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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
試験本番 ~賢者と聖女も現れたけど、気にせず受験する編~

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喧嘩する二人

「さて、ベスパ。ライアンとパーズはどこにいるの?」

「私が先導します」


 ベスパはレクーの前を飛ぶ。

 私とレクーはベスパに付いていき、西の森に入る。ものすごく深い森でプルウィウス連邦付近まで広がっているらしい。

 そんな高大な森の中で迷ったら大変危険だ。少し道を離れて別方向に行ったら遭難する可能性だってある。森の中は魔物もいる。危険極まりない。

 一二歳の少年二名だけで、森の中に入るなんてバカとしかいいようがない。幸いなことにビーを付けていたおかげでベスパが信号を得られるため、遭難しない。発信ビーといっているが、ほんと便利だな。


「おっら!」


 橙色の短髪が特徴的なライアンはポヨポヨと跳ねているスライムに新品の剣を突き刺した。中央の核が割れ、水疱が崩れる。


「はぁ……。スライムを倒しても面白くねー。どうせなら、ブラックベアーとか出てこねえかな。この前の実技試験で戦った時、惜しいところまで行ったのに、負けちまったから悔しくてよ」

「ライアン、そんな物騒なこと言わないでよ。本当に出てきたらどうするの!」


 青色の短髪が特徴的なパーズはライアンに叫んだ。全くだ。ライアンの発言のせいで、ブラックベアーが出てきたらどうする。

 私は後方からそんなふうに思い、ビー達に辺りを警戒させた。ブラックベアーはいないとのこと。そのため、いきなり襲われる心配はなかった。


「ちょっと、二人共。こんなところで何をしているの」


 私はライアンとパーズのもとにレクーに乗った状態で姿を現した。


「……で、でっけぇ」

「……か、カッコいい」


 ライアンとパーズは私の姿……、ではなく、レクーの姿を見て、口をぽかーんと開けていた。


「おーい、二人共、私の話をちゃんと聴いてる?」

「あ、あぁ。聞いてる聞いてる。俺達が滅茶苦茶カッコいいって話だろ……」

「う、うん。僕達は滅茶苦茶カッコいい……」

「はぁ……」


 少年の二名はレクーの姿に釘付けで、目をキラキラと輝かせていた。まあ、最近まで小学生だったような子供達に説教しても意味ないか。


 私はレクーから降りてサンドイッチが入ったバスケットをレクーのサイドバックから取り出す。


「お腹が空いていると思って持って来たけど、一緒に食べる?」

「「食べるっ!」」


 ライアンとパーズは両手を挙げて返事した。都合がいいことはしっかりと聞いているんだ。ガキンチョどもめ。

 ライアンとパーズ、レクーと共にベスパが見つけた森の中の開けた土地に移動する。


「もう、昨日から何も食ってなくて腹ペコなんだよー」

「剣を買ったらお金が無くなると思って料理が買えなくなっちゃって……。本当に助かります」


 パーズは頭を下げながら感謝してきた。


「二人共、なにしに森の中に入ったの。昨日は子供が危険なことをしたら駄目と言ったでしょ」


 私はライアンとパーズに大人らしく説教する。


「うぅ……。しょ、食材を探しに来たんだよ。ほ、ほら、腹が減っていたら動けないだろ」


 ライアンはお腹を摩りながら視線を反らした。


「ご、ごめん。僕は止めたんだけど」


 パーズは、自分は悪くないと言いたげな態度をとった。


「両者共に言い訳はいりません。もし、森の中で遭難していたらどうする気。そのまま、森の中で魔物に襲われて食べられていたかもしれない。王都の近くでも危険な場所なんだよ! それぞれの両親に二人の訃報が届いたら相手がどう思うか、わからない年齢じゃないでしょ」


 私は弟に説教するように声を張り上げ、心に響かせる。


「「うぅ。すみません……」」


 ライアンとパーズはペコペコと謝ってきた。

 私は出来る限り説教した後、開けた土地に茶色のシートを敷き、ピクニック気分に戻る。


「はー、もう、説教は終わり。今から、楽しい楽しいピクニックの時間ね」

「「ピクニック……?」」


 ライアンとパーズは首をかしげる。ピクニックは聞きなれない言葉だったようだ。


「まあ、遠足って言ったらいいかな。自然の中で昼食を得るって意味もあるかも。まあ、色々な意味合いがあるよ。ほらほら、さっさと座って」


 私は靴を脱ぎ、茶色シートの上に乗る。ライアンとパーズも招き入れ、パンと干し肉のサンドイッチをバスケットの中に入っていた籠から取り出した。


「うお~っ! 美味そうっ!」


 ライアンは目を輝かせ、サンドイッチを見つめる。


「ちょ、ちょっと待って。そんなに慌てたら駄目だよ」


 パーズはライアンの体を掴み、とどまらせる。ライアンに食べさせたらすぐに無くなってしまうとでも思ったのだろうか。


「とりあえず、二人共手洗いうがいをしてね」


 私は『ウォーター』でライアンとパーズの手と口の中をゆすいでもらう。その後、クリーンで追い打ちをかけ、病気の元を綺麗に落とした。これで、お腹が痛くなったりしないだろう。


「じゃあ、食べ物に感謝を込めて」


 私は両手を合わせて神に祈る。


「あ、ああ。俺達も」


 ライアンとパーズも私と同じように両手を合わせ、神に祈っていた。プルウィウス連邦も神に祈る習慣があるのかな。

 サンドイッチを分け、私達は昼食を得る。


「うっめぇ~。やっぱり、うめえ~っ!」


 ライアンはサンドイッチを一瞬で平らげ、二個目に手を伸ばす。八個ほどあるので、別に構わない。


「はぁー。やっと真面な料理が食べられた……。ありがとう、キララさん。助かったよ」


 パーズはお淑やかに食事をこなし、少年なのに礼儀正しかった。


「いやいや、私も丁度昼食にしようとしていたところだから、気にしないで。冒険者ギルドの食堂で買ったから普通のお店で買うより安かったから」

「え……。じゃあ、キララは冒険者なのか?」


 ライアンは口周りを汚しながら訊いてくる。


「冒険者じゃなくて、テイマーの資格を持っているの。だから、冒険者ギルドで買い物ができるんだよ」

「ふぇー。なるほど。テイマーか……。その年齢で資格を持っているなんてすごいな。俺は父さんの息子なのに初級騎士の階級も持ってない」


 ライアンはずーんと落ち込んでいた。お父さんがすごい騎士なのかな。別にお父さんの力を全て受け継げるわけじゃないから、落ち込む必要はないと思う。私だってお父さんの身長を受け継げなかった。お母さんのおっぱいだって……。


「まあ、落ち込まないでよライアン。成人したら初級騎士になれるって」

「けっ……。免許皆伝は余裕だな。ま、寝たら全て覚えられるんだもんなー。そりゃ、ずりーぜ」


 ライアンはパーズの方を向きながら煽った。


「な……。僕は毎日鍛錬してたからだよ。ライアンはさぼっていたでしょ。そんなんだから、初級騎士にもなれないんだよ!」


 パーズはライアンに煽られて青い瞳を血走らせる。


「なんだとごらっ! いつもびびって動けないくせにっ!」

「ななっ! そっちだって、頭が悪すぎてドラグニティ魔法学園に受かったのは親のコネだろっ!」


 ライアンとパーズは取っ組み合いになり、ばっと離れて剣を引き抜いた。


 ――おいおい、少年ども。剣を向け合うのは危ないんじゃないかい。


 私は心の中で少々ビビっていた。子供同士で喧嘩して、剣を向け合うなど、日本なら包丁を取り出して向け合わせているようなものだ。


「二人共、やめなさい。喧嘩しても意味ないよ。現実は昔の自分の延長線上にいるの。今、何を言っても無駄。これからの自分が変わらなきゃ。喧嘩するなら剣を振っていた方がましだよ」


 私はサンドイッチを食しながら子供達を諭す。喧嘩して失明なんてしたら大変だ。体の切り傷ならネアちゃんで縫合できるからよしにしても、目は無理だ。


「う……。キララの言葉の刃が胸を貫いちまった……」

「サボり魔のライアンにとっては鋭い一撃だったね」


 ライアンは膝を折り、パーズは剣を鞘に納める。


「えっと、コネだろうと何だろうとドラグニティ魔法学園に入れたなら、喜んでいいと思うよ。その後、進級できるかどうかは自分次第。ライアンもサボっちゃう癖があるなら、入学して治せばいいよ。私もよくサボるし」

「キララもサボるのか? やっぱりサボるよな。人間だし。この鍛錬大好きバカは人間じゃない」


 ライアンはパーズの方を向きながら呟いた。


「鍛錬大好きバカって……。僕は鍛錬しないと強くなれないから鍛錬しているだけだ。のほほんと生活していて普通に強いライアンとは才能が違うんだよ」

「俺のどこに才能があるって言うんだ。俺の才能なんて、顔が超カッコいいくらいだろ!」


 ライアンは顎に手を当て、決め顔した。この子、中々面白いこと言うな。


「はぁ……。新しい剣術は見たらだいたい出来るでしょ。魔法だって、中級くらいならすぐできる。魔法と剣の組み合わせだって多彩だ。僕は魔法が下手だから、全然できない。ほとんど鍛錬していないのに、よくドラグニティ魔法学園に入れたよね……」


 ――なるほど、ライアンは結構天才肌なんだなー。対してパーズは努力肌と。どちらもいい才能を持っているじゃありませんか~。


「ライアンとパーズの話は訊いていて面白いね。もっと聞かせてよ。食事の代金として」

「うぅ……。まあ、いいけどよ。俺とパーズは普通に幼馴染って関係だ。親同士の仲が良くて昔からよく遊んでいたんだ」


 ライアンは胡坐をかきながら素性を話す。


「ライアンの親は騎士団長で、僕の親は副団長……。まあ、プルウィウス連邦の特級騎士階級の息子。なんだけど、恥ずかしくて言えなくて」


 パーズは正座しながらぼそぼそ呟く。


「恥ずかしい? そんなすごい位の高い二人が何を恥ずかしがっているの……」


 国直属の騎士団の団長と副団長でしょ。もう、プルウィウス連邦軍のトップの息子って、もの凄いじゃん。


「兄さんたちよりも弱いから……」


 パーズは視線を下げ、潰れるように背中を丸める。


「まあー、兄貴の方が俺達より断然強いんだ。父さんも普通に育てたら意味がないとか言ってこっちに送ったんだよ。ほんと、困るよなー。そういうの。俺は普通に騎士になれればよかったのによー」


 ライアンは後頭部に手を置き、胸を張る。


「二人が弱い? お兄さんたちは相当強いんだね。ブラックベアーを一人で狩れちゃうくらい強いのかな」

「まあ、そうなんじゃね? 騎士の強さは対人で表されるから、知らないけど」


 ライアンは適当に答えた。相手の方が強いかどうかわかっているんじゃないの?

 人と人が戦って負けたから自分の方が弱いと思っているのかな。


「えっと、二人は試験でブラックベアーと戦って無事生き残った。それだけで十分強いよ」

「まー、あの時は他に人がいっぱいいたからな。俺が倒したわけじゃねえし」

「僕も、スージアと一緒に足止めしていただけだから」


 ライアンとパーズは、自己肯定感が低いっぽい。倒せなかった結果だけを見ていた。それじゃあ、落ち込んでも仕方がない。

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