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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
試験本番 ~賢者と聖女も現れたけど、気にせず受験する編~

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明日は騎士育成学校の入学式

「すっごく美味しい。こんなに美味しいモークルの乳がこの世に存在しているなんてキララに会うまで知らなかった!」

「凄いでしょ。王都では貴族じゃなくても、美味しいモークルの乳が飲めるようになるから、楽しみにしておいてね。きっと学園の食堂でも飲めるようになるよ」

「絶対に毎日飲む!」


 ミーナは牛乳瓶の中に舌を入れ、舐めまわしていた。


「ミーナ、行儀が悪いから、やめなさい」


「うぅ、はい……」


 ミーナは牛乳瓶を口から渋々離している。


 私は服を着替えた後、ベスパに魔法を使ってもらい髪を乾かさせた。ネアちゃんが綺麗に梳かしてくれるので、毎日綺麗な髪を保っている。

 私はミーナの髪と尻尾の水気を布で取り、魔法で温風を当てて水気を完全に飛ばしたあと、ベスパ達に作ってもらった櫛で毛先からしっかりと梳いていく。

 静電気が発生しにくい木を使っており、ミーナの髪が絡まることもない。


「きゅぅ~っ。気持ちいい~っ!」


 ミーナは髪や尻尾を梳かれるのが大好きで、いつも可愛い声を出す。特に尻尾をブラッシングされると身が震えちゃうくらい心地いいんだとか。まあ、マッサージと似た心地よさだと思われる。

 ミーナの髪と尻尾を綺麗にブラッシングすると、銀髪の艶が一気に増し、本当にシルクのようになってしまった。


「おぉ~。こんなつやつやな髪、見た覚えがないよ。キラキラのお風呂ってすごいっ」


 ミーナは私の方を向いて尻尾を抱きしめた姿を見せてくる。可愛いかよ。


「そうだね。お風呂は凄いね」


 ――私の魔力の影響が大きいと思うけど、お風呂のおかげということにしておこう。その方が、都合がいい。


 私とミーナは寝間着に着替えて洗面所で歯を磨き、脱衣所を出た。そのまま、借りた寝床に向かう。

 ミーナは夜もしっかりと見えるらしいので、光が必要ない。淡い光りしかない夜の屋敷の中を堂々と歩けるのは少し羨ましい。お化け屋敷とか怖くなさそう。まあ、暗い中でも見えるからといって、夜が得意という訳ではない。


「うぅ。アンデッドが出ないかな。でたらやだなぁ……。倒せないし」


 ミーナは夜が結構怖いようで、アンデッド系がトラウマのようだ。昔怖い目にあったのだろう。確かにアンデッド系は聖職者の奇跡や聖水がないと倒せないので、遭遇したら最悪だ。


「安心して。私はアンデッドにも勝てる力を持っているの」


 私はミーナを安心させるために手をぎゅっと握り、小走りで自分の部屋に向かった。

 私達が借りている部屋に向っていると、何者かが後方から歩いてくる気配があった。


「な、なんか来てる……。キララ、なんか来てるよ……」


 後方を振り返ると、暗闇の中からゆっくりと何かが近づいてきていた。


「ほ、ほんとだね。なんか来てるね……」


 私は早歩きになり、部屋に向かうが、後方から来る者も早歩きになり、ドンドンと近づいてくる。


「ミーナ、人間だから、ちゃんと見て」

「無理無理。怖いもんっ!」


 ミーナは暗闇の中でも顏が見えるはずなのに、怖いからという理由で、見ることを拒んだ。

 私達の部屋の近くに到着したころしつこいストーカーが誰か判断するべく私は振り返った。


「だ、誰ですか、夜中に女の子の背後を付きまとうのはっ!」

「ちょ、ちょっと。落ち着いて。僕だよ、僕っ!」


 暗闇から月明りが強めの場所に出てきたのは、未だにドラグニティ魔法学園の制服を着ているマルティさんだった。


「ま、マルティさん。はぁ、驚かさないでくださいよ。声をかけてくれたら怖がらずに済んだのに」

「いや、声を掛けようとしたらキララさんが逃げるから」

「うぅ。アンデッドじゃなくてよかった……」


 ミーナは私の後方で力なくへたり込む。


「はぁー。怖がって損しました。えっと、マルティさん。何か用ですか?」

「用というか、何というか……。本当はずるいからこんなことをしたくないんだけど」


 マルティさんは暗闇の通路でしゃがみ、土下座のような体勢を取った。


「ドラグニティ魔法学園に入ったら、バートン術部に入ってください!」


 マルティさんは私達が入学する前から部活に勧誘してきた。だから、ずるい行動ということか。


「えっと……。バートン術部に入るのは楽しそうですけど、別に入る気はありません」

「そ、そこを何とか!」


 マルティさんは頭を再度下げる。


「僕は今年で三年生だし、武神祭でどうしても騎士育成学校に勝ちたいんだ。去年はあまりにも不甲斐ない結果で、手伝ってくれたリーファちゃんも悲しませてしまった。今年こそ、勝ちたい。勝って、バカにして来た奴らを見返したいっ!」


 マルティさんは私に頭を下げてきた。彼がとても頑張っていることは以前知っている。才能もある。

 学園でどういう生活になるかわからないし、バートン術部に入れるほどの余裕があるかどうか……。


「えっと、まだ、どんな部活があるかわかりませんし、私も色々見て回りたいので、今は入れません。でも、考えはします」

「ほんと! ありがとう、キララさん! あと、よかったら、一年生にもバートン術部の話しをしておいてくれると嬉しい!」


 マルティさんは目を輝かせ、本気でバートン術部の勝利を手にしようとしていた。


 ――バートン術は騎士がやる競技だったよな。似た競技に乗バートンがあるけど、そっちは貴族が行う競技という違いがあるから、貴族ご用達のドラグニティ魔法学園の生徒にバートン術は受け入れられにくいんだろう。でも、騎士か。騎士家系の留学生が丁度いるなぁ。


「マルティさん。ちょっと期待していて待ってもらってもいいかもしれません。プルウィウス連邦から来た騎士家系の男子二名を知っています。もしかしたら興味を持ってくれるかもしれません」

「ぷ、プルウィウス連邦の騎士だって! う、うおおおおっ! バートン術が国技になるくらいバートン術に力を入れている国の騎士家系の子が学園に入るのか!」


 マルティさんは物凄く興奮していた。まあ、プルウィウス連邦は騎士の国みたいな感じだし。さすがに有力株すぎるかな。断られた時のショックは大きそう。


「まあ、どうなるかわからないので、断られてもあまり騒がないでくださいね」

「わ、わかった。もう、靴を舐める覚悟しておく!」


 マルティさんは眼鏡をくいっと掛け直し、凛々しい顏でとてもダサい発言をした。


「はは……。靴を舐めるのは汚いからやめておいた方がいいですよ」


 マルティさんは言いたいことが言えたのか、満足して身をひるがえして戻っていった。


「はぁ。よかったよかった。ミーナ、もう部屋の中に……」


 私の肩に何やら大きな手が乗る。


「きゃあああああああああああああああああああっ!」


 私は驚きすぎて、大声をあげた。


「どわあああああああああああああああああああっ!」


 聞き覚えのある声が後方から聞こえる。後方にいたのは寝間着に着替えていたルドラさんだった。


「る、ルドラさん。驚かさないでくださいよ」

「そ、それはこちらが言いたいですよ……。はぁー、驚きました。ミーナはいきなり肩を触られて気を失っていますね」


 ルドラさんの腕の中にぽけーっとしているミーナの姿があった。やはり、いきなり驚かされるのは心臓に悪いようだ。

 ミーナを先にベッドに寝かせ、私はルドラさんの話を聞くために応接室に移動する。ブラットディアによる結界を張り、少しでも魔法や魔力、スキルの干渉を妨げる。


「えっと、ルドラさん、こんな夜遅くにどうかしたんですか?」

「明日、正教会の教皇が騎士養成学校で演説します」

「え……。あぁ。あの表に出てくるのが珍しい正教会の一番のお偉いさんですか」

「はい。加えてドリミア教会の大司教も出てきます。それだけじゃありません。五大老も出席します。国王と第一王子、第二王子も……」

「な、なんですか、そのやばい人達の大盤振る舞い」

「なんせ、勇者と剣聖が入学する日ですからね。多くの偉い方が出席されます。もちろんドラグニティ魔法学園とエルツ工魔学園、フリジア学園の学園長も呼ばれているそうです」

「えっと、その情報は……」

「お爺様がフリジア学園長から聞いたそうです。ほんと、危ない橋をわたっていますよね」


 ルドラさんは額に手を当て、首を振っていた。老い先が短いからといって危険な行為に手を出していい理由にはならないのに。


「勇者と剣聖、賢者、聖女がそろったころなど、伝記や歴史書の中にしか出てきません。本当に一大事なわけですから、それだけ多くの著名人が参列してもおかしくない事態です。八大貴族の者も参列するでしょう。もう、明日の騎士養成学校の入学式はぶっ飛んでいます」

「そ、そうですね。というか、明日が騎士養成学校の入学式なんですね。もうその時期ですか。でも、ほんと凄い人が集まって……。って、なんで、そんな話を私に?」

「明日、フリジア学園長はスキルを使って教皇や五大老、ドリミア教会の大司教などから心の声を盗み聞くそうです」

「そんな危ない作戦を考えているんですか」

「なんせ、周りに仲間もいますし、こんな好機は二度とないでしょう。勇者と剣聖が現れてくれたおかげといいますか……。この好機を逃がすわけにはいかないそうです」

「なるほど……」

「この話をキララさんにしたのは、フリジア学園長から騎士養成学校に近づかないでほしいと伝えておいてほしいと言われたからです」

「なぜ?」

「キララさんは悪魔に知られていると言っていましたよね。つまり、ドリミア教会の大司教や正教会の教皇にキララさんの存在が知られている可能性がある。そうなると、相手も警戒するでしょう。キララさんがこんな絶好な好機を逃すわけがないと相手も考えるはずです」

「そういうことですか……。確かに、私なら相手の情報を奪おうと動きます。相手は私を警戒しているかもしれないから、逆に私は動かない方がいいということですね」

「はい。ただ、上手くいくかどうかはわかりません。フリジア学園長を信じるしかありませんね」


 ルドラさんはフリジア学園長の姿を思い浮かべているのだろう。あの小柄で可愛らしい森の民の女性がそんな大役を担っていると思うと、心が痛むのかな。

 ああ見えて八〇〇年は生きている森の民だし、肝は座っているはずだ。

 私はフリジア学園長を信じている。ドラグニティ学園長も信頼している。他の八大貴族がどっち側に付いているかわからないが、大貴族だから、自分の領土を守るのに尽力するはずだ。


 ――国王とアレス王子は良いとして、第二王子か……。正教会とドリミア教会に繋がっている天才児。もう、嫌な予感しかしない。でも、剣聖のアイクが入学するなら、私もちょっとだけ行きたかったなぁ。


「私も聞かされて今日まで生きてくるのがヒヤヒヤでしたよ……。ほんと、生きた心地がしませんでした」


 ルドラさんも重要な情報を聞かされていた。万が一、マルチスさんに何かあれば、ルドラさんがその後を継がなければならない。重役なのは間違いない。

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