表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
試験本番 ~賢者と聖女も現れたけど、気にせず受験する編~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

955/1183

ここで会ったのも何かの縁

「じゃあね。キララ、ミーナ。あなた達と学園生活ができる日を楽しみにしているわ」


 メロアは少々照れくさそうに手を振り、私達を見送ってくれた。根は優しい子なんだろうな。


「はい。私もメロアさんと一緒に学園生活ができるのを楽しみにしています」


「私も私も~。メロア、思い出を一杯作ろうね~」


 ミーナは手を大きく振り、早速知り合いが出来て嬉しそうにしていた。まあ、友達が出来たら嬉しいに決まっているか。


 私達は厩舎に移動し、レクーを出す。荷台とレクーを紐で結んだあと荷台の前座席に座った。ウルフィリアギルドにいるクレアさんを迎えにいかなければならない。


「はぁ、友達が出来たのは嬉しいけど、昼食が少なかったなぁ……」


 ミーナはお腹を撫でながら尻尾と耳を下げていた。メロアの前でその顔を見せなかったのは案外相手の気持ちに寄り添える子なのかも。共感性が高いのかな。純粋で共感性が高い元気な子って珍しい。


「じゃあ、ビーの子でも食べる。私の魔力入りだから、お腹に溜まるよ」


 私はおやつ用のビーの子が入った革袋を荷台から取り出し、ミーナに渡す。


「うわーいっ! ありがとう!」


 ミーナは一瞬で満面の笑みになると、私からビーの子が入った革袋を受け取った。そのままピーナッツを食べるように、ビーの子を口の中に入れていく。


「ん~。甘くておいしい~」


 ミーナは耳と尻尾を上げていた。気分がよさそうで何より。一袋の中身を全て食べ終わるころにはお腹が膨れたのか、一息入れている。


「ほんと、ビーの子って不思議な食べ物だね。もう、お腹一杯になっちゃった~。手に乗る量だけで満腹感が得られるなんて最高だよ~」


「まあ、私の魔力が入っているからね。ミーナのお腹がすくのはスキルのせいだと思うから、大量の魔力を体内に取り込めばお腹が膨れるんだよ」


「えぇ~、そうなの? 全然知らなかった」


「仮定だけどね。でも、大量の魔力を含んだビーの子を食べて空腹が減ったのなら、私の考えは間違っていないと思う。ミーナは獣族だし、普通の人より魔力量が少ない。それ以上の魔力を消費するスキルだからすぐにお腹が減るんだよ」


「スキルのせいでお腹が減るって、なんかスキルが悪いものみたい……」


「ミーナのスキルは強力すぎるから、代償も大きいんだと思う。『身体能力八倍』はさすがに性能がぶっ飛んでるからね。長時間使えたら強すぎる」


「身体能力が八倍になるくらいじゃ全然強くないよ~。魔法とか、剣術が物凄く強い方が良いって」


 ミーナは自分の力の凄さをわかっていない。普通の人間の『身体能力が八倍』になるくらいなら……って、それでも脅威だけど、獣族の力が八倍になったら危険すぎる。

 なんせ、元Sランク冒険者パーティーに所属していた、バルディアギルドで受付嬢の仕事をこなしているトラスさんが獣族の身体能力だけで主力になっていたのだ。

 そんな獣族の力が八倍になったらどうなるか。

 超巨大なボワを一撃で倒せる威力の攻撃が出せる。お腹がいっぱいの時限定かもしれないけど。


「とりあえず、ミーナの力は強い。その力をしっかりと使えこなせるようになってもらうためにドラグニティ魔法学園に合格させてもらえたんだと思う。スキルが暴走することだってあるの。自分の意識が無くなって周りを傷つける状況がおこりえるんだよ」


「そ、それは怖いね……。私、スキルをちゃんと使いこなせるように頑張る」


 ミーナは自分の強さを理解していないが、スキルの危険性だけは理解してくれたようだ。


 私達はドラグニティ魔法学園を出てウルフィリアギルドに向かう。クレアさんはフルーファが守っている、ビー達の護衛も付いているので無事だと思うが、少々心配だ。


 昼が過ぎ、午後二時三〇分。私達はウルフィリアギルドに到着した。

 この時間帯は冒険者達もおらず、朝ほど人が混んでいない。そのため、普通に歩けた。


「うぉ~! ルークス王国の冒険者ギルド、カッケ~っ! なあなあ、パーズもそう思うだろ!」


 橙色髪の少年がウルフィリアギルドの建物を見て大きな声を出していた。


「ちょ、大きな声を出しすぎだって。他国の子供ってすぐに気づかれる。恥ずかしいな……」


 青髪の少年が橙色髪の少年の腕を持ち、引っ張っていた。


「別に俺達がプルウィウス連邦から来た子供だって知られてもいいだろうが。ルークス王国とは同盟国だぞ。仲が良い国ってことじゃねえか」


「昔、戦い合って多くの被害者が出たから、同じ戦争を起こさないように同盟を結んだだけ。仲が良いかどうかは知らないけど、あんまりはしゃぐと目立つからさ、静かにしてよ」


「無理だな! だって、天下にとどろくウルフィリアギルドだぞ! ここに来たがる冒険者が何人いると思ってる!」


「僕達は騎士だけどね……。騎士なら、騎士養成学校の方を見に行った方がいいんじゃ」


「あの学校は辛気臭いから嫌だ。学長が嫌い。そもそも、騎士養成学校なら自国の学校でいいじゃねえか。せっかくドラグニティ魔法学園に受かったんだ。冒険者にでもなろうぜ!」


「はぁ。僕達は留学生なんだから、卒業したら国に帰らないと」


「まったく、パーズは夢がねえな。冒険者として有名になればプルウィウス連邦で騎士になるより大金が稼げるんだぞ! 親父に一泡吹かせてやろうって思わねえのか!」


「…………そう言うのも悪くはないかな」


 青髪の少年は左腰に掛けてある剣に触れ、少し楽しそうにしていた。


 ――あの二人、どう見てもドラグニティ魔法学園で一緒に試験を受けた二人だよな。確か、橙色髪の子がライアンで青髪の子がパーズ。どっちも受かったんだ。つまり、同級生。さっきもメロアに会ったばかりだし、男子と話し合うのは面倒かな。クレアさんを見つけてさっさと帰るか。


「う~ん、どれもこれも高いな~」


「まあ、質で勝負しているんでしょ。学生の僕達が買える品は無いよ」


「でも、せっかく受かったなら、武器や防具を新調したいだろ。家からの仕送りはしょっぱいし、出来るだけ節約しないとなぁ。どこかに良い店はないだろうか」


 ライアンは周りの高級品を見るも自分たちの手持ちじゃ手が届かないのか、うなだれながら右往左往している。


「よってらっしゃい、見てらっしゃい! 新人冒険者のつよーい味方! マドロフ商会の品はどれも質が良くて安いよ~!」


 卸売りでもしているのかと思うほど威勢がいい声が響いた。仕事により肺活量が鍛えられたクレアさんの通る声がライアンとパーズの耳にも入ったようだ。


「マドロフ商会だってよ。聞いた覚えがある気がする」


「プルウィウス連邦にも支店があるでしょ。冒険者用の店と思った覚えはないけれど、安いって言っているし、入ってみる?」


「そうだな。どれだけいい品が売っているか、見に行ってやろうじゃねえか!」


 ライアンとパーズはクレアさんの呼び込みに乗り、マドロフ商会の支部に近づいて行った。


「すみませーん、可愛らしいお姉さん。剣と防具って売っていますか~」


 ライアンはクレアさんにナンパするように話かけていた。


「あるよ~。いい品がそろっているから、見ていって~」


 クレアさんは自分の家の商品に自信たっぷり。それがライアンとパーズに伝わったのか、興味津々のまま店内に入って行く。


「あの二人、どこかで会った気がする」


 ミーナは顎に指を当て、もう一方の手で額に触れる。変わった思い出し方で、鼻をスンスンと鳴らした。すると大きな目をグワっと開ける。


「あの二人、試験の時に一緒にいた二人だ! 名前は、名前は……」


 ミーナは匂いを覚えるのは得意なのに、名前を覚えるのが苦手なようだ。


「私の記憶が正しければライアンとパーズだよ。二人共、ドラグニティ魔法学園に受かったみたいだね。これからは同級生だ」


「うぉ~! すごいすごい! 一緒に戦っていた者が四人も受かってる~!」


 ミーナは試験を共に乗り越えた仲間が合格している事実に心から喜んでいる様子だった。

 私もあの二人が受かっていてくれてほっとしている。最後の一時間しか共闘していないが三時間も戦い続けた受験者同士、これから頼もしい仲間になるだろう。まあ、一二歳の子供相手にカッコイイもくそもないが、どちらとも顔がイケているので眼福にはなるかな。


「ねえねえ、キララ。挨拶にいこうよ~!」


 ミーナはライアンとパーズのもとに走って行こうとした。


「そうだね。ここであったのも何かの縁だし、挨拶くらいしておこうか。私はまた誰か気づかれないんだろうな……」


 今の私は見るからに女子だ。でも、試験を受けていた時は男女と言うあだ名が付けられるほどどちらかわからない見た目だった。彼らと会っても、わかってもらえるかどうか不安だ。まあ、男女ですって言えば問題ないか。

 私とミーナはクレアさんが呼子しているマドロフ商会の前に向かった。


「あ、キララさん。ミーナちゃん。いらっしゃいませ~!」


 クレアさんは愛想の良い顏で接客してきた。


「クレアさん、こんにちは。迎えに来たんですけど、知り合いがいたので、挨拶してきてもいいですか?」


「ええ、もちろん。じゃあ、私はもう少しだけ、呼子しているわね」


「はい。わかりました」


 私とミーナはマドロフ商会の支部である建物に入っていく。


「おぉ、ものすごい品ぞろえ。さすがマドロフ商会」


 ミーナは周りを見渡し、商品数の多さに驚いていた。どれもこれも初心者が使うような品が多い。でも、丁度ほしかったと思うような品々が陳列されている。ドラッグストアの中を歩いている感覚に近かい。


「干し肉、干パン、干魚。あぁ~、美味しそう」


 ミーナは食料コーナーで涎を口の中に溜めながら、眺めていた。お腹は一杯なのに、食べ物を見ると食べたくなってしまうらしい。もう、ぽっちゃり体型まっしぐらの性格だ。


「おいおい、パーズ見ろよ。金貨五〇枚だってよ。滅茶苦茶高いな」


「ちょ、ちょっと。パーズ。そんな高い品を持ったら駄目だよ……」


「なんでだよ。買う訳じゃないけど、展示してあるんだから持ってもいいだろ」


 ライアンとパーズはエチケット箱を持ち、話し合っていた。子供が取るには早すぎる。


「盗んだと思われたら大変だろ。早く元に戻すんだ」


「ちぇー。こんな高い品が何に使われているのか知りたかったのに」


「ろくなものじゃないよ。えっと、避妊具……。避妊具?」


 パーズは商品名を見てもよくわかっていなかった。まあ、貴族や騎士が避妊するのかどうか知らない。なんなら、子供が一杯欲しいって思っているからわざわざ避妊なんてしないだろ。そうじゃなかったらフレイズ家のような一六人きょうだいとかあり得ない。あまり普及していないだろうな。

 そう考えると性病とかもたくさん蔓延してそう……。

 うわぁ、怖いな。あんまりイケイケの男に捕まったら性病をうつされるかも。鉄壁のアイドルがそんな相手に捕まると思えないけど。


「お~い! 二人共、久しぶり~!」


 ミーナはすでに友達感覚でライアンとパーズのもとに突っ走った。元気がいいのは良いことだが、あまりいきなり行くと怖がっちゃうよ。


「銀髪の獣族。見た覚えのある顔と聞き覚えがある声。もしかしてミーナさん?」


 パーズは物覚えがいいのか、ミーナの顔を覚えていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ