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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
試験本番 ~賢者と聖女も現れたけど、気にせず受験する編~

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フェニクスの力

 私は待ち時間に部屋の中で筋トレしたり、勉強したり、絵を描いたりして、時間を潰した。

 今は出来る限り考え事したくない。だって、考えに浮かぶのは騎士養成学校の状況だから。

 首を突っ込んではいけないといわれると、突っ込みたくなるお節介な性格のせいで我慢するのも大変だ。ルドラさんから釘を刺されているので、じっとしていないといけない。

 連絡が来ませんように、何も危険なことが起こりませんようにと心の中で呟く。


 今、騎士養成学校に隕石でも落ちたら、この国は終わるなと思いながら窓の外を見ていると。


「ぴよーっ。暇だったので遊びに来ました」


 インコ程度の大きさで真っ赤な炎のように燃えているフェニクスが遊びに来た。ここは神獣の遊び場じゃないのだが……。まあ、私も暇だったので丁度良い。


「おい、勝手に来てるんじゃねえよ」


 私の膝の上に顎を置いているフェンリルはフェニクスに睨みを利かせる。


「別にいいじゃない。減るもんじゃないし。ここ、魔力が満ちていてとても心地いんですよ」


 フェニクスの体はガスバーナーくらい激しく燃えている。とても心地よさそうだ。神獣にとってこの部屋は酸素カプセルの中に入っているような状況なのかな?


「フェニクス、ビーの子でも食べる?」

「食べます! 食べます!」


 フェニクスは机の上に降り立つと、スズメのようにピョンピョンと跳ねながら、私の前にやってくる。

 私は乾燥しているビーの子が入っている小袋を懐から取り出した。魔力がたっぷりと詰まったビーの子を手の平に乗せてフェニクスの口もとに持って行く。


「ぴよ~っ! うっまああいっ!」


 フェニクスがビーの子を摘まむと、体がごうごうと燃える。ほんと、熱い焼き鳥だ。

 私はフェニクスの体を撫でる。熱を感じるが手は火傷しない。逆に艶やかになっている気がする。ボロボロの手で撫でたらつやつやになるのかも。

 主婦が一家に一羽欲しくなりそうな鳥が目の前でビーの子を貪り食っている。


「はぁー。満腹です。幸せです」


 フェニクスは机の上でゴロンと寝転がり、鳥の癖に死んだような姿になった。もう、轢かれた馬鹿な鳩のようで、頬を指先で突いても嫌がる素振りを見せない。主以外の前でこんな無防備になっていいのだろうか。


「フェニクス、今、フェニル先生はどこにいるの?」

「今日もドラグニティ魔法学園の闘技場で受付の仕事をしています。暇そうで寝てますけど」


 フェニル先生は仕事があってもやる気が出ていないようだ。まあ、先生の仕事って本当に大変だから、眠れるときに眠っておかないと駄目なんだろうな。


「フェニル先生ってSランク冒険者なんでしょ。なのに、なんで先生になったんだろう」


 私は疑問に思っていることを、フェニル先生の相棒のフェニクスに聴いた。


「フェニルさんは先生になる気はなかったんですけど、ドラグニティ学園長がお願いして来たそうです。Sランク冒険者の指導員がいた方が学園に箔が付くと」

「はは……。なるほどね。最高峰の学園の先生がSランク冒険者なら多くの者が学びたいってなるか。じゃあ、そうなると、他のSランク冒険者の方達も先生に誘われているのかな?」

「さぁ、私はそこまで知りません。でも、フェニルさんの授業は授業といっていいのか……」


 フェニクスは苦笑いを浮かべ、翼を羽ばたかせて起き上がろうとしていた。私は両手で持ち上げ、机の上に立たせてあげる。


「ありがとうございます。魔力が体の中にありすぎて重くなってしまいました」

「魔力過多ってやつかな。食べ過ぎは肥満のもとだから、ほどほどにね」


 私はフェニクスの顎下を撫でて注意する。


「フェニル先生の授業って必修?」

「はい。必修です。なので、キララさんも学園に入学したら、受ける必要があります。戦闘学って感じでしたかね」


 フェニクスは翼を羽ばたかせて思い出していた。


「戦闘学……。もう、戦う気満々じゃん。まあ、冒険者も育成している学園なら、そういう授業もあるか。はぁー、付いていけるかな」


 私は両手を頬にあて、少し弱音を吐く。


「キララを殺そうとするやつがいたら、われが食い散らかしてやる!」


 フェンリルは食事係りの私を守る発言をした。案外頼もしい。


「ありがとう、フェンリル。神獣の名はだてじゃない安心感だよ」


 私はフェンリルの頭を撫でて微笑む。神獣が守ってくれるのなら、結構安心できる。最弱と違って。


「ちょっと! キララ様。キララ様を守るのはこの私ですよっ!」


 ベスパは両手をブンブン振って、自分の存在を大っぴらにした。まあ、私と繋がっているので、一番信頼を置いているのは案外ベスパなのかもしれない。


「はいはい。そんなに怒鳴らないの。じゃあ、楽しく雑談でもしましょうか」


 私は神獣二体と話した。二体はこの星が生まれた頃から生きている。訳がわからないほど年上の存在だった。

 簡単にいえば、神のペット。世界の中で悪いことが起こらないように監視しているような存在だとか。

 もう、時間が経ちすぎて、この場にいるだけの存在になっているらしい。昔の記憶はあいまいって……、老犬か?


「えっと、神獣ってあと何体くらいいるの?」

「全部で八体くらいいた気がするけど……、どうだったかな?」

「そうですね。もう、ほぼ会っていないので、忘れました」


 フェンリルとフェニクスは互いを見つめ、顔をしかめた。二体を含めて八体ということは残り六体いるということか。まあ、会う機会もないだろうし、気にする必要はないかな。


 私とフェンリル、フェニクスで話し合っていると、ビー達がちらほら帰って来た。現在の時間は午前一〇時頃。ほんと、仕事が速い虫達だ。まあ、邪念が無いから物凄く集中して物事に取り組めるんだろうな。簡単にいえば仕事ロボットだ。


「お帰り、お帰り、お帰り、お帰りー」


 私はビー達に社員として感謝の気持ちを伝える。本当は見たくもないが、社員に冷たく当たっては仕事の効率が下がる。社長は社員と共にあり、共に成長していく者だ。だから、少なからず挨拶くらいはしなければ。

 多くのビーが帰って来て、依頼達成書と金貨を机の上に置いていく。


「ぴ、ぴよぉ……。凄い、あっと言う間に金貨の塔が」


 フェニクスは金貨が一〇〇枚積まれた金貨の塔を見て、口を開けていた。その塔が八本並んだ頃、瞳が金色になっている。フェニクスもお金が好きなのかな。


「す、すごい。もう、フェニルさんの月給を容易く越えちゃっていますよ」


 フェニクスは金の塔に立ち、優越感に浸っていた。金の塔に立つフェニクスってなんか嫌だな……。


「フェニルさんの月給ってどれくらいなの?」

「そうですね、ざっと金貨一〇〇枚くらいですね」

「なるほど……」


 ――大学教授と同じくらいか? まあまあいい値段を貰っているんだな。でも、冒険者している方が確実に儲けられるよな。


「冒険者の方が儲けられると思うんですけど」

「ドラグニティ学園長が言うには年を取ってもお金がもらえると」

「あぁー。福利厚生が良いんだね」


 冒険者は高額のアルバイトのようなもので、福利厚生など糞ったれという感じだ。でも、ドラグニティ魔法学園で働けば老後安泰。どれだけ歳をとろうが、後から年金が入ってくる仕組み何だろうな。やはり王都、しっかりした整備がされている。村とは大違いだ。


「フェニルさんは老後を心配するような方には見えないけど」

「えっと、ほとんどの依頼を簡単にこなしてしまうから面白味が無いと言っていました。子供の成長を見ている方が楽しいそうです」


 フェニクスは金貨を突き、だるま落としのようにあそんでいた。


「もう、教育者としての才能が見えている気がするんだけど。依頼が簡単すぎてつまらないか。まあ、神獣がいたらそう思っちゃうのかな」


 私はフェニクスを撫でながら訊いた。


「まぁー、私がいればフェニルさんは死にませんからね」


 フェニクスは面白い冗談を言った。


「なにを言っているの? フェニルさんも人間なんだから不慮の事故で死んじゃうでしょ」

「いえ、死にませんよ。私がいる限り、彼女はどんな傷を負っても死にません」

「…………」


 ――神獣やっべぇ。


 私はフェニル先生のどんな依頼を受けても死なないとわかり、冒険者の仕事は本当につまらないんだろうと優に想像できた。

 簡単に考えて彼女は単騎無限でゲームが行えるチートの状態だった。そりゃ、どんな依頼を受けてもつまらないと思うよな。


「フェニル先生ってそんなすごい能力を持っていたんだ。やっぱりSランク冒険者はぶっ飛んでいるんだな」

「でも、弱点はありますよ。私がお腹ペコペコだったら普通に死にます」


 フェニクスはお腹を嘴で突きながら呟いた。つまり、フェニクスの魔力が無ければフェニル先生も死ぬ可能性があると。


「なるほど。そういう点は危険が一応あるんだね。でも、それ以外の弱点が無いんじゃ……」


 私は神獣と友達になっていること自体凄いことなのではないかとうすうす感じていたが、相手の神獣の方がもっとすごいということに今更気づいた。


「フェンリルはどうなの?」

「われか? われは……」


 フェンリルは頭をもたげ、首をかしげる。老犬だから、自分の能力も上手く思い出せないらしい。ほんと、ボケたお爺ちゃんは面倒臭い。


「まあ、いいや。別に気にしないで」


 私はフェンリルの主ではないので、聞いたところで使えないだろう。だから、ただの癒し系というポジションでいてもらう。

 多くのビーが戻ってきたのは午前一一時。留守番などの依頼を受けている個体以外、戻って来た。もう、帰っても問題ない。帰ってマドロフ家の昼食を得ようかなと思い、椅子から立ち上がる。昼頃を過ぎたら騎士養成学校の入学式も終わっているはずだ。


「さて、帰ろうかな。何も連絡が無かったし、問題なかったんでしょう」

「キララ様、ちょっといいですか?」


 ベスパは私の前に来て話しかけてきた。


「ん? どうしたの」

「ライアンとパーズに付けたビー達が連絡してきたんですが、彼らが西の森に向かったそうです」


 ベスパは同級生のライアンとパーズの話をしてきた。私は、騎士養成学校で何かあったのかと思い、ヒヤヒヤした。まあ、そっちの方なら心も安定している。


「昨日、行ったら駄目って言ったのに。ガキどもめ……」

「どうしますか?」

「ビー達で連れ戻してもいいけど、子供達の探求心を無下にするのも悪い。何か危険が起こる前に避難させられるように準備しておいて。説教するために私も西の森に行くよ。この前、危険だった泉や村の状態も確認しておきたい」

「了解です」


 ベスパは頷き、軽く光った。

 私は三人分の昼食を食堂のおばちゃんから買い、レクーのもとに走る。

 レクーを厩舎から出して、背中に乗り、西の森に向って走らせた。厳しい検問を通り、西の森の入口にやってくる。冒険者達が昼食をとっており、休憩中だった。これだけ大人がいれば、子供が襲われていたら助けに入れると思うので、あまり危険視していないが、なにが起こるかわからないので気を引き締める。


「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……。ふぅー。到着」


 フェンリルは王都から出られないそうだ。フェニクスも主の許可がないと無理らしい。


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王都の騎士の給料が月金貨200枚だったと思うからそれに比べたら天下の学園の先生なのに金貨100枚はかなり安いな
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