デイジーちゃんとの会話
私は荷台から降り、オリーザさんのパン屋へ一直線に向かった。
「それにしても…なんか前と雰囲気が違うような…ええ! なにこの人数…小さなお店に入りきらないほどいっぱい並んでるよ…」
パン屋の前にはありとあらゆる人が並んでいた。
高そうな服を着ている人、冒険者っぽい服を着ている人、子供づれの親子など…推定30人は並んでいるんじゃなかろうか…。
「朝を大分過ぎて…まだお昼前なんだけど…。もう、こんなに人が並んでいるなんて…。これじゃあ、そうとう待たないといけないな…」
キララは一度デイジーたちの待つ、荷台へ戻る。
――先に、デイジーちゃんのお母さんと弟君を迎えにいこう。昼頃を過ぎれば、パン屋に並んでいる人も大分少なくなるでしょ。私は、別に急ぎの用事じゃないし。
「あれ? キララさん、もう終わったんですか」
「いや…ちょっと人が多かったから戻ってきちゃった…。もう少し時間をおいて、人が空いてから行くことにしたんだ」
「そうなんですか…」
私達はUターンし、リーズさんの病院へ向かった。
「お母さんたち大丈夫かな…ちゃんと治ってるよね…」
「大丈夫、リーズさんは凄い人なんだから。あっと言う間に直しちゃったよ…きっと。だから心配しなくて大丈夫。それよりも、デイジーちゃんには目的があるんでしょ。ちゃんと持ってる?」
「はい! もちろん!」
デイジーちゃんはポケットから、小さな袋を取り出した。
――お母さんの「スキル」で作った小さな袋、小物を入れたりするとき結構役に立つんだよね…。
「私のお金でお母さんたちに美味しいものを食べさせてあげるんだ!」
「そんなプレゼントをされたら、きっとデイジーちゃんのお母さん、すごく喜ぶと思うよ。泣いちゃうかもしれないね」
「でも…」
笑顔だったデイジーちゃんの表情は、春空のように一瞬で表情を変え、なぜか申し訳なさそうな顔を浮かべた…。
「キララさん…私、お金をこんなに貰ってもいいんですか、銀貨8枚なんて…私、銀貨なんて初めて持ちました」
「当たり前だよ、デイジーちゃん! 7日ほぼ休まず働いてくれたんだから、それくらいの金額は妥当だよ!」
――ほんとは金貨1枚くらいあげたいんだけど…、この国で子供がいきなり金貨なんて稼いだら怪しまれちゃうし…。銀貨8枚が怪しまれないギリギリの範囲だったんだよね…。まぁ、日本円にして8千円程度。7日毎日働いて8千円か…相当な超ブラック企業だな…。その分、街の物価は安い方なんだよね…。…調味料以外。肉も結構値段は高いけどモークルとかいい肉じゃなければ、今の私達なら買えるかなって思える値段だし。魔物の肉らしいんだけどね。魔物の肉って…美味しいのかな…。いや味がなかったらどの肉も一緒か。
「それにしても、デイジーちゃんはホントによく働いてくれたよね。もうずっと牧場で働いて欲しいくらいだよ」
「そうですか? 私はキララさんの言った通り、無理せず働いていたんですけど…」
「え? 牧場で働いてたとき、デイジーちゃんはほとんど休んでなかったじゃん…」
「私…無理しなければ、いくらでも働き続けられますよ。だから…こんなにお金貰ってもいいのかなって…思ったんです…」
「えっと…デイジーちゃんって疲れ知らずだよね。確か私が…デイジーちゃんの疲れてるところを見たの、瘴気にあてられてたときだけだし…」
――そう、デイジーちゃんはとんでもなく動けるのだ。いったいどれほど体力があるのか全く分からない。毎朝鍛錬しているシャインや力仕事をしていたお父さんでさえ、ヘトヘトになる牧場の仕事をデイジーちゃんはケロッとやってしまうのだから相当な体力お化けだ。『無理をしてない』って言ってるけど…シャインとお父さんも『デイジーちゃんは凄い』って話してたから…皆とデイジーちゃんの感覚が大分ズレてるのだと、私は思っている…。
「私…昔からすごく丈夫だったんです。風邪をひいた覚えはないですし、ネ―ド村から街まで歩いても全く疲れません…。でも理由が分からないんです。どうして私はこんなに動けるのか…周りの人からも気味悪がられていました。あいつは人間じゃないって…」
――そんなことが…。
「でも、私…こんな体質でよかったです! だってこんな体質じゃなかったら、私の村を救ったキララさんに会えませんでしたし。私、神様にすっごく感謝してます」
――あら…なんて強い子なの~。…うちにますます欲しくなっちゃう。
女の子同士…お喋りしていると時間はあっという間に過ぎてゆく。
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