デイジーちゃんの家族
「キララ様、見えてきましたね。リーズさんの病院」
「そうだね、あ…壊れた扉が治ってる…。確か…レクーがぶっ壊しちゃったんだよね…。私達が退院する前はまだ魔法で少し補強しただけの状態だったけど、今はもう新しい扉になってるな…」
――リーズさん…修理代をツケにしているのだろうか…。お父さん…ごめんなさい。
「デイジーちゃん、もう少しでお母さんに会えるよ」
「はい、な…なんか緊張してきました…」
私達は何事もなく、リーズさんの病院に到着した。
ウシ君に紙袋を被せただけなのだが…結構スムーズに移動できたのだ。
病院に着くまでに道行く人がチラチラと見てきたけど、別にウシ君を怖がってはいなかった。
――多分、モークルのオスだとバレていなかったのだろう…。今度、ウシ君と街に来るときは紙袋じゃなくて可愛らしい仮面でも作ってあげようかな…。
荷台が人の邪魔にならないよう、病院の敷地内で最も端っこの方に停車した。
私とデイジーちゃんは荷台から降り、ウシ君と荷台を結び付けている縄を解く。
ウシ君を病院に備え付けられている厩舎へ移し、私達は病院の入口へと向かった。
病院の入り口前で私達は一度立ち止まり、深呼吸をする。
「ふ~…。よし、行こう」
「はい!」
病院中に入ると、街の人だろうか…、色々な人が病院を利用していた。
「えっと…。お母さんは…どこかな…」
病院の受付で、デイジーちゃんはお母さんと弟君を探し始めた。
そして間もなく、デイジーちゃんの探していた2人は無事見つかった。
「お母さん!」
「デイジー! 元気そうで良かった…。ごめんね心配かけて。1人で怖かったでしょ…」
「全然怖くなかったよ! キララさんのお家に助けてもらったから、私…全然怖くなかったの。えっと…私よりもお母さんたちの方こそ大丈夫だった、後遺症とか…」
「ええ、私もルイも『後遺症は見つかりませんでした』ってリーズ先生が言っていたから大丈夫よ。ほんと…デイジーとルイに何もなくてよかった…」
「お姉ちゃん、僕ね! 苦いお薬を我慢して飲めたんだよ! すごいでしょ!」
「ルイ、凄いじゃん! 頑張ったんだね」
「うん!」
デイジーちゃんは弟君を抱きしめ、褒めている。
周りの人目を気にせず、デイジーの家族は…再会を喜び合っていた。
「それじゃあ、行きましょうか。今日はデイジーちゃんたちを運ぶのが私の役目なので、行きたい所、ドンドン連れて行っちゃいますよ!」
「お母さん行こ! 私ね、この街を色々見て回りたいの」
「そうね、せっかく街まで来たのだから、見て回るのも楽しいかもしれないわ…。えっと…キララさんでしたよね。娘がお世話になりました。それに、私達を見つけていただきほんとに感謝しております。もしキララさんが村へ来ていなかったら…私たちはいったいどうなっていたか…、想像するだけでも恐ろしいです…」
「いえ、私は偶然デイジーちゃんの売っている物に興味があっただけですから。つまり、デイジーちゃんが村の皆を助けたですよ…」
――そうだ、デイジーちゃんが、街でレモネを売っていなければ、私はネ―ド村に行っていなかっただろう。 もしかしたら他の誰かが瘴気に気づいて対処していたかもしれないけど、結果的に私が瘴気を発見できたから、被害を最小限に抑えられた…のかな。でも死者が出なくて本当に良かった。リーズさんも奇跡だって言ってたし。
私達は病院から出て、厩舎へウシ君を迎えに行く。
ウシ君を厩舎から出し、そのまま荷台へ私達は向かった。
「デイジーちゃん、どこから回る? ウシ君なら私たちをどれだけ運んでもへっちゃらだから、好きな所を時間の許す限りいっぱい回れるよ」
「いや…さすがに…歩き続けるのは、キツイ…って…話聞いてる…。聞いて無いか…」
「それじゃあ…」
デイジーちゃんは手を組みどこから回ろうか考えているようだ。
「私、市場に行ってみたい! その後、騎士団を見て…美味しいものを食べに行く!」
「良いね、その予定で行こう」
3人を荷台に乗せ、私達は市場へ向かった。
様々な露店が並び、面白い品がたくさん並んでいた。
3人は楽しそうに、露店を見てまわり…ちょっとした買い食いをして楽しんでいる。
デイジーちゃんの持っていたお金を見てお母さんは一瞬驚いた顔をした。
しかし、デイジーちゃんの楽しそうな顔を見て、お金の話を追求するのはやめたようだ。
私とウシ君は、デイジーちゃん達から距離をとり、のそのそと市場を移動していた。
市場の端から端までを歩き終わると、3人は私の元へ戻ってきた。
私は3人を回収し、街を警護している騎士団を訪れた。
警察…消防…自衛隊とは、またちょっと違った雰囲気を放っている。
――何て言えばいいのか分からないけど…、覇気を全然感じられない…。本当にこの街を守っているのだろうか…。これなら、兵士のおじさんの方がよっぽど騎士っぽいよ…。
騎士団の見かけはピカピカの鎧を着て、とても綺麗だった。しかし…騎士団のうち、誰もが無表情で鎧の下に全てを押し込めた感情の無い人形のようで、少し…いや、大分怖い。
騎士団は剣、槍、斧、などの武器は勿論、魔法やスキルを使用した戦闘訓練を行っている最中で、凄い迫力だ。
――誰も…表情を変えないのは…訓練の一環なのかな…。血…とか出てるけど…大丈夫なの…。
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