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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
試験本番 ~賢者と聖女も現れたけど、気にせず受験する編~

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入学準備

 新入生っぽい子たちが正門の近くで騎士と会話していた。私と同じように準備に来たのか、結構緊張しているように見えた。


 ――全寮制だからなぁ。今まで家から学園に通っていた者達は心細いだろう。ホームシックなる現象も普通にあり得る。私は心が大人なので、そのような現象を得ることは……多分ない。いや、あるかも。


 私は自分の感情が不安定になるほど緊張しているようだ。何度もドームツアーをこなして来たトップアイドルの私が緊張しているなんて。いや、緊張しているのではなく、わくわくしているのだ。

 そう自分にいい聞かせると緊張はすぐに消える。逆に、この感情を楽しめている気がしてきた。


「こんにちは。何か用ですか?」


 前の人達がいなくなり、正門の近くに立っていた騎士の男性が私たちに話かけてきた。


「学園の中に入りたいんですが通してもらえますか? ドラグニティ魔法学園の新入生なんですけど……」


「確認します。名前をお書きください」


 騎士の男性は木製の板と羽根ペン、インクが入った小瓶を差し出してきた。木製の板の上に紙が置いており、横線が入っている。

 私はキララ・マンダリニアと書き記した。ミーナに手渡し、彼女にも名前を書いてもらう。


「では、調べさせていただきます」


 騎士は木製の板と羽根ペン、小瓶を手に取り、建物の中に入って行った。その間、別の騎士が入れ替わり、見張りをこなしている。警備体制が徹底されている。

 目を細めながら学園の周に向けると、虹色っぽい光の膜が見えた。

 シャボン玉を膨らました時に見える模様に似ている。その光景から輪郭を辿るように視線を動かすと、ドーム状になっているのがわかる。どうやら、結界のような魔法が学園に掛けられているようだ。

 侵入者を感知する魔法かな? 虫にも反応するのだろうか。反応したとしても警戒はされないだろうな。


「キララ、なんか目が怖いよ……」


 ミーナは私の顔を見て、若干引いていた。


「ご、ごめんごめん。ちょっと警戒心が強くなっていて。観察するのが癖だからさ」


 私は苦笑いを浮かべながら誤魔化す。まあ、実際に観察していただけなので何も悪いことはしていない。

 八分も掛からず、騎士が建物から出てきた。


「確認が取れました。残されていた特徴から一致していますし、冒険者ギルドが発行しているテイマーの銅板も着けている。キララさんとミーナさんのご本人で間違いないでしょう」


 騎士は私達を通してくれた。ほんと心臓に悪い。騎士達は皆を、悪者を見るような目で疑ってくる。その目が心を抉るので、やめてもらいたい。まあ、やめたら悪者が入り放題になってしまうので我慢するしかない。


「何度来ても、学園は大きいね……。大きすぎて森の中に入ったのかと思うくらいだよ」


 ミーナは辺りを見渡し、獣耳を動かして音を拾っていた。獣族の生態はよくわからないが、顔や体つきは人と何ら変わらないので、大した違いはないと思う。


 ――ミーナの耳と尻尾、よく動くよなぁ。


 獣族は耳と尻尾に感情が大きく出てしまう。その姿を見ると、とても可愛らしくてモフモフしたくなってしまう。

 私はモフモフしている生き物全般が好きだ。なので、獣族全般が好き。別に愛しているという訳ではなく、人種的に好きなのかな? やっぱり獣耳と尻尾が生えている点がポイント高い。


 私は元アイドルなので獣耳や尻尾を付けた衣装を着た覚えもあるが、獣族ほど自然に付けられなかった。

 どうしてもコスプレ感が出てしまう。でも、獣族は本当に耳と尻尾が生えているのでコスプレ感が一切無い。それが自然でとても興味深かった。


「な、なに、キララ。そんなにじろじろ見られると恥ずかしいよ……」


 ミーナは体を抱くように手を動かし、私の視線から隠す。別に体を見ているわけではないのだが。


「ミーナの耳と尻尾って不思議だよね。なんで残っているんだろう。進化の過程で人間とわかれたんだろうけど……。うーん、不思議だ……」


 私はミーナの尻尾を優しく撫でる。モフモフでものすごく気持ちがいい。


「うぅ、キララ、尻尾を撫でられるとぞわぞわするから、あんまり撫でないで……」


 ミーナはくすぐったくて辛かったのか、瞳を潤ませていた。悪いと思いながら、可愛いと思ってしまう。私が雄の狼だったら食っちゃいたいくらいだ。


「はは、ごめんごめん」


 私はフルーファ用のブラシを取り出し、少し乱れた毛をしっかりと直す。


「あぁ~、ブラシで撫でられるのは好き~」


 ミーナは耳を動かし、微笑んでいた。手とブラシで何が違うのだろうか。まあ、気にしなくてもいいか。

 私はまず荷台を広場に置き、ビー達に見張らせておく。そのあとレクーをお客さん用の厩舎に入れた。


「とりあえず学園長室に行こうか。そこで何したらいいか、ドラグニティ学園長に訊こう」

「えぇ……。いきなり学園長室に行くの? 別に大人に訊けばいいんじゃ……」

「大人は信用ならないからね、一番安全なのはドラグニティ学園長だから、彼に訊けば間違いない」

「まあ、そうだけど」


 ミーナは私の考えを飲んで、私の横を歩きながら大きな園舎の中に入って行く。土足で入っても良いので普通に歩いた。

 学園長室は園舎の最上階にあり、昇降機に乗って移動した。

 学園長室の前にやってくると豪華な木製扉があり、つやつやとして見栄えがある。

 触れるのもおこがましいくらい高級な木材で作られているっぽい。いったい樹齢何年の木材を使っているんだろうか。

 私は木製の扉を三回叩き、声を出す。


「キララ・マンダリニアです。ドラグニティ学園長はいますか?」


「開いておる」


 ドラグニティ学園長の声が扉の奥から聞こえた。


「失礼します」


 私は扉を引き、部屋の中に入った。部屋の中は整理整頓が行き届いている。大量の魔導書が本棚に並べられており、廊下と部屋の中で別世界なのではないかと思うほど雰囲気が違った。

 ブーツ裏の隆起がしっかりと滑り止めの効果を発揮し、すってんコロリンと転ぶという情けない姿を見せることはなかった。


「ドラグニティ学園長、こんにちは!」


 私は出会いがしらに頭を下げ、挨拶。挨拶は全ての基本なので楽屋挨拶のように丁寧にしっかりと笑顔でこなす。


「ああ、こんにちは。いつもながら元気な挨拶だ」


 ドラグニティ学園長は物凄く高そうな革製の椅子に座り、軽く挨拶してくれた。羽根ペンを持ちながら何かを書いている。仕事中だったかな。


「こ、こんにちは。ドラグニティ学園長。今年からよろしくお願いします」


 ミーナは頭が床に尽きそうなくらい下げ、挨拶した。そこまで頭を下げるのはヤクザくらい。ちょっと、下げ過ぎな気がする。


「こんにちは。確か、ミーナだったかな。ようこそ、ドラグニティ魔法学園へ。獣族は珍しいが、先輩や同級生にもいるから安心するといい」


「は、はい!」


 ミーナは頭を上げ、同族がいるとわかって安心したのか、満面の笑みを浮かべていた。もう、餌が貰えるとわかった時の犬と同じ顔だ。


「ドラグニティ学園長、今日は学園で使う品を調達に来ました」


「ああー、そうだったな。第一闘技場に行けば制服と靴、その他の教材などを購入できる。おっと、キララは特待生だから金は必要ない。名前を言えば教員が品を用意してくれる。服と靴の大きさを計って合わせてもらうといい。寮の話は今聞くかね?」


「そうですね……。今聞いて意味があるなら聞きます」


「なら、話さなくてもいいな。今日寝泊まりする寮に意味はない。明後日に変わる。キララが、一人部屋が良いというのなら配慮しよう」


「別に一人部屋じゃなくてもいいです。その方が、友達が出来そうですし」


「わかった。では、入学式に遅れないように」


「わかりました。失礼します」


 私はドラグニティ学園長に頭を下げて部屋をあとにする。仕事の邪魔すると怒られそうなので刺激しないように静かに出た。

 私のあとに続いて、ミーナも学園長室から出て尻尾を振っている。


「キララ、キララ、同族がいるって。よかった~」


 ミーナはそういうことを気にしないと思っていたが、やはり同族がいると安心できるのか、胸に手を当てて安堵していた。


「じゃあ、私達は第一闘技場に行こうか。そこに行けば教員がいるって言っていた。ミーナのお金は私が払うし、気にしないで」


「うぅー、キララ、ありがとう。絶対返すから」


 ミーナは瞳に涙をため、両手を握りしめながら私に宣言した。ミーナならお金をしっかりと返してくれると信じている。もし、返せない状況なのだとしたら、ミーナに何かあった時だ。不慮の事故で亡くなったら仕方がない……。でも、そうなったら悲しいな。想像しただけで泣きそうだ。


 私達は昇降機で一階に下り、園舎の生徒玄関から外に出た。


「第一闘技場ってどこの闘技場だろう……。三カ所くらいあるからわからないな。ベスパ、調べて」


「了解です」


 ベスパは各闘技場に飛んで行き、第一闘技場を調べてくれた。


「以前、実技試験をこなしたのが第一闘技場のようです。そこに行けば品が買えます」


「ありがとう。あそこね。じゃあ、一番大きな闘技場だ」


 私とミーナはドラグニティ魔法学園で一番大きな第一闘技場にやって来た。相当古い闘技場なので年季が感じられる。何年前から建っているのかはわからない。でも、名勝負がこの中で行われてきたに違いない。


「ふわぁ~。暇だぁな。何か面白いことないかな……」


 第一闘技場の中に入ると大きな乳を枕にしながら木製の机に突っ伏している赤髪の女性が、ぽつんといた。


「はぁー、だらしないですね。これでSランク冒険者なんて言う称号を貰っているんですから、人の感覚は、わかりかねます……」


 赤髪の女性の頭部でインコくらいの大きさになっている真っ赤な鳥が羽ばたき、火の粉を散らしていた。


「ふぇ、フェニクスだっ! すごい、すごい!」


 ミーナは琥珀色の瞳を輝かせ、私よりも早く受付に向かう。

 闘技場の中に即席の受付があり、赤髪の女性がその受付を担っていた。

 今は準備期間だからか、闘技場は使われていないらしい。

 春休み中でも教師の仕事はあるわけで、こっちの世界でも大変な職業だろうなと優に想像できる。

 暇だと呟いていたので、赤髪の女性は優秀なのか……、はたまた仕事を割り振られることが無いくらい駄目教師なのか。まあ、今はどちらでもいいか。


「な、なんだなんだ。銀髪の獣少女……、珍しい~」


 赤髪の女性は獣族に対する偏見が無いのか、ミーナを見た瞬間に抱き着き、豊満な胸で顔を押しつぶす。


「フグぐぐっ~!」


 ミーナは赤髪の女性に呼吸を止められ、息苦しそうにしていた。


「フェニル先生、お久しぶりです。私の友達が窒息死する可能性があるので離れてください」


「ああっ! キララちゃん! 久しぶりだなっ!」


 赤髪の女性はミーナを離し、私の方に飛びついてきた。どこの外国人だよ……。見たものすべてに抱き着くとか、アメリカ人でもしないっての。


 私は体温が高めのフェニル先生に抱きしめられ、顔が火傷しそうになった。フェニクスが暑いからフェニル先生の体温も高いのだろうか。

 意識が遠退くなか、フェニル先生の服から焼き鳥のような匂いを感じ、お腹一杯焼き鳥が食べたいなぁ……と思いながら、情けない最期を迎えようとしていた。


「ちょ! お姉ちゃん! その子、死んじゃうって!」


 後方から何やら聞き覚えのある声がした。とても甲高いが、聞けてしまうハンドベルのような美しい声だ……。

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