見えていないはず。ただ飛んでいるだけに過ぎないよ。フェニル先生ならすぐに対処できるでしょ」


 私はフェニル先生に頼った。だって、Sランク冒険者なんだもん。化け物揃いの冒険者で八組しかいない。その中で女性に加え、冒険者パーティーを作らずに一人で最高ランクに到達している人だ。なら、問題ないでしょって思ってもいいでしょ。


 今、空を見上げている者が何人いると思っている。私が空に飛んで行ったら多くの者に見られてしまうし、最悪、正教会やドリミア教会の者に目を付けられる可能性だってある。

 手を貸したいのは山々だが、簡単に手出しできない。でも、近くに移動して狙う必要がない技を私は持っている。


「ベスパ、プテダクティルに八回食われて爆ぜてくれる?」

「もちろんです! 綺麗な花火をあげてみせましょうっ!」


 ベスパは、ロケット花火のようにぱっひゅーっ! と空に舞い上がる。私の目だとはっきりと見える。でも、他の者にとっては小さすぎて見えないだろう。

 今、プテダクティルは王都の真上をブンブンと飛んでいる。ジェット機が飛び交っているようだ。


 私はよく衝突せずに飛び回れるなと思いながら、ベスパの尻に『転移魔法陣』を展開した。

 一キロメートルまでしか距離が延びないので、途中に他のビーも挟む。そうすれば、電波を届ける電線のような役割を果たし、距離が延びる。上限はおそらくない。


 私は地上でベスパがプテダクティルの体内に入る瞬間を見計らっていた。私の眼はビーがよく見える。ベスパは特によく見える。どれだけ、小さかろうと魔物の体内に入ろうと感覚で分かるのだ。

 ベスパがプテダクティルの口内に入り込み、実体化した瞬間を感知する。


「『ゼロ距離爆撃』」


 私は指先に展開した『ファイア』の魔法陣と『転移魔法陣』に魔力を流し、ベスパの尻に『ファイア』をぶつける。その瞬間、空気を震わせる巨大な爆発が起こり、プテダクティルの肉体が弾け飛んだ。

 これ見よがしにフェニル先生が肉塊を燃やし、灰にする。巨大な塊を灰に出来る火力って何? と思いながら、私は二発目、三発目、四発目と豪快な花火を空に生み出した。

 もう、フェニル先生が爆発を起こしているかのように見て取れる。私としてはとてもありがたい。


 正教会やドリミア教会の者達も、Sランク冒険者のフェニル先生ならあれくらいするだろうなという考えを少なからず抱くはずだ。そのフェニル先生の顔はどんな表情しているかわからないけど。


「うぉおおおお~っ! いいぞ~っ! もっとやれ~っ!」

「勇者様! 剣聖様! 万歳っ! 万歳っ!」

「ルークス王国、万歳っ! 万歳っ!」


 フェニクスとフェニル先生対プテダクティルの戦いは王都民全員が見ていた。なんせ、国の真上で戦いが行われているのだ。

 戦闘機同士の戦いが国の真上で行われている状況と同じ。多くの国民がハラハラドキドキしながら、国を守ってくれているフェニクスの戦いに歓喜している。

 騎士養成学校の入学式の日なので催し物とでも思っている人が多いらしく、激しく声を荒らげる者が続出した。


「ふぅ……。ベスパ、最後の一発。ぶちかますよ」


 私は魔力を指先に溜め『ファイア』と『転移魔法陣』に高密度の魔力を押し込む。

 大声を出したい気持ちだったが、他の者に聞かれると不審がられるので、とても自然に魔法を無詠唱で放つ。

 空中で飛んでいたプテダクティルがゆっくりと停止し内部が輝く。

 一瞬にして光がルークス王国の王都全体に広がると内部から膨張し、空中にソニックブームの波紋が広がるほどの大爆発が起こる。

 その数秒後、建物の屋根を吹き飛ばすかの如く強烈な突風が吹き、プテダクティルの肉塊が一片も残ることなく、消えた。


 空に巨大な黒煙が巻き上がており、突風でかき消されると真っ青な空が広がる。雲一つない綺麗な空は何とも美しく、むなしい。

 でも、一頭の巨大な真っ赤な鳥が羽ばたいており、コーーーーーーっと鳴き声を上げると、王都全域からウオオオオオオオオッという叫び声が鳴った。


「はは。王都の人って一体感が半端ないな。こんなところでライブをしたら盛り上がるだろうなー」


 私はちょっと楽しそうだなともいながら、他の教会の者達が黙っているわけがないと思い、われに返る。


「ふぅー。いい爆発でした。こんな心地よい爆発もなかなかありませんよ」


 ベスパは私の頭上に戻って来た。もう復活したようだ。


「お疲れ様。八回爆発した気持ちは?」

「いやー。やはり私は爆発するために生まれてきたんだなって……」


 ベスパは胸に手を当て、しみじみしていた。確かに爆発するために生まれてきたなんて、嫌に決まっているよな。


「皆、演出だと思ってくれている。フェニル先生も無事で済んだし、これでよかったよね」

「はい。完璧だと思われます。ただ……フェニル先生の顔はとても引きつっていました」

「あはははー。なにか言われても無視しようかな……」


 私は何も知らないとしらを切ろうと思う。だって、そうしないと何を言われるかわかったもんじゃない。別に目立ちたいわけじゃないのだ。なんなら、目立ったらいけない人間なので、じっとしていなければならない。

 マドロフ家にさっさと戻る。すると、多くの人達が庭に出て空を見上げていた。


「あっ! キララ~! さっきの見てた? すごかったよね!」


 私のもとに駆け寄って来たのはミーナだった。服装はドレス姿。地面にすそが汚れないようにしっかりと持ってヒールを履いた状態で走ってくる。よくその速度で走ってこけないな。


「み、見てた見てた。凄かったね」

「あの赤い鳥ってフェニル先生のフェニクスだよね! 空に八発の巨大な爆発を起こしてたっ! すごい光景を見ちゃったよ!」


 ミーナの表情は、とてもご満悦。戦いが好きな種族だから、仕方ないか。

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