デイジーちゃんの家族・2
「す…凄い。あれだけ動いてるのに全く息が切れてない。これが騎士団…」
デイジーちゃんは騎士団を凝視している…。
――実際に騎士を見るのは私も初めてだけど…なんて言うか…この世界でも戦いとかあるんだな…って思っちゃう。そう言えば、『魔王が復活したんじゃないか』って噂も聞いたことあるし。それでピリピリしてるのかも…。
「キララさん、凄いですね。あんな強そうなのにまだ訓練してますよ!」
デイジーちゃんは相当興奮しているみたい…。
デイジーちゃんの表情を見ると…地球で言うプロレスが好きな女子、ボクシングが好きな女子、の表情をしていた。
私はあまり殴り合ったりするのは見てて楽しくないけど…。
「デイジーちゃんは騎士団が好きなの? もしかして強くなりたいとか、そう言う夢があるのかな?」
「ん~、どうなんだろう。私にもよく分からないんですけど…強かったらいいなとは思います。だって村の皆を守れるし、それに…すごく強かったらお金持ちになれるですよね?」
「ん?」
――強かったらお金持ちになれるのだろうか…。まぁ、冒険者として生活して行くという方法もあるし…王様の護衛として働くってこともできるのかもしれない…けど。私は力より知能の方が大切だと思うんだけどな…。
「すみません…うちの子、お爺ちゃんの影響を強く受けて育ってきたもので…」
「お爺ちゃん…」
――ああ…思い出した…。そう言えばデイジーちゃん、お爺ちゃんの心配もしてたな…。私に強くなればお金持ちになれるって聞かれてもな…よく分からないし…。でも、何か答えないと…。
「デイジーちゃん、強さだけじゃお金持ちにはなれないと思うよ。確かに強さも大事だけど、力を使う頭も必要だと思うんだ。だから、強さに固執するんじゃなくて、もっといろんな考え方をした方がいいと思うよ…」
「ん~~…よく分からないです…」
「はは…そ、そうだよね…」
「キララさんは…大人っぽい考え方をするのですね…。…まだ小さいのに…」
「え、いや…その、私もお父さんに言われたんですよ。『強すぎるスキルや力は身を亡ぼす』って。だから、『スキルや力を使いこなせる頭が必要なんだ』って…そう教わったんです」
「まぁ、いいお父さんですね」
「は…はい…」
――ごめんなさいデイジーちゃんのお母さん。私が勝手にそれっぽい考えを言っているだけです。
「ん~、つまり…強くなって、頭もよくなればお金持ちになれるって話ですよね…」
「ま…まぁ、そうなんじゃないかな…」
――結局お金持ちになりたいのね…デイジーちゃんは。
「それじゃあ私は強くなって、頭もよくなります! それでお金持ちになって、お母さんとルイを楽させてあげるんです!」
「それじゃあ、頑張らないとね。魔法や剣の練習と勉強、今から頑張ればきっとすごい結果になって帰ってくるよ」
――まだデイジーちゃんは7歳なんだ…今から頑張れば…もしかしたらほんとにお金持ちになってしまうかもしれない…。でも…10歳になったら教会の聖典式でスキルを貰うんだよね…、そのスキルが強ければいいけど…ゴミみたいなスキルだったら…きっと悲しんじゃうんだろうな…。
「よ~し! ネ―ド村に戻ったら、皆の仕事を手伝って力を付けるぞ! 勉強は…えっと…えっと…どうしよう…勉強を教えてくれそうな人がいないよ!」
「まぁ、そこは私に任せておいて。ぴったりの相手を紹介してあげるから」
「本当ですか、キララさん! それじゃあ、ますます頑張らないといけないですね!」
デイジーちゃんの眼は燃えている。
まるで山火事のような業火につつまれているのだ。
――そう言えば…勝手に話しを進めてしまっているけど…、デイジーちゃんのお母さんは何も言ってこないのかな…。私のお母さんならすぐさま反対して止めようとするんだけど。
「お母さん! 私、お母さんとルイのために頑張るね! きっと大金持ちになって、2人に楽させてあげるから!」
「ありがとうね…デイジー。でも、お母さんは貴方にも幸せになってほしいの。お母さんとルイの未来を思ってくれているのは嬉しいけど…、それでデイジーの人生を無駄にはしてほしくないわ。だから、お母さんあなたの意見には反対しない…どんどん好きな遊び、辛い体験、悲しい経験、をいっぱいしてほしい。私たちのお家は貧乏だけど…お母さんはデイジーとルイがいるだけでスッゴク幸せなの…。これ以上の幸せはもういらないわ。貴方は何にも縛られないで生きなさい…」
「お母さん…」
――うんうん…いいお母さんだな~。中々娘の未来を『好きなように生きなさい』って言ってくれるお母さんはいないよ。デイジーちゃんがこれからどういった選択をするのか…ちょっと楽しみになってきた…。
デイジーちゃんは、お母さんの話をどれだけ理解しているのかは分からない。
でも、なにか感じた思いはあると思う。
デイジーちゃんはまだ7歳だけど…あと8年でこの世界では成人なのだ。
そう考えると、お母さんの考えを聞くのは出来るだけ早い方がいいだろう。
その点、デイジーちゃんはラッキーだ、こんなに早くお母さんの考えを聞けたのだから。
15歳までの時間なんてあっという間だ。
日本ならまだ中学3年生だよ…そんな子が厳しい社会に出て行かなきゃいけない世界なんだから、いっぱしの知識は必要だよね。
誰かのために生きるっていうのも美しいけど、自分のために生きて…ついでに誰かを助けるという人生も美しい…。
きっとデイジーのお母さんはデイジーちゃんがどんな選択をしたとしても、笑顔で優しく頭をなでるのだろう…。
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