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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
試験本番 ~賢者と聖女も現れたけど、気にせず受験する編~

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ミーナとお風呂に入る

「はぁ、仕事を回される身にもなってほしいですわ。ほんと、息子たちの手が掛からなかったから今の仕事が出来ていますが、手が掛かる子どもだったらどうなっていたか……」


 テーゼルさんは顔に小じわが増えたような……、って言ったら怒られるので黙っていたが、確かに疲れが見て取れた。やはり、ケイオスさんがどれだけ頑張っても限界があり、テーゼルさんの方にしわ寄せがきているのだろう。


「お母様、お疲れなら、少しでもお休みをとってください。疲れていたら仕事もうまくいかないと教わりました」


 マルティさんはテーゼルさんのことを労わっていた。


「ありがとう、マルティ。でも、そう簡単に休むわけにはいかないわ。一分、一秒でも長くこの商会を続けさせるために頑張らないといけないの」


 テーゼルさんはマルティさんに心配されて嬉しかったのか、口角を上げて笑っていた。母親はどれだけ疲れていても子供の為を思えば頑張れる。まあ、その概念が貴族の中にも浸透しているかわからないが、私の見たところ、テーゼルさんも頑張れる人間だ。


 食事が進むと肉料理が出てきた。ミーナは目を輝かせ、ナイフとフォークでぎこちなく食す。本当はわしづかみにして齧り付きたいところだろう。でも、周りを気にしてお淑やかに食べている。人族に合わせるのはとてもきついだろうが、それも社会勉強だと思って頑張ってほしい。

 私がビースト共和国に行けば、周りに合わせる方が、信頼度が上がる。食事の輪に加わるということは仲間に加わるということと同じだ。

 ミーナは肉を何回もお替りしていた。肉のお替りをするごとに皿が積まれ、八段ほどになってようやく落ち着く。


「ふぁ~、美味しかった」


 ミーナの満面の笑みを見た者達の顔は朗らかになっており、飼い犬の笑みを見ている瞳と同じだった。もう、ミーナは愛玩動物枠を獲得したらしい。そうなれば、多少失敗しても多めに見てもらえる。

 最後のデザートが出てきた。見た目はアイスクリームだが、ジェラートと行った方が近しいかも。ウトサが使われていないので甘味が無いと思ったが、果糖のおかげでじんわりと甘みがする。油っぽかった口内がさっぱりして食後の不快感が緩和された。


「ごちそうさまでした」


 私は食事に感謝し、祈った。まあ、この世界で「いただきます」と「ごちそうさま」と言う文化はないが、私は神や食事への感謝ということで乗り切っている。

 食事が終わるとマルチスさんから席を立ち、ケイオスさん、テーゼルさんと食堂をあとにする。


「ふぅ。ミーナ、肩の力を抜いてもらって構わないよ」

「あぁあ。疲れたぁ……。美味しかったのに、味がしなかったような変な感じ」


 ミーナは背もたれにグデーっと倒れ込み、舌を出していた。体温調節している時の犬と似ている。


「はは、ビースト共和国の平民の方は貴族の食事の仕方は合わなそうだね」

「もっとワイワイと食べる方が好きです……。なんか緊張しすぎてしまって」

「まあ、人の性格は食事によく出てくるから、そういう部分を見て、人柄を判断する者もいる。だから、絶妙に硬くなってしまうんだろうね。私もワイワイして食事する方が好きかな。お爺様もそう思っていると思うけど。マルティはどうかな?」

「ぼ、僕は……」


 マルティさんはドラグニティ魔法学園でワイワイと食事する相手がいないのか、ルドラさんの発言に困っていた。

 彼がドラグニティ魔法学園の中で軽いいじめの対象になっていると知らないのだろうか。まあ、殴ったり蹴ったりといういじめではなく、からかっている部類に入るかもしれない。反応からして友達はいなさそうだ。


「そりゃあ、楽しく食べる方が好きですよ。でも、きちっとした食事の良い所は面倒な相手と話さなくてもいい。心の負担が減って楽なんですよね」


 飲み会の陽気な食事の席が苦手な私としては、きちっとした食事も嫌いじゃない。うざい上司の絡みはないし、接待もない。もちろん敬意を払って食事することが大切だ。それさえしておけば問題ない。


「私、貴族に生まれなくてよかった……」


 ミーナは水を飲み、呼吸を整えている。


「そうね……、村での生活を思い出すときちっとした食事は窮屈に感じるわね」


 クレアさんは食べたりないのか、パンを摘まんでいた。


「じゃあ、僕は部屋に戻るよ」


 ルドラさんの発言のせいで居心地が悪くなったマルティさんは席を立ち、食堂をあとにした。フィーアさんとの関係が上手くいっていないのかな?

 私は色々考えたが、後々わかるから、今考える必要がないと八〇秒後に気づき、頭を振った。


「じゃあ、私達も部屋に戻ろうか」


 ルドラさんはクレアさんに視線を送る。


「はい、ルドラ様」


 クレアさんはルドラさんの手を握り、共に立ち上がった。そのまま、食堂をあとにする。この後は共にお風呂に入ってベッドの上でイチャイチャするのだろう。全く、最近の若者は……、って、私も若者か。


「ミーナ、一緒にお風呂に入ろう」


 私はミーナの手を取る。


「お、お風呂……」


 ミーナはお風呂と聞いて顏を明るくした。尻尾と耳が動き、すでに嬉しそうだ。

 共に脱衣所にやってくるとメイドさん達がすでに準備していた。お風呂に入る準備も、ちゃっかりとしており、私の残り湯に入る気満々だ。

 そこまでして綺麗になりたいかと思ったが、化粧水や乳液など肌を綺麗に保つ薬品がまともに開発されていない国において、入るだけで綺麗になるお湯と聴いたら多くの女が入りたがるよな。

 なんなら、化粧水や乳液よりすごいし。なんせ、入っただけで肌年齢が八年若返るのだ。どんな化粧水を使ってもそこまでの効果は得られないだろう。薬品なら現状維持が良い所だ。でも、魔力がある世界ゆえ、体の劣化は魔力の衰えといってもいい。

 体に流れている魔力の質が悪くなることで老けているように見えるのだ。フリジア学園長のような長寿の森の民は自然から魔力を吸収し、質が良い状態を保てるから、若々しくいつまでも元気でいられる。

 まあ、魔力は細胞を活性化させて老けさせない効果を持っているとんでもない物質ということだ。その魔力を私はバカみたいに持っている。加えて私の魔力は人に分け与えやすい状態にしてしまうようで、他人が勝手に魔力を吸収し、若返ったように見える。


「ミーナは何か悩み事とかある?」


 私は服を脱ぎながら隣でドレスを脱がされているミーナに訊く。


「え、悩み事……。うーん、どうやったハンス様の赤ちゃんが手に入るの? お父さんとお母さんは全然教えてくれないし、他の大人も知らんぷりしてくるの。キララは赤ちゃんを手に入れる方法を知っている?」


「…………なるほど、そうきたか」


 私は大変話しにくい悩みを相談された。


「えっとね。多分、ドラグニティ魔法学園で教えてもらえると思うよ」


「ほんと! うわぁ~、楽しみ! 私、ハンス様の赤ちゃん一杯欲しいな~!」


 ミーナは無垢な笑顔で飛び跳ねていた。周りのメイドさん達も耳を赤らめながらミーナの姿を見ている。無知ゆえの可愛さ、幼しさがあふれ出ており、汚らわしい煩悩に塗れてほしくないと思いながらも、多くの者が通る道。知識を得た時、ミーナはいったい何を思うだろうか。


「逆にキララの悩みって何?」

「え? 胸が平らなこと」


 私は両手で胸に触れて、はっきりと言った。もう、悪魔や正教会以外の悩みなら、これ一択だ。


「…………お、お風呂に入ろうか」


 ミーナは私の悩みを流した。なぜ流す。聞いたのならしっかりと聞いて意見を話せ!


 私はミーナの後を追い、お風呂に入った。

 大きな浴槽の中に透明なお湯が入れられている。水面に大量の花が浮かんでおり、とてもいいにおいがした。


「うわぁ~! こんな、お風呂、見た覚えが無いよ! すごいすごい!」


 ミーナは目を輝かせ、飛び込もうとした。私はとっさに尻尾を掴む。


「ひゃいっ!」


 ミーナは全身に鳥肌を立たせ、縮こまった。


「ご、ごめん。尻尾くらいしか届くところが無くて」

「うぅ……。スネークに体の周りを、ぞぞぞって這われたみたいな感覚になった……」


 ミーナは涙目になってしまい、身を震わせていた。


「えっと、お風呂に飛び込んだら駄目なんだよ。まず、体にお湯をかけて綺麗にしないと」

「そ、そうなの? 私が住んでいる村の皆は飛び込んでいるよ」

「皆が飛び込む? そんな大きなお風呂があるの?」

「うん。でも、川の中にあったり、泉だったりするから、お風呂っていうのかわからないけど、温かいお湯が湧き出ている場所があるの」

「…………わぉ」


 私の全身に鳥肌が立ち、頭のてっぺんから足先まで痺れる。もう、完全にシナプスがつながった。私はミーナがいう泉のお湯に浸かりたくて仕方がない状態になっている。


「ミーナ、いつか、私をそこに連れて行って!」

「え……。う、うん。キララが村に来たら一緒に行こう」


 ミーナは何のためらいもなくコクリと頷いた。

 確証はないがミーナの村にある暖かいお湯は温泉だ。川や泉のお湯が暖かいなんてどう考えても温泉としか思えない。絶対に行く! 絶対の絶対に行く!


 私の頭の中は温泉でいっぱいになっていた。でも、今、そのことを考えても行くことはできないので、心の奥底に感情を止めておく。

 私とミーナは体にお湯をかけてしっかりと綺麗にした。


「キララ、どこもかしこもツルツルすべすべ。いいなー」


 ミーナは私の体を見て呟いた。ミーナの体も私と特に変わらないと思うのだが……。耳と尻尾は獣のように毛がびっしりと生えている。腕と脚は人の体と変わらず産毛程度。なのに、何故私のすべすべな体が良いと言うのだろうか。


「ミーナ、なんでそう思うの?」

「え? だって、電撃が起こりにくいでしょ。私、長袖長ズボンを履くと体に何か溜まって金属に触れると電撃を食らうの。多分この細かな毛のせいだと思うんだけど……キララは起こらなそうだなと思って」

「……確かに、起こりにくいかも。でも、毛が多い獣族だから、体に電撃が起こるのは仕方ないよ。ちょっとバチっとするだけでしょ」

「うぅ、ちょっとでもバチってなるの痛いもん。いきなり起こるからスキルで防げないし……」


 ミーナは巨大なボワに恐怖しないのに、小さな静電気が苦手なようだ。ちょっと可愛い弱点があって面白い。


「バチってなりたくなかったら、靴を脱いで少し待つといいかも。地面に電撃を流すんだよ」

「へぇ……。そんなことで、起こらなくなるの?」

「ある程度はね。でも、慣れるしかないかもね」


 私は指先に『ボルト』を発生させる。バチバチと言うスタンガンのような嫌な音が鳴り響いた。


「うえぇ、む、無詠唱……。しかも雷属性魔法……」


 ミーナはビリビリが苦手なので、身を引いていた。尻尾を股に挟んで縮こまる姿が可愛らしい。


「嘘嘘。冗談だよ」


 私は『ボルト』を解き、お湯の中に入る。水の中で雷属性魔法を使ったら危険すぎるので、気を付けなければ。

 私とミーナはお風呂の中で脚を伸ばし、温かいお湯に身を包まれていた。

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